幼児教育のプロたちが2023年の入試問題を徹底解説! 2024年の入試までに親子で備えたい力とは?
ジャック幼児教育研究所、伸芽会、みつめる21、理英会の小学校受験塾による共同イベント「2024年度 小学校入試を迎えるにあたってセミナー」。4回目となる今回は、4つの幼児教室に通われる保護者約1,000名に加えて、実際に子どもたちを指導している先生たちのアンケートをもとに、さまざまな視点での発表が行われました。
幼児教室のプロが見る小学校入試問題の解説も必見です!
__はじめに、日本私立小学校連合会会長の重永先生より開会のご挨拶がありました。
コロナが5類分類になって以降、初の会となります。学校も通常の生活に戻りつつある一方で、マスクや黙食から抜けられないという声も聞きます。子どもたちにとってこの3年間はとても長く、まさに暗いトンネルの中で生活するような時間だったと思います。この時期を取り戻すためにも、私立小学校と幼児教室は対立関係ではなくて、子どもたちを健やか育て上げる同伴者的存在である必要があります。
また、入試問題は子どもを選別するものではなく、どのように学びを深めるかでなければならないと改めて感じています。よりよい私立小学校にするために、一丸となって頑張っていきましょう。
目次
より早い段階で小学校入試を考える家庭が増えている
__みつめる21の新中先生からは、年中年長の保護者1,000名弱からのアンケート報告、理英会の宮内先生からは、幼児教室の現場で子どもたちの指導にあたる講師からのアンケート結果の報告がありました。
今年も小学校受験を考え始める子どもの年齢のピークを調査しました。昨年は3~4歳がピークでしたが、今年は2歳~年中児と幅広い層に広がっており、より早い段階で小学校入試を考える家庭が増えていると言えます。
これは、コロナの影響で私立小学校への期待や安心感の高まりが要因と考えられます。
一方で、「まだ第一志望が決まっていない」ご家庭が昨年よりも増えていることも分かりました。つまり、「まず受験をする!」と決めてから学校を探すというご家庭が増えているということです。また志望校決定においては、校風や教育方針はもちろんですが、「通学時間」も大きなポイントになっています。さらに、今年のアンケートでは、「子どもの学力にあった受かりそうな学校」「アフタースクールの充実」という回答も増えていたのが印象的でした。保護者の方も、お仕事と両立しながらそこまで無理をしなくても入れる私学を探したいという気持ちが高まっているのかもしれません。
【志望校決定の理由は?】
1位 校風や教育内容
2位 自宅から近い
3位 進学実績
4位 教育内容(ICT教育や英語教育など)
5位 子どもの学力にあっている
受験の最短準備を望み、自身で努力しない親が増えている?
__続いて理英会の宮内先生からは、実際に指導されている現場の声として、66教室80名のスタッフアンケート結果から見えてきたことをお話いただきました。
幼児教室の先生たちに、2023年度の入試問題の中から「これはいい問題!」と思うものとその理由を聞いてみました。
〇横浜雙葉小学校の【指示行動】より
レジ袋を使って先生から指示された通りに動き、皆が終わるまで体操座りで待つという問題でした。「動き自体は難しくありませんが、集団でやることでふざけてしまったり集中力が続くよう自制心を保てるかを見る、いい問題だったと思います」
〇暁星小学校の【制作課題】より
制作課題が終わったら、自分で作った作品に対して◎〇△×で自己評価を紙に書いていくというものでした。「この年齢で冷静な自己評価をするのは難しいので、自分の失敗や足りない点を正しく認められる子は、入学後も伸びる子だと思います」
〇早稲田実業学校初等部【運動+行動課題】より
スキップ→階段を上がるって壁をタッチ→一段目からグ―ジャンプ→カニ歩き→合図でドリブル→先生についていくという、運動と集団行動を問う課題でした。
「カニ歩きやスキップでは、他者と歩調を合わせて歩けるか、階段の上り下りでは危険察知能力など、入学後の学校生活を見据えた、いい問題だったと思います」
また、5年前と比べると、
保護者は
・過保護、過干渉
・受験の最短を望み、自身で努力しない
・子どもをコントロールできない
人が増え、子どもたちは
・集団行動ができない
・気持ちのコントロールができない
・運動能力が低下
・すぐにあきらめる
・「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えない
といった声もありました。
改めて、幼児教室と家庭が一緒に取り組むことで合格につながること。
受験に最短ルートはなく、日々の生活の積み重ねである、ということが言えると思います。
