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オックスフォード大学 児童発達学博士、島村華子先生に聞く!モンテッソーリ&レッジョ・エミリア式の褒め方&叱り方とは?

オックスフォード大学 児童発達学博士、島村華子先生に聞く!モンテッソーリ&レッジョ・エミリア式の褒め方&叱り方とは?

モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育を知り尽くした、オックスフォード大学 児童発達学博士である島村華子先生。著書『自分でできる子に育つほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はAmazon幼児教育ランキング第1位、日本で行われるセミナーは即完売と大人気です。そんな島村先生に、子育て中のママたちの「褒め方、叱り方」に関する悩みにカナダからお答えいただきました!


島村華子さん
オックスフォード大学 修士・博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員を経て、現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。最新著書『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。https://www.facebook.com/groups/2361353034189654

 

自立した大人になってほしいけれど、今は従順な子どもでいてほしいという矛盾

__なぜ、私たちはわが子にイライラしてしまうのでしょうか?

イライラは“私たちが描いている期待と現実のギャップ”が原因です。例えば、子どもに対して「わたしの言うことをすぐに聞くべき」という風に期待していたとすると、すぐに言うことを聞かず、思い通りに動かない子どもに対して苛立ってしまうというわけです。大人は、自分の長期的な子育てのゴールと自分が普段していることに矛盾がないかどうか気づくこと、そしてなによりも「子どものイメージ」、つまり本音の部分で子どもたちをどう見ているのかを見直すことがまずは大事です。

また、子どもが年齢や発達状況によって“親へ求めること”が変わることも知っておくとよいでしょう。たとえば、相手の視点や考えを理解する「心の理論」が発達したり、正義感が強くなり物事の白黒をはっきりさせたがる6~12歳。この時期の子どもの願いとしては“一人で考えられるように手伝ってほしい”です。親がすべきことは、何事もごまかさず話し、話す際は対話と傾聴(アクティブリスニング)を意識すること。今は子どもと一緒に、“考える練習をする時期”であると知っておくことで、冷静かつ客観的になれ、イライラも軽減するのではないでしょうか。

__ほめすぎも逆効果になりますか?

ある研究によると、過剰なほめは自己肯定感が高まらず、むしろ「失敗したくない」とプレッシャーに感じたり、「こんな簡単なこともほめるなんて馬鹿にしてるの?」となったり、「私って特別なんだ」とナルシストになることが分かっています。少なすぎるのもいけませんが、現状に合っていないほめすぎも効果が得られないのです。

簡単にはできないかもしれませんが、ほめ方も叱り方も訓練あるのみです。何ヵ月もかけてやれば、効果的な声のかけ方は習慣化され変化が出てきます。

裁判官(ジャッジ)ではなく探偵(なんでだろう?)になろう

__日々の褒め方、叱り方の口癖を変えるコツを教えてください!

まず、多くの方が使いがちな
・ほめるとき→すごい!天才!(人中心の外的評価)
・叱るとき→ダメ!違う!(大人の価値観の押し付け)をやめてみましょう

そして、とにかく“対話”を意識することです。そのためには、子どもの視点を持ち子どもを観察し、子どもの気持ちや考えを聞いてみましょう。その際、ジャッジをする裁判官ではなく、「なんでだろう?」という探偵になることがポイントです。裁判官だとイライラするけど、探偵になるとイライラしませんよね(笑)。見たままを具体的に伝える、工夫や努力などのプロセスをほめる、質問してみるなど、詳しくは本を参照してみてください。

子どもを変えるのではなく、まずは大人の内面を変えること!

__プロセスを具体的にほめても、イライラしてしまう場合は何が原因なのでしょうか?

たとえば、「丁寧に漢字の宿題をするわが子に対し、それはとてもいいことだけれど1Pに1時間もかかって他の宿題が進まず、夕飯も寝る時間も遅くなるので心配だ」というイライラが出てきたとします。このとき重要なのは、“自分自身の許容範囲を伸ばせるか”です。

子どもに何か言う前に3つのことを自問してみましょう。

① 子どもがその行動をしている理由は?
② 今一番大事なことは何か
③ 大事なことを伝えるためにどうしたらいいか

「すごく丁寧に書いてるのね。でも、夕飯も寝る時間も遅くなるから早くした方が良いんじゃない?」。これだと前半のプロセスほめを否定することになってしまいます。雑でもいいから早く終わるのがいいのか、丁寧で時間がかかってもいいのか。どちらが大事かを一度自分に聞いてみることです。その後、要望があれば伝えて対応を一緒に考えていけばいいのです。

子どもを誘導して変えるのではなく、自分の相手への期待値を変えることでイライラを防いでいきましょう。

愛情を餌にする「条件付き子育て」はペットのしつけと同じ!

