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子育て

早生まれや体が小さいのは不利なの?

早生まれや体が小さいのは不利なの?

子育てでは、子どもの体が小さくても大きくても悩むことがありますが、とくに体が小さいことは、親にとって気がかりになりがちな部分です。体が大きい子に追いつけるだろうかということもそうですが、つい心配で手を出し過ぎてしまうというお話も聞きます。

そこで今回は、早生まれや体の小ささに関する悩みについて、子育て心理学の観点から見ていきます。

海外では早生まれに学年を落として対応する家庭も

子どもの体格は、幼少時は悩みになりがちです。とくに体が小さいことで、まわりについていけるかと心配になったり、他の子はできるのにうちの子はまだと不安になったり……。

また、幼稚園に入って学年で区切られるようになると、今度は生まれ月による差も気になるようになり、「早生まれで体が小さいから」と悩むケースは多いものです。

実際に体格を比較しても、遅生まれの子と早生まれの子では、幼稚園入園時に男女とも身長で約7cm、体重で約2kgの違いがあります。年齢が小さいほど、数ヶ月の違いが大きな違いとして出てきやすいので、親の悩みとしても浮上しがちなのです。

こんなとき、欧米の国々では「レッドシャーティング(Redshirting)」と言って、学年を1年落として対応することがあります。のちのち有利になるよう学年を遅らせるという策のことで、わりと一般的に用いられています。

日本にはないシステムですが、このような対応は子どもにとってどのような影響をもたらすのでしょうか?

学年で一番年上だと有利なの?

2008年に行われたハーバード大学の研究によると、入学を1年遅らせた子は、後々、学業不振に陥る確率が高く、高校、大学などを中退したり、経済的にも思わしくない結果が出たそうです。

またノルウェーで行われた追跡調査でも、男女のIQを18歳になった段階で計測したところ、1年見送って教育を受けた子ども達のIQは、通常の学年で教育を受けた子と比べて著しく低く、しかも30歳になった時点では、収入まで低い傾向があることもわかったのです。

このことからも、学年で月齢的に優位に立つことが、必ずしもその子にとっていい結果に結びつくわけではなく、実際は自分が置かれた学年になじんでしまうことが多いとも言えます

早生まれの子は努力家が多いとも言われており、実際、ある調査では、追いつこうと頑張っているうちに、結果的にクラスメートを追い抜いてしまう傾向があったという結果が出ています。

早生まれの子は体が小さい分、おのずと努力を強いられることが多くなり、それがその子を結果的に伸ばすのでしょう。

親が決めつけてしまうのはもったいない

子ども自身が、「自分は早生まれだから」とか、「体が小さいから」と気にすることは、まずありません。気にしてしまうのは親であり、月齢や体型で、「小さいからまだ自転車は無理」「この遊具は無理」などと決めつけてしまうことはよく見られます。

しかし、親が「この子にはムリだ」とレッテルを貼ってしまうと、当然ながらその子はチャレンジするチャンスさえなくなってしまうので、非常にもったいないと言えます

子どもの成長を見るとわかりますが、生まれたばかりのときは親に完全に依存状態だったのに、0歳、1歳、2歳と進むにつれ、日々たくさんのことができるようになっていきます。

親からすると、それは劇的な成長に見えるのですが、でもそのスタートは、いつも「できない」ところからはじまっています。できないことを「できるようになりたい」とチャレンジすることが、子どもたちの劇的な成長を作っているのですね。

だからはじめの一歩はたいがい失敗します。でもそんなことでクヨクヨすることはありません。できないのならもう1回、またもう1回と繰り返し、それで様々な行動をマスターしていきます。大人以上に子どもは失敗に強いのです。

大人の目線で「○○したらかわいそうだ」と経験する機会をなくしてしまうのは残念なこと。経験できない方が、もっともっとかわいそうなのです。

チャレンジの繰り返しが努力家を生む

子どもが何かにチャレンジしようとしているときに、まずはさせてみる、そしてダメだったら、少しだけ手を貸してあげて、できるようになるサポートをしてあげる、こういう繰り返しが、その子の楽観性を作っていきます。「やればできる」という経験の積み重ねが、その子の将来的な予測を楽観的にさせるからです。

早生まれや体の小ささなどは、たしかにハンデになることは多いですが、でもその分努力をすることが身につきやすいので、長い目で見れば、それは大きな収穫となります。

大人になってみれば、いつ何ができるようになったとか、そういうことよりも、その時いかに努力できるか、踏ん張れるかの方がずっと大事になってきます。

小さいうちは、目の前にあることをできるか否かで一喜一憂してしまいがちですが、でも20年後を見据えて、「この子の努力習慣が身につくチャンスだ」と捉えてあげる方が、お子さんにとってのメリットは大きくなります。

もし今、お子さんのことを、ちょっと守り過ぎていたかもしれないと思われたら、「早生まれだから」「体が小さいから」というレッテルを貼がし、できるだけ達成経験を増やしていけるようサポートしていくのがおすすめです。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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