甘えとしつけのさじ加減を心理学的にアプローチ! 注目の「ポジ育メソッド」とは?(前編)
私がシンガファームに寄稿をはじめて早5年が経ちます。その間、毎月子育てに関する心理学を発信してきており、それらはすべて私が推奨する「ポジ育メソッド」に沿ったコンテンツです。これまで100本近くの記事を書いてきたものの、意外にもポジ育メソッド自体を主テーマにしたことはありませんでした。
そこで今回はそのメソッド本体にフォーカスを当て、その特徴についてご紹介したいと思います。
目次
「ポジ育メソッド」とは?
ポジ育メソッドは、私が欧米の大学や大学院で学んだ心理学とその後の育児支援を通して習得した知識を体系化してできた育児法です。かれこれ10数年の歴史がありますが、その間に大きく変化もしています。正確に言うと、「これはいい」と思ったものを加え続けているので、どんどん扱う範囲が広がっています。
スタート時点でのフォーカスはママのストレス管理でした。そこから叱り方、そしてほめ方、親子のコミュニケーション、子どもの心育て、しつけ、行動改善……。現在の範囲は多岐に及びます。
今、世の中にはたくさんのママ向け講座やネット情報がありますが、全般的に「寄り添い系」のコンテンツが多いように思います。なぜなら、子どもに寄り添うことは育児の要だからです。
一方で、私はそれだけだとバランスが悪いとも感じています。寄り添うことばかりを追い求めてしまうと、ときに必要な厳しさまでもが後ろに行き、のちに困りごとに発展してしまう例を多く見てきているからです。
「ポジ育メソッド」を使うとどんないい効果があるの?
たとえば、0歳の赤ちゃん時代にしていた接し方を1歳、2歳…と続け、イヤイヤ期になって手に負えなくなってしまうのはよく見られるケースです。
絶対的依存期である0歳代は、親が赤ちゃんの訴えを感受性よく察知し、受け入れてあげることがカギになりますが、1歳を過ぎ、自分で動けるようになってからは、ダメなことを教えていくしつけも大事になってきます。
そこを、「怒ると傷つけるから」と叱らずにいたり、「いつか分かってくれる」としつけの場面に向き合わずにいると、イヤイヤ期以降、叱ってばかり、怒鳴ってばかりの毎日になってしまうことがよくあります。
「お家のルールを守る」という親子関係がそれまでにできていないことで、イヤイヤ期の自己主張の嵐に親が振り回されてしまうのです。
そういう状況を避けるために、ポジ育メソッドでは、「しっかり甘えさせつつも、しっかりしつけもする」そんなさじ加減を重要視しています。他のメソッドよりも、しつけや行動改善の方法などに力を入れていることが特徴的かもしれません。
理想はしつけの脱線を未然に防ぐことですが、脱線してしまった後の修正においても、子どもの心を傷つけずに行動を改善していく心理作戦を用いています。
それにより、子どもの自己肯定感や自己効力感を育みつつ、お家のルールを守ることも教えられ、ママ自身の自信アップにもつながります。子どもだけでなく、ママにもポジティブなサイクルを生み出す効果が得られるのがポジ育メソッドです。
ポジ育メソッドが大事にしている4つのテーマ
では、ポジ育メソッドが考えるバランスはどういうものなのか、ということで、今現在、4つのテーマに分けて、知識を体系化しています。
1. 子どもの自己発達についての心理学
2. 子どもの気質についての心理学
3. ポジティブな発想力やコミュニケーションのための心理学
4. 困った行動対策やしつけのための心理学
これが、私が長年育児支援をしてきて、「やっぱりこの4つが大事!」とつねづね感じているものになります。
では、1つ1つ順に見ていきましょう。
1. 子どもの自己発達についての心理学
これは、子どもの「自己」というものを理解するための知識です。ママたちからよく聞くのは、子どもの心の成長を分かってあげたいけれど、目に見えるものではない分、つかみにくいというお悩みです。
それを踏まえ、ピラミッドという形に落とし込み、アタッチメントや自己肯定感、自己効力感といった子どもの自己概念について分かりやすく定義し、接し方のポイントなどを年齢ごとにご紹介しています。
2. 子どもの気質についての心理学
2つめは子どもの気質についての知識です。“気質”という言葉自体は理解できても、これも目に見えないものだけにあいまいになりがちです。
そんな“なんとなくわかっているようないないようなモヤモヤ状態”で日々の対応をしてしまっているケースは実はよく見られ、それが普段のお悩みや困りごとを作ってしまっていることが非常に多いのです。
その子の”らしさ”とは何なのか。わが子を理解する上でスルーしてはいけないのにスルーされがちな気質、これを取り上げています。
3. ポジティブな発想力やコミュニケーションのための心理学
3つめは親の発想力についての知識です。育児から少々離れたトピックという印象を与えるかもしれませんが、実はこれこそがポジティブ育児の原点になります。親がどう発想するか、どう考えるか、どう捉えるかは、育児の光にもなりますし、影にもなりうるからです。
自分自身のストレスを増やすも減らすもこれが関係してきますし、叱り方やほめ方を含めた子どもとの関わり方にも直結する部分になります。
4. 困った行動対策やしつけのための心理学
そして最後が、困りごとが起こったときの対応法やしつけに関する心理学で、私が行っている育児相談でのメインプレイヤーです。
「子どもが言うことをちっとも聞かない」「親を困らせるようなことばかりする」このようなお悩みを持っている親御さんはとても多いですが、先述したように、子育てにはバランスが大事で、もし“甘やかすこと”と“甘えさせること”を混同してしまったり、寄り添い育児で寄り添い過ぎてしまったりすると、困りごとにつながる確率を上げることになってしまいます。
その場で問題発生となればまだ対処は楽ですが、あとあとになって出てくることもあり、そうなると対応はより複雑になります。困りごとが発生してから対応するよりも、前もって知識を持って接していく方がずっと楽ですので、予防策としてのしつけの心理学もお伝えしています。
簡単に言うと、「ポジ育メソッド」は、子どもの心のことをしっかり理解しながら(①+②)、ママのポジティブシンキングを使って(③)、しつけを進めることで(④)、バランスを取る育児法です。
後編では今日から実践できる「ポジ育メソッド」の一部をご紹介します!
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/