2023年の面接では親子の関わり方やトラブルへの対応を問う問題も
__ジャック幼児教育研究所の吉岡先生からは、スクールカラーにあった良問など、2023年の入試問題で印象的だった問題や面接について解説いただきました。
【ペーパー試験】
〇雙葉小学校
知能の問題で「何通りもあるルートをトライ&エラーでじっくり考えて答えを出す」という問題が出されましたが、理解力、記憶力、忍耐力や応用力など複合的な力を育むという校風があらわれている問題だと思います。
〇成蹊小学校
単なる図形パズルではなく、星の数だけパーツを「あまらせる」という問題が出されました。テクニックよりもセンスや空間認識能力を見る問題で、学ぶ上での根本的な力を大事にする、成蹊小学校らしい問題だと言えます。
〇立教女学院小学校
絵に〇×△の記号が書かれており、その約束に従って、50問の絵の中から該当する絵をすべて選ぶという問題。50問の中には、ダミーがありますから記憶の邪魔や勘違いを誘発させます。根気強く取り組むという立教女学院らしさが出ている問題です。
〇暁星小学校
先生の指示をしっかりと聞いて記号を書き込んでいく問題でした。内容は単純ですが、入学してから、授業内容を正確に聞いて書き取ることを想定している良問ですので、きっと暁星好みの子を選抜できたはずです。
〇青山学院初等部
海にお泊りにいくのに何を持っていくか。どこに何をどの順番でリュックに入れたかを問う問題です。コロナ前は実物を使っていましたが、動画を使って展開していました。先生のお話をよく見て聞いて、1度で確実に理解してほしいという学校側の狙いがよくあらわれた問題です。
【面接】
「親子の関わり」を見る問題として、
〇折り紙のお弁当箱と風呂敷を渡され、一緒に包んだあと、お父様が子どもの頃のお弁当に関する思い出をお話ください(雙葉小学校)
〇休日に家族が喜ぶものを作るとしたら何を作りますか? 3人で相談して教えてください(聖心女子学院初等科)
などはとてもいい問題だなと感じました。
さらに、
・本校を2分間で紹介してください
・1分間ご夫婦で相談なさってから答えてください
など解答時間が指定される問題や、
・ジェンダーフリーやジェンダーレスについてどのようにお考えですか?
・今世界で起きている戦争についてお子様にどう伝えますか?
・10年後20年後、お母様が挑戦してみたいことは何ですか?
・お子様を女性、男性、ベテランとどのような先生にお願いしたいなど希望はありますか?
・お子様の考えを把握するためにしていることを教えてください
など、家庭や保護者の考えを掘り起こす問題が多く見られました。
さらには、最近の傾向として
・学校でトラブルがあったらどのように対処しますか?
・学校に行きたくないと言ったらどうしますか?
・お子様が悩んでいるときにご家庭での接し方をお聞かせください
・お友達に怪我をさせてしまったらどうしますか?
など、ネガティブな状況を想定して対応策を聞くことも増えているようです。
このあたりも入試までにしっかりと考えをまとめておくとよいでしょう。
入試本番では教室の掲示物や最新機器に目を奪われないよう注意!
__最後に、伸芽会の飯田先生からは、試験で実際に起こりうる幼児が他のことに気を取られてしまう注意点のお話がありました。
幼児は「初めて見るものに注目する」という傾向がありますから、私立小学校のプロジェクター(本体)などの最新機器に目を奪われ、内容を聞けずに解答できなかったというケースも毎年あります。また、字が読めるお子様の場合、教室の時間割や習字の作品を読みこんでしまい、試験問題を聞きそびれてしまうということも……。せっかく入試まで対策してきても、本番で他のことに気を取られてしまっては台無しですから、このあたりも事前によくお子さんにお話しておいた方がいいと思います。
さらに、小学校受験を迷われているご家庭にお伝えしたいのが、「公立は無料で私学は高い」という誤解についてです。もちろん、私立小学校の学費は安くはありませんが、中学受験と大学受験と2回受験する場合、そのための塾代や入学のための資金をトータルで考えると、実は大学までの一貫校とそこまで差がないケースもあります。
ワーキングマザーも増えた今、私学でもアフタースクールを充実させるなど、働く女性に寄り添った取り組みをされる学校が少なくありません。ぜひ、長期的な目でお子様の将来を考えて、私学もその選択の一つに入れてみていただけると嬉しいです。
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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