__条件付きと無条件の子育ての違いについて簡単に教えてください

モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育の「民主的子育て」という概念にも通ずる考えなのですが、「無条件の子育て」とは、何でも無条件に受け入れる「消極的子育て」でも、親の言うことだけが正論の「独裁的子育て」でもなく、ルールをきちんと設けて背景を説明した上で、子どものすべてと向き合うこと。一方の「条件付き子育て」とは、愛情を餌にして言うことを聞くときだけほめ、逆にそうでないときは罰するため、子どもは親の顔色をうかがう子になってしまいます。

今からでも遅くはありません。これを読んで「まずい!」と思われた場合は、夫婦やパートナーともしっかり共有して、脱・独裁あるいは脱・消極親になりましょう。

子どもは大人の内面にとても敏感なので、良くも悪くも影響してしまうものです。大人がいかに丁寧に自分自身と向き合い、内側の変化を行動に反映できるかがポイントになってきます。

子どもがのびのび育つ「アクティブリスニング(傾聴)」とは?

__ただ「話を聞く」のとはどう違うのでしょうか?

子どもの話に適当なあいづちをうって、頭の中で自分流の解釈をし、答えを用意しながら聞く……。その状態は「自分の正解を伝えるためだけに聞いている」だけでアクティブリスニングではありません。

アクティブリスニングとは、100%の注意を向けて、相手の話を相手の立場から理解するということです心と心を通わせ、傾聴することです。自分がどう思っているかは関係ありません。簡単に言えば「相手の意見のすり合わせ」です。最もNGなのが「何言ってるの、そんなわけないでしょう!」と否定したり極小化すること。これでは一瞬で子どもが心を閉ざしてしまいます。自分と意見が違う場合は、相手の話をじっくり聞いてから、「ママの意見も言ってもいい?」と伝えます。

アクティブリスニングは、FBIの誘拐交渉にも使われる手法です。子どもにはもちろん夫婦間にも効果があるとされています。聞く側が勝手に否定や非難をしないので、話す方は心を開き、信頼関係が生まれやすくなります。また、自分の意見で相手を説き伏せたり、言い訳をする必要がなくなるので、状況をより冷静に見直すことができるという効果もあります。まずは1日5分から、できるときに実践してみてください。

詰め込まず誘導しない。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育は本来の教育の姿

__島村先生は、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育のどんなところが魅力だと感じていらっしゃいますか?

モンテッソーリ教育は、かつて住んでいたオーストラリアのホストファミリー先で知りました。子どもたちが自分たちの興味に従って自発的に取り組む姿にとても感心したのを覚えています。レッジョ・エミリア教育は「聞く教育」とされていて、子どもの表現や意向に大人が丁寧に耳を傾けます。特別な教具もいらないので、カナダの幼児教育では、多くの州で参考にされていて、とても人気があります。

どちらも、子どもは大人と対等な市民権を持っていると考えられていて、子どもの権利が尊重されています。子どもを“一人の市民”と心から捉えているのが魅力的ですね。子どもは能力にあふれた学習者であり、内なる力を持ち合わせた存在と考え、絶対的な敬意を払いながら子どもを信頼しているのもいいなと思います。

一方的な押しつけ型の教育とは、空っぽだから詰め込もうとするものです。そうではなくて、モンテッソーリやレッジョ・エミリア教育は、観察や対話により、子どもの興味を引き出し、好奇心を刺激・拡張するものだと考えています。子ども自身が積極的に学びに関わっていくという、本来の教育の姿なのではと思いますね。

__最後に、子育て中の親御さんに、先生からメッセージをお願いします。

子ども時代は大人になるための準備期間ではなく、子ども時代そのものが大切な時間です。「子どもは今を生きている」ということを知っておいてほしいですね。

そして、親御さんたちは、もう十分がんばっているので、努力してとは言いたくありません。できる範囲でできることをやればいいと思っています。そして、疲れていてイライラしてしまう自分のことを許して労ってあげてほしいです。

いかがでしたか。そうはいってもなかなか難しい……そんな方には、島村先生とのオンライン「ほめ方叱り方」講座もおすすめです。現在は予約待ちですが(導入編が5回分、さらに学びを深めたい方は実習編が4回分、計9回)、先生曰く「受講した方は受ける前の自分には戻りたくないと言っていただけるほど変われます」とのこと。興味がある方はこちらから予約してみてください!

【自分でできる子に育つ ほめ方叱り方トレーニング講座】
https://peatix.com/event/1545050/view?fbclid=IwAR1ya8zfnh8Jk07ab0F0AJb89nTUZQDzXh7aFXBvIKbbTJulzEIX66uJuHg

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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