おうち時間で増える、兄弟喧嘩の正しい対処法とは?
コロナ騒動で、おうち時間が増えている今、ママを悩ますのが兄弟喧嘩。喧嘩をしたくなる心理から、兄弟喧嘩を起こしにくくするコツまで、心理カウンセラーの視点でお伝えしていきます。
目次
兄弟喧嘩に至りやすい性格や環境ってあるの?
私が受ける育児相談でも、兄弟喧嘩はよくトピックとして挙がります。それだけ、親の悩みの種になりがちだということでしょう。
兄弟がいるとむしろ喧嘩をしないというご家庭の方が珍しく、小さいうちは、多かれ少なかれ、どのご家庭でも兄弟喧嘩は見られるものですが、軽重はあります。
悩み相談に至るほどひどい喧嘩もあれば、そうでない場合もあって、やはり喧嘩に至りやすいタイプの子、あとは喧嘩が繰り返されやすい環境というのはあるように思います。
タイプとしては、生まれながらの気質で、意固地になって否定的に粘ることが多い子や喜怒哀楽の大きな子は、感情的に訴えることが多いので、兄弟喧嘩に突入しやすいようです。
また男の子と女の子を見ると、上も下も男の子という組み合わせの方が、悩んでいるケースが多いように思います。
男女を比べると、やはり男の子の方が、小さい頃から力があるので、同じ喧嘩でも大ごとになりやすいですし、さらにはそれで「叩くと思い通りになる」のような学習をしてしまうと、次回も手が出たりとエスカレートしがちになります。
喧嘩の心理:なぜ兄弟間のもめごとは起こる?
では、なぜ兄弟間で喧嘩は発生しがちなのでしょうか? その心理は子どもがウソをつく感覚と似ているところがあります。
・自分の欲しいものを手に入れたい
・自分の方がちょっと得したい
・少なくとも、損はしたくない
このような思いが、
「ボクが先にやりたい」
「ずるい、ワタシが先」
「お兄ちゃんばっかり」
「ワタシの方が少なくてずるい」
という喧嘩のきっかけを生み出しやすくなります。自分の立場を危うくするものから逃れ、優位に持っていきたい、言うなれば、喧嘩は自己防衛策とも言えるのです。
エゴセントリズムでどうしても自分中心になりがちな時期
このように、「自分がちょっと得したい」という心理が喧嘩のきっかけになることが多いのですが、でも実際に、親が子どもたちに完全にフェアに接したとしても、喧嘩は起こるものです。なぜなら、子どもが持つ「平等か、不平等かという感覚」は主観的なものだからです。
たとえば、家に1つしかないおもちゃを交互に使うという場面を見ていきましょう。
正確に数えていれば、上の子、下の子5回ずつというまったく平等な状況であっても、もしかしたら上の子が、「ボクは全然使わせてもらっていない」と言い出すかもしれませんし、下の子がママに、「お兄ちゃんばっかりやってる」と不平を言うかもしれません。
このように、実際には、「平等」であっても、子どもの目にはそう映らないことがたくさんあります。
以前お伝えしたピアジェ博士の認知発達段階理論でもわかるように、7歳くらいまでの子は「エゴセントリズム」と言って、自己中心的な見方をするという特徴があります。
大きくなってくると段々と兄弟喧嘩が減ってくるのも、相手の立場に立った物の見方が育ってくるからでもあるのですね。
おうち時間が長い今、ママはいったいどうしたらいい? 4つの対処法!
ようやく学校が再開されましたが、今後は夏休み、あとは第二波が来るかもしれないとも言われており、今までにないほどに家にいる時間が増えています。
「下の子に合わせると上の子がすねる」
「モノの取り合いで1日終わる」……。
と子どもたち同士のいざこざに頭を抱えている方も多いと思いますので、ここで、兄弟喧嘩の対処法について見ていきたいと思います。
【対処法その1】 軽いものは見届ける
まず言えるのは、1つ1つに介入していく必要はないということです。兄弟喧嘩は、ひどくならなければ、少なからず学びはあるので、「いい社会勉強だ」というくらいに捉え、見届けるのがいいのではと思います。
ただ、二人でなんとか解決できず、下の子が、「ママ~っ」と泣きついてきたり、上の子が力ずくで制してしまったりするような場合は、関わりも必要になってきます。
【対処法その2】 ママが力ずくで制圧しない
一般的に、兄弟喧嘩は、いったん起こってしまうと収拾がつきにくいものです。もしママが、子どもが大声で叫び合っている中に割って入り、喧嘩を鎮圧しようとすると、ついついママも大声を出してしまいがちです。
でもそれをやってしまうと、子どもに、「大声で制圧する姿」を見せてしまっていることになり、それではお兄ちゃんが弟に力で勝とうとしているのと同じになっていまいます。勢いで制圧するクセを加速してしまうので、親自ら注意していきたいポイントになります。
すでに書いたように、子どもたちは自分の主観でその状況を見ているので、いくらママが「平等、平等」と力説しても、子どもたちはそれぞれ自分の意見を主張し、聞く耳を持ってくれません。
ですので、いったん起こってしまった喧嘩を言葉だけで鎮めるのはなかなか困難だということは知っておいてほしい点です。
【対処法その3】 物理的な距離がポイントに
明らかにどちらが悪いというわけではない兄弟喧嘩では、二人の距離を離してあげるのが一番おすすめです。喧嘩の根源(たとえばおもちゃ)からも離し、本人同士も離す、このように距離を物理的に離すと、落ち着きやすくなります。
離す際は、感情的に指示すると子どもも拒むので、「わかったよ、後でお話聞くから、一回別々のお部屋に行こう」と理解を示しつついざなうのがポイントです。
下の子がまだ小さい場合は難しいかもしれませんが、幼稚園生くらいになれば、10分くらい自分の好きな本を読んだり、動画を見たりして過ごすことはできると思います。
人間誰でも、ずっと怒りの頂点で居続けることはないものですし、10分、20分経つとだいぶ冷静になってくるものなので、時間と距離を活用し、自然にトーンダウンするのは賢明な方法です。
その後、おやつの時間などを使って、子どもたちの話を聞いてあげる方が、建設的な話ができるはずです。
【対処法その4】 喧嘩前の行動肯定が一番の介入どき
繰り返しになりますが、喧嘩はいったん悪化すると、手に負えなくなることが多いです。つまり、始まってしまうと、できることが少なくなるのです。なので、本当の介入どきは喧嘩が起こる前!
ママは忙しいので、いざ問題が発生してから現場にかけつけることが多く、兄弟で喧嘩せずに遊んでくれてるうちは、声をかけずにそのままということが多いかもしれません。
でも、喧嘩やもめごとを発生させにくくするためには、あらかじめ軌道を作っておくというのがポイントになります。
たとえば、まだなんとか二人でいいムードで遊んでいる段階で、「貸し借りが上手だね」「さすがお兄ちゃん、譲ってあげるんだね」のように二人の行動を肯定し、ほめていくのです。
このように、すでにそこにある「上手くいっている状況」をママがどんどん口にし、ほめるようにしていくと、子どもたちはその軌道に沿った行動を取ることが増えてきます。
兄弟喧嘩はゼロにはなりにくいものですが、小さく収めたり、頻度を減らしたりすることは可能です。ここでご紹介したように、大事なのは喧嘩前の軌道づくり。できていることをどんどんほめて、行動を肯定していくのがポイントです。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/