きょうだい差別は愛情格差なの? 子どもに与える影響と親の対策

きょうだい差別は愛情格差なの? 子どもに与える影響と親の対策

お子さまが2人以上いるご家庭では、子どもへの接し方を公平にする難しさを感じることも多いようです。もしそれがきょうだい差別につながっている場合は、子どもへの影響を避けるためにも改善が必要です。ここでは、きょうだい差別にフォーカスを当て、子どもへの影響や親が意識していきたいことなどについてお伝えしていきます。

きょうだい差別をしてしまう理由とは?

親がきょうだいへの接し方に差をつけてしまう場合、意図的に差をつけようとしているわけではなく、さまざまな理由により、結果的に差がついてしまっていることが多いものです。ではどのような理由が背景にあるのでしょうか? 私の相談室で聞く主な理由を見ていきましょう。

きょうだいのどちらかとの相性が合わない
「自分と真逆なタイプなので、行動や言動が理解できない」
「やることが自分と似ていて、見ているとなぜかイライラする」

きょうだいで育てやすさが違う
「上の子は素直。でも下の子は言うことを聞かず反抗ばかり」
「同じようにやっても、きょうだいで違い過ぎる」

きょうだいで能力の差がある
「どちらかができると、もう一方もできるとつい期待してしまう」
「学校や習い事などにかけるお金にも違いが出る」

などが挙げられます。単独の場合もあれば、いくつもの要因が重なっていることもあり、中には「うまく説明できないが、とにかく鼻につく」ということも。

また、能力の差によるものだと、できる子の方をひいきしてしまうように思えますが、親の期待通りにしたいためにお金をかけるけれど、叱りつけてしまうことも多い、と逆に差別される側になってしまうこともあります。

きょうだい差別が子どもに与える影響

もし愛情格差がある場合、差別を受けている側の子への影響は甚大です。なにより、アタッチメント形成に影響を及ぼします。
アタッチメントとは、子どもが特定の人に示す愛着感情のことで、生まれてからの日々で、自分が親から無条件に受け入れられ、愛されている経験、実感を通して形成されます。

アタッチメント理論を唱えたイギリスのボウルビィ博士は「子どもが社会的にも精神的にも正常に発達するためには、少なくとも1人の養育者との親密なアタッチメントを維持しなければならない。それが欠如すると、子どもは社会的、心理的な問題を抱えるようになる」と言っており、幼少期の親子関係はその子の将来にも影響を及ぼしかねないのです。

子どもは、親に無条件の愛情を注がれることで、
「自分は大切な存在なんだ」
「自分は価値ある人間だ」
「自分はここにいていい」

と感じるようになります。

もし自分が不平等に扱われている実感があればどうなるでしょうか?
「他のきょうだいよりも自分は大切な存在ではない」
「パパ・ママは自分のことを好きではない」
「自分はここでは求められていない」

と思ってしまうのではないでしょうか。

アタッチメントがうまく形成されないと、その子の自己肯定感にも影響を及ぼすため、人生のさまざまな場面で生きづらさを感じやすくなってしまいます。

出典:Bowlby J (1988) “A Secure Base: Clinical Applications of Attachment Theory”. Routledge. London.

親ができるきょうだい差別の対策

影響はアタッチメント形成だけでなく、将来にも及ぶので、対策は先延ばしにすべきではありません。基本的にきょうだい差別を解消するための対策は、その理由ごとに検討するものですが、共通する対策もあるので、ここではそのポイントをお伝えします。

端的に言えば、
・「差別をしてしまう自分はダメだ」と強く自責しない
・でもそのままにせずに改善を強く意識する
・小さな行動から起こしてみる

となります。順に見ていきましょう。

その1 「差別をしてしまう自分はダメだ」と強く自責しない
ほとんどの方がきょうだい差別はしてはいけないと思っているので、それをやっている自分を責めてしまうことが多いのですが、自責は気分を落ち込ませ、自信を失わせるので、結果的に改善の足かせになってしまう傾向があります。

その2 でもそのままにせずに改善を強く意識する
強い自責を避けるべきなのは、改善への意欲を保つためです。その上で現状を変えようという強い意識を持つことがとても重要です。

その3 小さな行動から起こしてみる
「今日から差別をやめよう」「愛情格差をなくそう」と決心して、その場で解消されるかというとそう簡単ではありません。差別をしようと思ってしているわけではない分、対処が難しいのです。親側の何らかの心理作用で結果的に差別になってしまっていることを踏まえ、「今の自分でもできることは何か」を探すことがポイントになります。

「今は手をつなぐことができない」という人も、「その子の好きなごはんを作る」「一緒にテレビを見る」「“ありがとう”を1日3回は言う」ならできそうであれば、そこから行動に移していきます。

いきなりの大変革を求めるのではなく、小さな行動の積み重ねが持続性のある改善につながっていきます。

全く公平に接するのは難しい。大事なのは愛情があるか

以上が、さまざまな理由でのきょうだい差別に対する共通項ですが、考慮すべき点もあります。中には「きょうだいは平等に接するべき」という思いがものすごく強い方がいて、その場合、ほんの少しの差を気にし過ぎてしまうことがあります。

実際には、きょうだいであっても違う人間ですから、全く公平に接するのは難しいものです。きょうだいの年齢や性別が違えば求めているものが違いますから、親として補うものも当然変わってきます。

もともと自分は「気にするタイプ」という自覚がある人は、自分が気になっていることが本当に差別に含まれるのか、配偶者や両親、近い友人に尋ね、客観的な意見をもらうとよいと思います。

また、きょうだいの特性の違いによる対応の差については、一概にNGとは言えない状況もあると思っています。

たとえば、
「上の子は私立、下の子は公立」
「習い事にかけているお金が違う」

これはきょうだい差別なのでしょうか?

