嫉妬?やきもち?「赤ちゃん返りの対処法」

嫉妬?やきもち?「赤ちゃん返りの対処法」

第二子出産後に起こりがちな、上の子の赤ちゃん返り。下の子のお世話に忙しくて、上の子を後回しにしていたら、さらにすねて状況が悪化……。こんな経験をされている方も多いと思います。そこで今回は、赤ちゃん返りにどう対応していったらいいのかを、その心理的なメカニズムを踏まえて解説していきたいと思います。

赤ちゃん返りとは?

赤ちゃん返りとは、子どもが赤ちゃん期に戻ってしまったかのような行動を取ることを言います。親が気づくきっかけとして多いのは、主に次の4つが挙げられます。

その1 できていたことができなくなる
たとえば、
•それまでできていた朝の着替えができなくなった
•歯みがきを自分でしなくなり、「ママやって」と持ってくる

その2 甘え行動が増える
たとえば、
•抱っこをしきりにせがむ
•ママが座るとすぐにひざの上に乗ってくる

その3 注意引き行動をする
•物を落として大きな音をさせる
•日頃ダメと言っていることをわざとやる

その4 ぐずりや駄々をこねることが増える
•指示が通りにくくなり、すぐにぐずる
•それまでトラブルにならなかったことでもめるようになる

この中でも1が一番の大きな特徴と言えます。つまり、子どもの行動パターンに大きな逆行が見られるわけです。2、3、4に対しても、それまではそこまでひどくなかったのに、甘え行動、注意引き行動、ぐずりの頻度が増えた、このような場合は赤ちゃん返りの可能性が高いと考えられます。なお、もともとぐずりや駄々こねが多い場合は、赤ちゃん返りというよりは、むしろしつけの方に要因があることが多いので、その際はその部分の見直しが必要でしょう。

赤ちゃん返りを起こす時期

赤ちゃん返りというと、一般的には2人目が生まれた後の上の子の反応をイメージする方が多いと思いますが、実際にもこのパターンが一番多いと思われます。下の子が生まれて、上の子にそれまでのような時間がかけられなくなることは避けられないため、自ずと赤ちゃん返りが起こりやすくなるのですね。

これまで私がさまざまなご家庭のご相談に乗ってきた経験で感じるのは、赤ちゃん返りは、2人目を出産したらすぐに起こるものだと捉えている方が多いということです。たしかにそういう子もたくさんいますが、すぐではない子もたくさんいます。「いつ赤ちゃん返りが来るかと待ち構えていたけれど、うちは大丈夫だったみたい!」と喜んでいたら、その矢先に……ということもよくあります。

その子にとっての「物足りなさ」が満ちると出てくるものなので、新生児期に大丈夫だからもう安心というわけではないのですね。

また、2人目の産後がもっとも赤ちゃん返りが起こりやすい時期ですが、実際にはそれだけではありません。「それまでできていたことができなくなる」を赤ちゃん返りの定義とするならば、子どもの心の揺れに応じていつでも起こりうると言えます。

引っ越し、転校などの大きな環境の変化はもちろん、入学や進級の時期も可能性があるでしょう。

赤ちゃん返りが起こるメカニズム

子どもがなぜ赤ちゃん返りを起こすのかと言えば、愛情確認が理由です。心理学的に言えば、アタッチメントの確認と言えます。これは親に対する精神的な絆のことで、強く太く結ばれていると、その子の心の安定がもたらされます。

もし環境の変化などで気持ちが揺らぐと、その心細さから、絆の強さを確認しようとします。「弟が生まれたけど、ママはまだボク・ワタシのことが好きなのかな」と。子どもにとって、親が見てくれること、お世話してくれること、かまってくれることなどは、すべて“自分は愛されている”という認識につながるので、問題を起こしてでも自分に注意が向くような行動を取ってしまうのですね。

赤ちゃん返りに対しできる4つの工夫

赤ちゃん返りは愛情確認の1つ、そう考えると、甘えてくる仕草をぞんざいに扱うことは望ましくないことがわかります。ここからは、どんな工夫ができるかを見ていきましょう。

ポイント1 「上の子なのだから」の使い方に気をつける
2人目が生まれて起こる赤ちゃん返りでは、下の子のお世話に大忙しになるため、上の子には、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだからちょっと待って」と言ってしまいがちです。しかしこれだと、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんかになりたくなかった」と思いたくもなってしまいます。「上の子=大損」だから、「赤ちゃんでいた方がずっといい」と赤ちゃん返りを促してしまうことにもなりかねないので、お兄ちゃん、お姉ちゃんという言葉を、このような場面で使うのは避けましょう。

ポイント2 1対1の時間を作る
きょうだいができれば、自然とパパ・ママを独り占めする時間は減ってしまいます。とくに下の子が小さいうちは、どうしてもお世話に明け暮れる日々です。上の子にかける時間が減ってしまうのは致し方ないことではありますが、欠乏感があるままだと、困った行動を連発したり、ぐずって泣いたりの繰り返しで、その対応にさらなる時間がかかってしまうこともあるはずです。そんな困りごと対応に時間をかけるよりは、上の子との1対1の時間を意識的にセッティングし、愛情の充足を図る時間に使った方がずっと賢明です。下の子がお昼寝をしている時間でもいいですし、夫婦で分担してもいいので、1対1の密な時間を作っていきましょう。お子さんがやりたい遊びにどっぷり浸ったり、特別なおやつタイムにしたりと、上の子でよかったと思える過ごし方がおすすめです。

