女子は8〜9歳から始まる子も!小学生の思春期と親の接し方を解説!ココロ編・カラダ編
今回のテーマは思春期。最近は思春期が早まっているとも言われているので、小学校の半ばあたりからお子さんの様子を見て気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では今どきの思春期にまつわる疑問についてQ&A形式でお答えしていきます。
目次
思春期はいつから?思春期のサインとは?
思春期とは男の子が男らしく、女の子が女らしく成長を遂げる時期のこと。第二次性徴として身長の急激な伸びのほか、さまざまな身体的な変化が起き(声変わりや乳房の発達など)、大人の体つきと生殖機能が備わっていく期間を指します。
始まる時期は個人差も大きいですが10歳くらい、一般的に女の子の方が男の子よりも早く思春期を迎えると言われています。日本産科婦人科学会によれば、8~9歳あたりからとのこと。ずいぶん早いように感じますが、実際に小学校の半ば過ぎは、女の子の方が大人びた印象がありますよね。
あとは体の変化よりも、「なんとなく親子の距離が開いてきた?」「会話の返答がそっけないんだけど……」というような行動の変化で思春期の入り口を感じている方も多いようです。
思春期と反抗期の違いは?
小学校4~6年生くらいのお子さんを持つ親御さんとお話しをしていると、頻繁に“思春期”という言葉が出るのですが、それと一緒に“反抗期”という言葉も度々耳にします。
思春期=反抗期と思っている方もいるくらいです。
しかし両者には違いがあると感じていて、思春期はまぎれもなくそういう“期間”がある一方、反抗期はむしろ反抗という“状態”がその時期に見られるというニュアンスです。
英語でも、思春期はPubertyという専用の単語があるのに対し、反抗期に関しては、“Teenage rebellion” (十代の反抗)とは言うものの、反抗期に当たる用語は耳にしません。
よって、思春期は成長の期間、反抗期はそこで見られる行動特徴の1つと言えると思います。
思春期は親にとって「難しいな」と感じる時期なのはたしかなので、そのような“手こずり感”が反抗期という時間軸で捉えられているように感じています。
最近は思春期が早まっていると聞くけど本当?
私の相談室でもよくそういう話題になります。
こちらのグラフは厚生労働省の平成30年度学校保健統計からの抜粋ですが、昭和20年生まれ、昭和45年生まれ、平成12年生まれの年間発育量の推移の違いを見れば、成長のピークが早まっているのは明らかなようです。
平成30年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/03/25/1411703_01.pdf
これには、栄養状態の改善がよく理由として挙げられていますが、現代の生活スタイルも影響しているのではと言われているそうです。
今の子どもたちは夜更かし傾向があり、夜遅くまで明るい光にさらされている子も多いですが、これは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌に影響を与えます。
日中の活動時間帯は低く、暗くなると分泌量が高まるのが特徴だからです。このホルモンの作用の1つとして、卵巣機能を抑制し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を低下させることが知られており、夜更かし生活でメラトニンの分泌が抑えられると、結果的にエストロゲンが増えるため、思春期が早まるのではということが言われているのだそうです。
親はどんな心構えをして子どもと接すればいいの?(ココロ編)
小学校半ば(3年生)をすぎると、客観的な物の見方ができるようになってきます。小さい頃にあった自己中心的な考え方から、他者の立場を理解する思考への移り変わりはとても大きな成長なのですが、それに伴い、「他者から見た自分」が気になったり、「自分と友達を比較」したりと何かと悩むことも増えてきます。
ただ、その悩みを親にストレートに打ち明ける子の方が少ないものなので、様子を察するということは大事なことです。
ここで“察する”とあえて書いたのは、この時期の心理状態にあります。
発達心理学者のエリクソンのライフサイクル理論では、12~22歳を青年期とし、子どもたちはこの期間に「自我を確立」するとします。それまでの両親への依存から離れ、一人前の人間としての自我を確立しようとするわけです。精神的な自立を試みる中で、親は距離を置きたい存在となるため、何か気になるからと詮索するようにあれこれ聞いてしまうと、逆に距離を置かれてしまうこともあります。
だからと言って、親に放っておかれるのも好みません。なぜなら、自立したい気持ちはあるものの、心理的にはまだまだ未熟なところがあるからです。
離れたいけど離れられないという葛藤が子どもたちをいら立たせるわけです。親にとっても接し方が難しい時期ですが、子どもたちも悩んでいるということですね。
思春期の子育てのポイントについて、心理学の教科書である「ヒルガードの心理学」にはこのように書かれています。