子どもたちはそれぞれ強みや弱み、得手不得手を持っているものです。それを踏まえ、「この子の強みを生かし、苦手を緩和していきたい」と思うのはごく自然な発想だと思います。

「いずれ社会に出たときに、適応できる子に育ってほしい」という思いがあるからです。よって、「上の子は私立、下の子は公立」という状況も、その子の特性に合った選択であれば、よいと思います。

その子の特性に合った学校や習い事選びの結果、お金が均等にならないことは起こりえますので、ここは何よりも「その子にとってよい選択をしているか」が差別か否かを分けることになると思います。

きょうだい差別も、「相性が悪い」「言うことを聞かない」のような理由であれば、背景に愛情の格差を感じますが、一人ひとりを愛しているからこその異なる対応も同様に差別としてしまうと、逆にその子をしっかり見てあげられていないことになります。

大事なのは愛情がそこにあるか。たとえ対応が違っても、愛情で差をつけないということが大事なのだと思います。

ここからは、伸芽会の大久保太郎先生に、きょうだいそれぞれの個性を伸ばす幼少期の過ごし方や親のかかわり方で意識したいことについてお話を伺いました。

きょうだいそれぞれの個性を伸ばす親の関わり方

__きょうだいそれぞれの個性を伸ばす親の関わり方について教えてください
きょうだいは遺伝や環境で似ている部分はあるものの、それぞれ別の人格ですから、特性を見極める必要があります。これは頭では理解できていても、実践するのはなかなか難しいものです。私がおすすめするのは、以下の2つです。

その1 それぞれのよいところを言葉にする
ポイントは比較するのではなく、よい面を認めて褒めることです。
たとえば、
「お兄ちゃんは運動ができるのに、あなたは苦手なのね」→比較なのでNG
「お兄ちゃんは運動、あなたは絵が得意なのね」→どちらも認めているのでOK

お互いのよい面を伝えることで、「苦手でも頑張ってね」というメッセージにもなります。

もちろん、下のお子さまの年齢によっては理解が難しかったり、性別による発達の違いもあったりしますから、すぐ行動につながらない場合もあるかもしれませんが、くり返し伝えることで、お子さまの自己肯定感が上がっていくはずです。

思っているだけではお子さまには伝わりません。ぜひ口に出して伝えましょう。

その2 行動目標を具体化&見える化する
お子さまを注意する際に「ちゃんとしなさい」「ふらふらしないの」などと言うことはありませんか? 

子どもはびっくりするくらい自分のことが客観的に見えていないので、どんな風に「ちゃんとしていない」のかをわかっていないことが多いです。

そこでおすすめしたいのが、「箱の中(エレベーターや電車、バスなど)では静かにしようね」「足の裏を床につけようね」など、行動目標を具体的に伝えることです。

さらに、目標を決めたら、紙に書いて家族全員が見える場所に貼り、シールを貼るなどして達成度を日々チェックしましょう。ポイントは、貼らない日を作らないようにすること。

シールの色を「自分からすすんでやった(金)」「言われてやった(赤)」「イヤイヤやった(青)」「やらなかった(黒)」などの4種類にして、「やらなかったときも貼る」ことで習慣化していきます。

この方法は運動やプリント学習などにも応用できます。大事なのは「できたorできない」ではなく、努力する習慣です。シールの数でがんばった過程を褒めてあげましょう。

きょうだいで小学校受験をする場合の失敗しない学校選び

__きょうだいで小学校受験をする場合、学校選びで失敗しないために意識することはありますか?
下のお子さまは毎日登校する様子や制服姿を見ていますから、同性や共学校の場合、同じ学校を目指されるご家庭が多いのは自然なことだと思います。

大事なのは、下のお子さまのときも、「この子にはこう育ってほしい」というご家庭の教育方針に合った学校を選ぶことです。

さらに、お子さまの特性や性格は幼児期に確定するものではなく、今後どう変わるかわかりませんから、「将来のためにこういう方向性もよいかもしれない」など、さまざまな方向性から考えていくことが、学校選びで失敗しないポイントです。

伸芽会式の学びとは?

小学校受験において学校側が求めているのは、知識の量よりもそれを生かせる力です。教えられたとおりに答えることよりも、自分で発見したものを発展させていく創造性があふれていることです。

伸芽会では、合格につながる創造性の芽を伸ばす独自の教育として、「造力教育」「体験力教育」「自助力教育」を掲げ、半世紀以上の実績に基づく指導で合格へ導きます。
詳しくは伸芽会HPを御覧ください。
https://www.shingakai.co.jp/about/

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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