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SDGsへの改革が加速するフランス。小さなパリっ子たちも実践する取り組みとは?

SDGsへの改革が加速するフランス。小さなパリっ子たちも実践する取り組みとは?

フランスではSDGsへの取り組みが進み、若者たちも多大な関心を寄せています。なかでもパリ市では市長の意向などもあり、SDGsを意識した改革がここ数年で驚くほど加速してきました。小さなパリっ子たちや観光客なども関わっているこういった施策について、現地からお伝えします。


以前は駐車場だったパリ・パンテオン広場の憩いの場

自転車都市を目指す市内でパリっ子たちの移動手段はキックボード

パリのアンヌ・イダルゴ市長は車の通行量を大幅に減らし、自転車を交通手段の中心に据えた街をつくろうという考えでいます。車道を減らしたおかげで幅広になった歩道は、憩いの場になったり、草花が植えられたりしています。

第1回目のロックダウン中には、自転車専用レーンの工事が急ピッチで進められました。ロックダウンの解除とともに、自転車の利用者が激増。ステイホームのなかで環境問題について考える余裕ができたこと、コロナ渦でバスやメトロの利用を避けたいこと、運動のためなど、利用者の動機はさまざまです。パリ市が運営を手がけるレンタサイクルや、レンタル電動キックボードを利用する市民が多く、観光客にも徐々に広まっています。

小さなパリっ子たちの交通手段は、何と言っても、非電動キックボードです。キックボードに片足を乗せ、もう片方の足で地面を蹴って、歩道を全速力で駆け抜けていきます。「ちゃんと前を見なさい!」と遠くから母親の叱る声が聞こえますが、子どもたちは思い切りスピードを出すのに夢中なのです。

非電動キックボードは歩道で利用できるためパリっ子たちに人気のアイテムで、CO2を排出しないことからSDGsにも一役買っています。通園・通学でもキックボードで登校する子どもたちが多く、校舎内にはキックボード置き場が設置されています。


どこへ行くにもキックボードを利用

子どもでも投票できるSDGsに通じる市民参加型プロジェクト

パリ市では毎年、市の予算の5%が市民の提案したプロジェクトに使われています。年齢、国籍を問わず全市民が投票できるため、小さなパリっ子たちにも投票権があります。2月にプロジェクトを募集して春に審査があり、審査を通過したプロジェクトが7月に発表されて、9月に市民投票が行われます。

全市民の誰もが投票できるようにデジタルとアナログの両方を使った投票が可能で、2014年以降に2,700件以上のプロジェクトが実現しました。可決されたプロジェクトの一例として、リサイクルショップの立ち上げ、公園や歩道や屋上の緑化、噴水の修復などが挙げられます。

SDGsのために作られた制度ではありませんが、環境問題をはじめ貧困地区やホームレス支援といったSDGsに通じるプロジェクトが多いことから、パリ市民のSDGsに対する関心の高さがうかがえます。

子どもでもホームページに掲載されたプロジェクトの内容を読み、気に入ったプロジェクトを3つまでクリックして投票しています。投票結果は公開され、可決されたプロジェクトの進み具合もホームページや現場で確認できるため、自分の目で最後まで確かめることができるのです。この制度のおかげで、「社会をより良くしていくためには、まずは投票すべき」ということを子どもたちは学んでいます。


歩道の緑化も進んでいる

中学生の職場体験「スタージュ」は平等や自立への意識を育む

2005年から、中学校最終学年の4年生(日本の中3)には2~5日間の企業内研修「スタージュ」が義務づけられています。スタージュを受けなければ中学は卒業できません。特別な例外を除き学校側は何も手伝ってくれないため、生徒たちは何とかして研修先を見つけなければならないのです。

すでにやりたいことがある生徒や、「自分のことは自分でしなさい」と親に言われている生徒は、直接お店や会社に行って直談判します。履歴書と志望動機書を準備し、必死に研修先を探すのです。マクロン大統領に手紙を書いて、大統領官邸でスタージュをした生徒もいました。

とくにやりたいことがない生徒は、親の職場について行くか、親の知り合いの紹介で研修先を見つけたりします。自力で見つける以外は親のコネが大きく影響するため、スタージュが義務付けられた当初は住む地域と親の職業によって研修内容の差異が目立ちました。裕福層が住む地域では親のネットワークでホワイトカラーの研修先が多数を占め、貧困地区では近所のスーパーで下働きというように分かれていたのです。

しかし、それではいけないということで、貧困地区では学校と地元企業が連携したり、公的機関が低所得者家庭の子どもを優先的に受け入れたり、パリ市内で研修が受けられるように定期代を無料にしたりなどの取り組みがされるようになりました。

パリの国立科学研究所でスタージュ研修を受けた低所得家庭の生徒は「フランス社会には見えない階級バリアがあり、それを破って上へ行くのは到底無理だと諦めていたけれど、研修後は自分でも上を目指して研究者になれるかもしれないと思えるようになった」と語っています。そう考える子が1人、また1人と増えていくようにと、スタージュ制度は今後も続いていくと思います。

まとめ

パリの子どもたちはキックボードで街を駆け抜け、街づくりプロジェクトに投票し、社会勉強のためにスタージュを受けます。いずれも、世の中をより良くするため、そして子どもたち自身が平等さや自立を目指していくために必要なことです。

パリではこういったSDGsに沿った取り組みが次世代の子どもたちにも波及していく様子が、暮らしのなかで感じられます。レンタサイクルで周るパリ観光が徐々に人気を集めているなど、その波及効果は市民だけでなく観光客にも広がっているようです。

<参照URL>
パリ市のホームページ
パリ市の「市民参加型予算プロジェクト」のホームページ

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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