令和の子は足の発達が遅れている!? 適切な靴選びと足育のコツを専門家がアドバイス!

令和の子は足の発達が遅れている!? 適切な靴選びと足育のコツを専門家がアドバイス!

SNSなどでも度々話題になる、「足育」や「はだし育児」。実際に子どもたちを指導する幼児教室 伸芽会の先生たちも「最近は体幹が弱く、立っていても座っていても正しい姿勢を保てない子が増えている」と言います。

そこで、親が気になる子どもの足の発達や靴選びにまつわる疑問を、子どもの足の専門家であるフェルゼの伊藤笑子さんにお聞きしました。今日から実践できる足裏を育てるポイントも必見です。


伊藤笑子さん
伊藤笑子さん
フェルゼCEO(https://ferse.co.jp/)。新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。保健学修士・マスターシューアドバイザー。日独小児靴学研究会(JAGSS)の共同代表および常任講師として、小児靴カウンセラー養成指導者なども務める。これまで4.5万人以上の子のシューフィッテング実績を持つ子ども靴業界のパイオニアであり、整形靴技術者養成専門学校、靴販売現場、保・幼稚園、小学校、学童クラブや一般向けの啓発活動「足育講座」を25年以上続けている。監修書籍に『3歳までの子育ての教科書』(アスコム)、『小児靴の手引き書2023』(日本フットケア・足病医学会)
などがある。YouTubeチャンネル「フェルゼch」でも発信中!

なぜ日本の靴は縦のサイズだけなのか

__伊藤さんが子ども靴に関わるお仕事を始められたきっかけとは?
元々は百貨店で化粧品や婦人靴の販売員をしていました。35年ほど前になりますが、当時私を含めスタッフは毎日我慢しながらヒールパンプスを履いて働いており、自分に合う靴が見つからないと悩むお客様も多かったんです。そこで、「化粧品や下着は自分に合ったものを多くの種類から試して選ぶのに、なぜ靴は縦のサイズだけなんだろう?」と疑問がわきました。

調べてみると、靴先進国のヨーロッパでは縦だけではなく幅のサイズも豊富にあること、また日本では在庫の関係から「ちょっと大きめを履いて中敷きで調整する」のがスタンダードになっているということがわかったんです。

そこから「自分に合った靴選びの重要性を日本でも広めたい!」と思うようになり、ドイツに勉強に行って知識と技術を身につけ、フラウという専門靴店を開業。その後、大学院で小児の足と靴の研究をし、現在はフェルゼという会社も立ち上げ、小児靴の輸入と開発、靴の大切さを伝える活動をしています。

歩きたがらない子は靴に問題があることも多い

__伊藤さん自身がお子さんを育てる中で、靴の大切さを実感されたことはありますか?
子どもたちが小さい頃は日本ではまだ子ども靴の種類が少なかったので、ヨーロッパから合うものを取り寄せて履いていました。

足に合う靴を履くと、1歳児でもスタスタときれいな歩き方で転ぶことなく歩き、年子でしたがベビーカーは使わず二人とも積極的に歩いて育ちました。

改めて靴の力は偉大だと感じるとともに、多くの親御さんに、今までにない靴の選び方をお伝えし、子どもたちが健康でたくさん歩ける足に育ってほしいというのが私の願いです。もし、今お子さんが抱っこをせがんだり、歩きたがらない場合は、靴に理由があるかもしれません。

日本の子の足はかかとが未発達!?

__今どきの子どもの足の発達で気になることはありますか?
足の骨はかかとが土台となり、6歳までに発達すると言われています。ですが、最近の子どもの足を見るとかかとまわりの骨組みがしっかりしていないことも多いです。
理由としては、
・歩行時間、外遊びの機会や種類が減った
・幼児期にかかとを守る靴を履いていない

ことがあげられます。

その結果、体幹がしっかりと育たず、ふらふらして正しい姿勢を保てない子どもが増えているのです。特に6歳までは、
・かかとをしっかりと守れる高さと幅が合うもの
・甲を固定できるマジックテープのあるもの

を選びましょう。

ちなみにヨーロッパでは、子ども靴の木型もたくさんあり、幼少期から自分の足に合った靴を選ぶ習慣が根付いていて、家の中で足を保護する専用のルームシューズに履きかえる家庭が多いです。

実は日本で靴を履くようになったのはわずか70年しかありません。日本の靴選びが遅れている理由も納得いただけたのではないでしょうか。

__足の裏が発達していると、学力にも良い影響はありますか?
相関関系はあると言われています。足裏の感覚や筋肉が発達している子どもは、自分の力でしっかりと体を支えることができるので、姿勢がよくなり、集中力がアップすることが多いです。

これまでカウンセリングをさせていただいた中に小学校受験を控えた方もいらっしゃいましたが、お教室の上履きを変えたら姿勢がよくなり、本番の考査でも力が発揮できたというお子さんが多いです。