ポイント3 できていることを肯定し自立を促す
一方で、上の子はこれからお兄ちゃん、お姉ちゃんとして大きくなっていきます。できることが増えていけば、パパ・ママも助かりますから、自立を促す働きかけも大切になってきます。だからと言って、上から物を言う感覚で、「あれしなさい、これしなさい」と口頭での指示だけを出していると、きっとへそを曲げてしまうので、やる気を促す声かけを工夫してみてください。おすすめなのは、“すでにできている行動”を拾っては肯定する、これを繰り返すことです。たとえば、もともと歯みがきは1人でできるのに、最近になって、「ママやって」と歯ブラシを持ってくるようになってしまった子も、その手前のできている行動をしっかり声にだしてほめていく形です。洗面所に行けていること、歯ブラシを手に取ったこと、歯磨き粉をつけたことなど、歯みがきに付随する一連の動作を小さく分けて捉え、「歯みがき粉を自分でつけたのね、さすがお兄ちゃん・お姉ちゃん!」のように声かけします。“お兄ちゃん、お姉ちゃん”というフレーズは、こういう場面で用いるようにすると、上の子=得した、という認識につながりやすくなると思います。

ポイント4 一緒にお世話をしてみる
さらにできる工夫が、上の子が赤ちゃんのお世話に関わることです。授乳やおむつ替えのお世話の場面で、小さな仕事を作っていくのです。おしりふきを3枚出す仕事、おむつを使いやすく広げる仕事、哺乳瓶を持ってあげる仕事、など、年齢に応じた役割を担わせていきます。ママの中には、赤ちゃんに何かあっては大変と心配するあまり、上の子が下の子に関わることを好まない方もいますが、見守りながらお世話を一緒にしてあげられれば、下の子への愛着にもつながります。お兄ちゃん、お姉ちゃんだからできることなので、ぜひ仕事を作ってあげてほしいと思います。

おばあちゃんやペットまで、赤ちゃん返りは弟・妹だけじゃない!?

ここまで、主に下の子への嫉妬からの赤ちゃん返りを見てきましたが、対象はきょうだいだけではありません。

たとえば、ママが実家に帰省したとき。久しぶりとあって、実母と積もる話を次から次へと話していると、気づけば、わが子がおばあちゃんに嫉妬してしまうケースです。ママがおばあちゃんと話していると、すぐにママの膝の上にのり、2人の視界の間に入ったり、話そうとすると、子どもが、「ママこっち」と注意を引くようになったり……。

また別のパターンでは、ペットに嫉妬してしまうことも。子どもに、「犬を飼いたい」と懇願され、子犬を迎え入れたところ、初めはトイレトレーニングなどのしつけでとにかく手がかかり、肝心の子育ての方がやや疎かに。子どもがすねることが増えてしまったということもあります。

このように子どもにとっては、おじいちゃん、おばあちゃん、そしてペットに対しても、パパ・ママの愛情を取られたと感じることがあるのですね。

このようなときの対策としては、

【実家での赤ちゃん返り】
たまの帰省の場合、おじいちゃんやおばあちゃんと打ち解けるのに時間がかかり、よけいにママにべったりというお子さんもいます。そういう場合は、ママを絡めておじいちゃん、おばあちゃんとの距離を縮めてあげる工夫ができると望ましいと思います。嫉妬の対象だったおばあちゃんが、実は自分のことも大好きなんだということに気づけば、一段階状況がよくなるはずです。

【ペットへの赤ちゃん返り】
人間の赤ちゃんに限らず、動物も小さいうちはしつけやお世話が大変です。子どもにせがまれてペットを飼いだしたというご家庭も多いと思うので、“飼い主さん“としての意識を芽生えさせるためにも、一緒にお世話に関わってもらうというのはとてもいい働きかけです。「嫉妬している場合じゃないですよ」ということですね。ペットとママの間にグイグイと入ってきてもらいましょう。

赤ちゃん返りの予防策

最後に、これから2人目を考えているというご家庭へのアドバイスです。

私の育児相談室でよく聞かれるのが、「赤ちゃん返りをひどくしないために、今からできることはありますか?」というご質問です。お腹に赤ちゃんを迎え、上の子の赤ちゃん返りの可能性が気になってくる頃に聞かれることが多いのですが、いつも私は、「今、がんばり過ぎないでくださいね」とお伝えします。

育児は、これで100%ということがありません。1人目の子育てでは、はじめての育児ということもあり、力の入れ加減がわからずに、とにかくがむしゃらになってしまうことが多くなります。育児書に書いてあるとおりにならないと不安になってしまう方も多いですよね。

上の子にとっては、はじめの数年の関わり方が基準となるため、もしママががんばり過ぎて、そのときすでに力量の100%以上を注いでいたら、2人目誕生で、ママのパワー減をより大きく感じてしまうことになります。がんばり過ぎてしまう傾向のある方で、ぜひ見直してほしいのは、「何もかもやってあげ過ぎていないか」という点です。

子どもに寄り添うことは、育児においてとても大事ですが、寄り添い過ぎてしまうと、子どもが自分で何かをする機会が減ってしまうことがあります。子どもが何かに手こずっているときに、かわいそうだからとすぐに手を差し伸べてしまう傾向がある方は、ここで言う寄り添い過ぎかもしれません。ボタンをはめようとしているけどなかなかはまらない、積み木を積み上げようとしているけどうまくいかない……。このような場面は見ているとやきもきするものですが、そこを超えることで子どもたちは成長します。その子の自立のためにも、“任せる”ということを意識的に増やしていけるといいと思います。

感覚としては、2人目を育てるくらいの心づもりで1人目を育てるのが、きっとちょうどいいさじ加減だと思うので、もし自分が過保護や寄り添い過ぎかもと感じたら、そこを見直すことも、今後起こりうる赤ちゃん返りへの予防策につながるはずです。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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