●規則について明白で、ゆるぎない態度を持ちつつも、温かく子どもを支える親の場合 は、その子どもたちは青年期を通してほとんど大きな問題を起こすことはない。
●親が権威主義的で、厳格な規則を持ち、子どもに対し温かさに欠ける態度をとる場合、もしくはあまりにも甘すぎる場合、子どもはより多くの情緒的トラブルや行動の問題を示す傾向がある。
小さい頃のようにべったりではありませんが、温かく子どもを支えていくことが大事ということです。
たとえば、一緒に夕食を取ったり、テレビを見たりという時間を持つことはその象徴的な行動だと思います。子どもたちにとって、家庭が安全基地であり絶対的な居場所であることを感じさせていけることが、この時期の親の接し方として大切になるでしょう。
親はどんな心構えをして子どもと接すればいいの?(カラダ編)
第二次性徴は、子どもの体型から大人の体型への変化をもたらします。たとえば、男の子であれば声が変わったり、女の子であれば胸が大きくなったりと、周囲の人が見てもわかる変化があります。
上記で触れた心の部分の変化は、内面の成長のため察することで知り得ることですが、体の変化は気づきやすい分、本人もとまどうことが多いと思います。
中には、その成長を恥ずかしいこととして捉えてしまう子もいると思うので、そういう様子を感じ取ったら、大人になるための順調な成長であることを伝えていきましょう。
ママであれば、生理の時期のイライラは経験している人が多いはず。「ホルモンバランスが崩れるとイライラすることもあるんだよね」など、自分の経験談を伝えていくのもよいのではないでしょうか。
体の成長は目に見える分、周りの子との比較の対象になりやすいという点も気に留めておきたいところです。
自分の方がみんなよりも成長が早い場合も、逆に遅い場合も悩みになりがちです。私たちが子どもだった時代を振り返っても、思春期の成長は個人差が大きかったですよね。
年単位で違うこともあるので、個人差としては幼少期以上でしょう。ただでさえ他者との比較が顕著になる時期でもあるということを親として認識しておきたいところです。
この時期のコミュニケーションのポイントは?
とくに気になることがないごく普通の日常でも、たわいもない会話が一転し、へそを曲げてしまうこともあるのがこの時期。ちょっとした言葉に目を逸らしたり、ムスッとしたり、「今の言葉傷ついた」とリアクションしたりと、「思春期は地雷がいっぱい埋まっている……」と感じる方も多いでしょう。
上記にご紹介したようなこの時期特有の心理発達を踏まえておくと、多少コミュニケーションも改善されるかもしれません。一番の特徴は、「自立したい」ということ。でも、「まだ頼っていることも多々ある」ということです。
よって、
●上から下に物を言うような言い方
●「あなたは○○だよね」と決めつける言い方
●責任を丸投げしてしまう言い方
●何でもわかっているというような言い方
などは引っかかりが生まれやすいと思います。
思春期は、それまで「○○さん家の○○ちゃん」だった存在から、一個人として脱皮しようとする自分探しの期間。子どもの身長が伸びて目線が同じ高さになってきますが、心理的な目線も合わせていくことがポイントになります。つまり、お互いリスペクトし合う姿勢が大事ということです。
ただ中には、このくらいの心がけではどうにもならないということもあるかと思います。これまでの経験で感じるのは、思春期にさしかかる段階で、子ども優位になっているご家庭ほど大変だと感じやすいということです。思春期の間にさらに親が振り回されがちだからです。
あとは過保護傾向にあるご家庭も悩みを抱えることがあります。それまで親が手を貸していることが多かったため、自分でこなす力が十分でなく、自立したい思いとぶつかるため、反抗が強く出てしまうことがあるのです。
そうならないためにも思春期手前で親子のバランスを整えておくことが大事と言えます。しかしもうすでに突入していて困難を抱えている場合は、子どもと同じ土俵に立たないよう意識してほしいと思います。
それをやってしまうと、ついきつい言葉を放ったり、強く指示的になってしまい、子どもとの関係が悪化してしまうからです。もし子どもがシャッターを下ろしてしまうと、まったく口をきかないというようなことになりかねず、いったんそうなってしまうとそこからの回復には時間がかかります。
それよりは、上記の安全基地としての場を意識する心がけの方が状況を緩和させることが多いと言えます。もしあまりにも反抗がひどく家庭だけで対応できない場合は、学校や専門家など周囲にアドバイスを求めることをおすすめします。
以上、思春期にまつわる問いにお答えしてきました。この時期の子どもたちは同年代の友だちからの影響を大きく受けながら自分を見つけていきます。
大人からの干渉を好まないものの、それでも温かなまなざしを必要としているアンビバレントな状態ですが、少し距離を持って見守っていくことが大事になります。
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育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/