遠すぎても近すぎてもダメ!今どき親子の正しい距離感とは?

遠すぎても近すぎてもダメ!今どき親子の正しい距離感とは?

わが子との距離の取り方は、毎日一緒に過ごしている分、見えにくく意外と難しいものです。ここでは、現代の親子に見られる距離の傾向から、子どもとの距離はどうあるべきかを心理学を交えてお伝えしていきます。

ネガティブペアレンティングから見た親子間の距離

子育てに悩んでいるのは日本だけではなく、どこの国でも同じ。海外の児童心理学の調査やレポートなどを見ると、よく「Negative Parenting」という言葉を目にします。これは、直訳すると“ネガティブな子育て”を意味します。

「ネガティブな子育て」に対する言葉は「ポジティブな子育て」となりますが、両者を比べて何が違うかというと、親子間の距離が違います。これを聞くと、親子間の距離が近いのがポジティブな子育てで、遠いのがネガティブな子育てだと考えるかもしれません。でも実は違います。ポジティブな子育ては親と子がほどよい距離感を保っている状態であり、遠過ぎても近過ぎてもネガティブな子育てになります。

ここで、ネガティブな子育てを遠近で分けて考えてみましょう。聞き覚えのある言葉で区分すると、

■親子間の距離が遠いタイプのネガティブ子育て

ネグレクト
育児放棄
体罰
虐待

■親子間の距離が近いタイプのネガティブ子育て

ヘリコプターペアレント
カーリングペアレント
過保護
過干渉

のように分けられます。聞いたことがある「よくない育児」のオンパレードですね。どれも不適切な育児とされるものですが、親子間の距離という切り口で見ると、こう分けられるのです。

近過ぎ             理想的        遠過ぎ
ヘリコプターペアレント ←←←←←|→→→→→  ネグレクト
カーリングペアレント  ←←←←←|→→→→→   育児放棄
過保護         ←←←←←|→→→→→     体罰
過干渉         ←←←←←|→→→→→     虐待

子どもとの距離が遠過ぎる育児に関しては、異論はないでしょう。ネグレクトや虐待がネガティブな子育てに当たるのは当然と納得ですが、では過保護はどうでしょうか?

ネグレクトと同類にされるほど、悪いイメージはないのではないかもしれません。しかし、これら2つは対極にありながらも、どちらもネガティブな子育てに区分されるのです。

現代に多いのが近過ぎ親子

ネグレクトや育児放棄と過保護を比較すれば、その深刻さでは前者の方が子どもの生死にかかわる分、問題です。しかし社会全体を見渡せば、過保護傾向の広がりも見逃せません。件数から見れば、圧倒的に過保護の方が多く、今の子育ての傾向と言っても言い過ぎではないでしょう。

過保護の典型として、親の先回り行動があげられます。大人は長く生きている分、この後何が起こるかを予測する力に長けています。それをフルに使って、お膳立てをしてあげたり、代わりにやってあげたりして、子どもがイヤな思いをしないようにするのです。子どもの方は、親が先回りして整えておいてくれた失敗や苦労のない道で、毎日を過ごしていくことになります。

ここには、持ちつ持たれつの関係があり、心理学で言う「共依存」の状態ができあがってしまいます。親は子どもの世話をすることで自分の価値を見出し、子どもはやってもらうほど楽なことはありませんからそれを拒みません。お互いに依存している状態のため、一見すると丸く収まっており、ずるずると行く傾向があります。子どもが思春期になって、「うちの親は何でも干渉し過ぎだ」と感じることで、過保護が露呈することも少なくありません。

目の届く範囲にいる小さい時期から「見守る」姿勢を

過保護で育てられた子は、依存グセがついてしまうため、自分で考えない、決められないなど、自立心に欠ける傾向が見られます。イギリスの大学が行ったいじめのリスクに関する分析では、虐待やネグレクトのみならず、過保護もいじめを受けるリスクを高める要因だったそうです。つまり、親子間の距離が遠過ぎても、近過ぎても、いじめのリスクを高めてしまうということなのです。

子どもは成長とともに、親から離れて過ごす時間が長くなっていきます。もしそれまでずっと過保護状態で手取り足取りだった子が、「もう大きくなったから」と急に手を離されたらどうでしょうか。先々を予測することが苦手なため、そのまま困難にぶち当たり、自分で立ちあがれず困ってしまうでしょう。

親がやるべきことは、子どもを常に”いい気分“で過ごさせることではありません。

・手を伸ばして、背伸びして、テーブルの上にあるおもちゃを取ろうとする
・靴をなんとか自分一人で履こうとする
・カーディガンのボタンをはめようとする

このような自立行動をそばで手を出さずに見守ってあげることです。その過程で、靴を左右逆にはいてしまったり、ボタンをはめたけれど1つずれの状態だったり、こういう経験をしながら子どもたちは自立行動を習得していきます。

親のそばで過ごす時間がほとんどの時期から見守り行動を意識できると、ほどよい距離感が保ちやすくなるでしょう。その際は、子どもに丸投げしないこともポイントです。自立行動を促したいからと言って、子どもに丸投げし、親は蚊帳の外だと逆に距離が遠過ぎです。

遠過ぎず、近過ぎない距離感は、実際にやってみると意外と難しく、とくにそばにいるときはついついやってあげたくなってしまいます。手を出さないのは「何もやってあげていないのも同然」と感じる方もいるかもしれませんが、子どもたちにとっては「ママやパパが見てくれている」ということがとても大事で、それで十分愛情を感じています。“見守る”は、見て守ること。目線を送ることで伝わる愛情はとても大きいので、あえて先回りせず、そばで見守ることを意識してみてください。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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