小児科医が回答!「1歳や2歳でもインフルエンザの予防接種は受けるべき?」
いよいよインフルエンザの流行シーズンに突入しました。2016年は例年に比べ2週間ほど時期が早まっていると言われています。
毎年気になる「インフルエンザワクチン」の噂や、ママが知っておきたい対処法について、細部小児科クリニックの細部千晴先生にお話をお聞きしました。
細部小児科クリニック 細部千晴先生
男の子2人の母親でもあり、自らの子育て経験を活かし、地域の子育て支援やペリネイタルビジット(出産前出産後小児保健指導)に尽力している。著書(監修)に『この1冊であんしんはじめての育児辞典(朝日新聞出版社)』、近著に『赤ちゃんがパパとママにやってもらいたい58のこと』『学校では教えない できる子をつくる74の新習慣』(共著・ともに扶桑社)など。細部小児科クリニック
目次
1歳や2歳を含む幼児にインフルエンザワクチンをすすめる本当の理由とは?
「打ったほうがいいんですか」とよく聞かれますが、むしろどうして打たないの?と私は思ってしまいます。
65歳以上になると定期接種になるインフルエンザワクチンは、幼児では任意とされ有料です。また、予防接種の有効性が、はしかや風疹が9割を越えるのに対し、インフルエンザワクチンはインフルエンザB型に対しては2~3割と低く、A型に対しても6割程度ですので、毎年打ってもかかる人はかかります。
さらに、幼児に多いインフルエンザ脳炎脳症(言語障害が残ることがある)も、ワクチンを打ったからといって「必ず」防げるわけではありません。
ただ、100人いるなかで100人ワクチンを打っている集団と、100人のうち2人しか打っていない集団ではどちらがインフルエンザが流行り、脳炎脳症になる確率が上がるでしょうか。
つまり、集団で接種率を高めておくことが大事なのです。また、毎年打ち続けることで抗体がつきやすくなることが期待されます。
家族で保育園で、集団免疫をつけよう
2歳児までは、予防接種を受けても抗体がつきにくいというデータもありますが、小児の場合13歳までは2回接種をすすめます。インフルエンザワクチンは感染阻止ではなくて発症の軽減と重症化の予防です。
混んでいる電車に乗ったりして外から持って帰ってくるのは大抵お父さんですよね…。それをママにうつして赤ちゃんにうつしてしまう場合もあります。
保育園や幼稚園などの集団生活をしている0~6歳児が最初に感染すると、他の家族(特に母親)に感染する率が高くなるというデータがあります。最初にかかるのは8割が子どもですので、家庭内感染を封じ込めるカギは0~6歳の小児と言えます。
家族内での免疫を高めておくと、一家全滅という悲劇を防げますので、子どもはもちろん、まだ一度も打ったことがないというお父さんはぜひ今年から受けることをおすすめします。
根拠のない噂には惑わされないで
数年前に『インフルエンザワクチンは打たないほうがいい』という旨の書籍が新聞広告になったりして、未だに惑わされる方が多いようです。
また、チメロサール(防腐剤)入りのワクチンを打つと自閉症になるという論文が過去に出て、結局それはねつ造だったのですが、今でもネットに残っているため信じている人も多いです。それらを理由にワクチンを打たないほうがいいと主張する方もいます。
ネットなどの根拠のない噂は安易に信じると危険です。気になる場合は情報の出所を把握した上で、かかりつけ医などにきちんと確認しましょう。
日本は諸外国から見るとまだまだワクチン後進国。やっと昨年からインフルエンザワクチンも世界標準の3価から4価のもの(より多くのインフルエンザウイルスに対応)になりました。その影響でワクチンの価格が上がった病院もありました。
インフルエンザワクチンの助成がある場合も
ワクチン接種費用は平均で1回3,000円前後と、決して安くはありません。そのせいで接種率に地域格差も生まれてしまっているのも事実。
私のクリニックがある文京区は、ご両親の理解がある方が多く、任意接種のワクチンの接種率がとても高いという地域性があります。とはいえ、都内で10の市町村がインフルエンザワクチン接種費用の助成を行っていますので、金額を懸念する方は一度調べてみてください。
そしてぜひ「かかりつけ医でワクチンを」打つようにしましょう。普段診ている医師だからこそ、副反応が出た際にも対応しやすくなります(基本的には、予防接種を打った医師が責任を持って副反応の処置をするのがルールとされています)。
特に幼児をお持ちのお母さんはぜひ覚えておいてください。
熱が出たときにまずすべきこと
インフルエンザは、熱が出てから約48時間以内に受診すれば間に合います。最近では吸うタイプの薬もありますが、2~5歳はまだ上手に吸えないのでタミフルを出されます(嘔吐する場合があります)。
一方で、ワクチンは重症化を防ぐと言われているので、予防接種を打っていれば薬を飲まないで治すという選択をする方もいます。さらに最近は熱が出て2時間くらいでも、検査できる最新機器が登場してきました(まだごく一部ですが)。すぐに薬を飲んで対処できれば、苦しむ時間を減らすことができて幼児には嬉しいですね。
ともかく、勝手な自己判断は危険のもと。幼児は熱が出たら水分補給に気をつけ、おかしいなと感じたら早めの受診が一番です。その際、何時からどのようなサイクルで熱が上下しているかを記録しておくと、より的確な診察が受けられます。
いかがでしょうか? やはりワクチンは子どもをインフルエンザから守るために有効な手段のようです。ただ、「卵アレルギー」がある子は受けられないので気をつけて!(インフルエンザワクチンは卵からできています)。
インフルエンザワクチンは生後6ヵ月から接種できますが、卵が入っているお菓子や離乳食(ゆでたまご、茶碗蒸し、卵焼きなど)をクリアしてからにしましょう。