特に運動考査がある場合は、お子さんの足にあった動きやすい上靴に変えてあげるといいかもしれません。

子どもの足裏を鍛えるおすすめ遊び

__足裏を鍛えるにはどういう遊びをすればいいでしょうか?
子どもの足の感覚細胞や筋肉は、地面との接触でさまざまな刺激を受
けて発達していきます。足のトラブル予防にも役立ちますから、1日数分でもおうちで取り入れてみてください。

・つま先歩きとかかと歩き
→ いつもと違う足の使い方で筋肉が強くバランスもアップします
・足指でキャッチ
→ 地面に置いたペンやタオルなどを足指で拾い上げて容器に入れてみましょう
・足裏で床に置いたボールを転がしてみる
→ 足裏の血行をよくし、マッサージ効果も。リフレックスボールの他に、ゴルフボールやテニスボールでもOKです
・バランスディスクに乗ってみる
→ 不安定な場所で立つことで、足裏を刺激し平衡感覚を養います
・外遊び・歩行時間は1日合計60分を目安に!
→ 文部科学省の「幼児期運動指針」やWHOでも推奨。屋外で日光に当たり、歩くことで、骨にも刺激を与えてくれます

意外と知らない子どもの足の特徴

【足の形には3タイプある!? 】
足の形には大きくわけて3つのタイプがあります。簡単に指の長さで調べることができますので、ご自身やお子さんの足をチェックしてみましょう。

その①人差し指が一番長いの「ギリシャタイプ」
これは欧米人に多く、日本人では約25%。親指や小指のように「靴に当たって痛い」と気がつきにくく、人さし指が曲がったままで長期間過ごしてしまうと「タコ」「うおの目」や「ハンマートゥ」の原因となる可能性があるので要注意です。
「ギリシャタイプ」

その②親指がいちばん長い「エジプトタイプ」
日本人の約70%がこのタイプで、現在もっとも多い足の形とされています。靴の中で外側(小指側)に傾きやすく、巻き爪や陥入爪、外反母趾になりやすいとも言われています。
「エジプトタイプ」

その③親指から小指までほぼ同じ長さで四角い「スクエアタイプ」
日本人の約5%がこのタイプと言われており、つま先全体が靴で圧迫されやすく「どんな靴を履いてもつま先が痛くなる」と悩む人も多いです。

そのため、大きめの靴を選んでしまいがちで、結局は足が靴の中で前滑りして小指に「タコ」や「うおの目」ができやすいので、靴のつま先の形に気をつけて選びましょう。
「スクエアタイプ」

【子どもの足は成長とともに足幅や指の割合が変化する!】
足はただ縦にサイズが大きくなるわけではありません。幼児期の足は、つま先から指の付け根までがおおよそ足長の3分の1で、成人の足と比べると指が長い割合となります。

また、生後~2歳くらいまでは、つま先側にうちわ型に開いたような足型ですが、3歳くらいからだんだんに足長に対して、足幅が細い割合になります。

足の長さと足囲は女子で13歳頃、男子では14歳頃で、身長の成長が止まる年齢よりも早い年齢で成人とほぼ同じになります。
【子どもの足は成長とともに足幅や指の割合が変化する!】

はだし育児のメリット・デメリット

__最近では「はだし保育」を推奨する園も増えていますが、はだし育児のメリットやデメリットを教えてください!
はだし育児は足裏の感覚を刺激するという利点はありますが、日本のはだし保育は園側の都合(楽だから)であることも多いです。

ちなみに、はだしや上履きのメーカーを指定するのは世界でも日本だけです。例えば、靴の先進国のドイツの幼稚園では、遊びの一環として“はだし時間”を決めています。

水、ボール、土、芝生、どんぐりなど、質感の異なる素材に素足で触れることで足裏の感覚が発達しますが、いつも同じフローリングだけでは足裏の刺激は促されないからです。

年齢や足の状態によっては1日中のはだしが良くない子どももいますので注意が必要です。

__上履きを履く際に注意すべきことはありますか?
そもそも上履きは、足のためではなく床を汚さないために生まれたとされています。柔らかすぎて靴底も薄い簡易的な上履きを長時間履くことは子どもの足の発達上あまりおすすめしません。

特に幼児期は、かかとをしっかりと固定できる上靴を選びましょう。ちなみに、上履きをすぐ脱ぎたがるのは、その子にとって履き心地がよくないからです。
悩まれているお子さんは一度上履きを見直してみてください。

適切な靴選びのポイント!

__靴選びの注意点を教えてください
まず、靴の形としては足の幅や甲の高さに合わせて調整ができる留め具がついているものを選びましょう。

購入時のサイズの目安としては、つま先の「捨て寸」と呼ばれるゆとりに「成長寸」という成長の伸びをプラスして、購入時に12〜17mmのゆとりが必用とされています(世界唯一の子ども靴のための規格「ドイツWMS」より)。

国産の5mm刻みの靴の場合は、10mm以上のゆとりは取れないため1、2ヵ月ごとに小さくなっていないか確認してください。中敷きを外してかかとを合わせてつま先の余裕を見れば簡単に測ることができます。

小学生になると、幼児期よりも足の成長がゆるやかになり、こまめに買い換えない方も多いですが、ぜひ夏休みや春休みなど長期休み毎に確認をしてください。また、先述した通り、上履きは災害時に避難することも考えて、ソールにも厚みのある運動靴タイプをおすすめします。

適切な靴選びのポイント

いかがでしたか。
小児の足と靴の関係についてもっと詳しく知りたい方は、伊藤さんが構成・執筆・監修に携わった、医学会から出版された日本で初めての小児靴の手引き書『小児靴の手引き書2023』(日本フットケア・足病医学会)をご覧ください! 
小児靴の手引き書2023

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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