「幼小一貫教育」が当たり前のスペイン。教育形態やメリット・デメリットは?

「幼小一貫教育」が当たり前のスペイン。教育形態やメリット・デメリットは?

最近は日本でも幼小一貫教育を採用する学校があるようですが、スペインではほとんどの学校が幼小一貫教育を導入しています。9年間通うことになるため、幼稚園の募集時には3歳児の親はどこを選ぶのか必死になります。現地で3人を子育てする筆者が、スペインの教育形態や幼小一貫校のメリット・デメリットについて紹介します。

スペインの教育制度と学校選び

スペインの学校には、公立校、私立校、さらに公立と私立の間のようなコンセルタード校という3種類の学校があります。コンセルタード校は学校としては私立ですが、国の補助を受けられるため学費は実質無料。そして、3種類の学校のほとんどが採用しているのが幼小一貫教育です。
義務教育は日本と同様に小学校6年間と中学校3年間なものの、幼小一貫教育なので、子どもが3歳になる年の応募時期には親は最適な学校を選ぼうと奮闘します。住んでいる市内のどの学校にも応募できるため、熱心に学校の見学会に参加したり、地域の評判を聞いたりなどして学校を選ぶのです。

合否決定については、自宅や職場がその学校の地区にあるか、その学校に兄や姉が通っているかなどによりポイントが付与され、最終的にポイント数が多い子から入学できます。人気校でポイントが同数の場合は抽選で決まることもあり、入学試験とはまた違う緊張感があります。

右が幼稚園 左が小学校の一貫校校舎

幼小一貫教育のメリットは?

まず子どもたちから見たメリットですが、1つ目は、幼稚園から小学校まで同じ友達と一緒に過ごせること。大きな環境の変化がないため、精神的なストレスも少ないと思われます。

筆者の子どもたちが通う幼稚園では、年長になるとほかのクラスとも一緒に活動し、そのクラスの子たちと仲良くなる機会を作ります。小学校に上がる際のクラス替えによる精神的影響が少ないように、年長の時期から準備してくれるのです。

また、小学校の新学期には幼稚園で担任だった先生がクラスに顔を出し、子どもの不安を取り除いてくれたりもします。こうしたアットホームな雰囲気のなかで、小学校生活をスタートできます。

2つ目は、幼稚園から小学校入学に向けて学習面で準備ができるという点。スペインでは幼稚園から文字と数字を覚えますが、小学校でどういった教え方をするのかを幼稚園の先生が理解しているため、それに沿って教えることができるのです。

一方で小学校の先生も、生徒たちがどれくらいのレベルで入学してくるかがわかるため、レベルに合わせて授業をスタートできます。先生が幼稚園と小学校間で異動することもあるなど、先生たちが自ら体験し気付きを得ることによって、最適な教育方法を探るという工夫もされています。

3つ目は、幼稚園での子どもの情報が小学校の先生にもしっかり伝わるということ。同じ学校なので、一人ひとりの性格や学習の進み具合、幼稚園での行動などが小学校の先生に細かく伝えられます。新しい先生もそういった情報を元にそれぞれの子どもと接することができるため、小学校への移行がスムーズになります。

親の立場から言えば、3歳から12歳まで同じ場所に通わせられるというメリットがあります。我が子たちは、今年9月から3人とも同じ幼稚園と小学校に行くようになりました。スペインでは毎日子どもの送迎をしなければならず、全員が同じ時間に同じ学校へ行って帰ってくるというのはとても助かります。

イベントも幼小でほぼ同じなので、家族の計画もスムーズに立てることが可能です。お迎えが必要な下校時間は3歳から6年生まで変わらないため、子育てと仕事の両立がしやすいと言えます。

幼小一貫教育のメリットは?

幼小一貫教育のデメリットは?

実際に通わせてみると、当然ながらデメリットを感じることもあります。まずは、幼稚園と小学校の区切りがはっきりしていない分、小学校に入学するという新鮮さを感じることができない点です。

もともとスペインでは入学式、卒業式という式典はありません。そのうえ、学校も同じ場所なので、新たな気持ちを抱けないまま小学校生活が始まってしまい、ワクワクは全くありません。子どもは新しい環境に置かれることで大きく成長すると思いますが、そういった機会を作ってあげられないのは残念です。 

次に感じるのが、学校の変更が容易ではないという点です。スペインの制度によるデメリットではありますが、3歳で幼稚園に入学後なんらかの理由で学校を変更したくなっても、入れる学校は学生数に空きがある学校のみ。入りたいところがあっても転校できず、兄弟や姉妹がいる場合は別々になってしまうこともあります。

そして最後に、子どもに1度付いてしまったレッテルを剥がすのが難しいということ。何か問題を起こしてしまうと、そのレッテルが幼稚園から小学校まで付いて回ることもありえます。

子どもは日々成長し、ずっと同じ行動をとるとは限りません。それなのに悪いレッテルが長く付いて回ると、大きなストレスになってしまう可能性があります。

まとめ

スペインの幼小一貫教育については、個人的にはメリットの方が多いように感じます。日本で採用している学校はまだ少なく、かなり難関のようですが、今後少しずつでも増えていけばよいと思います。

執筆/Yuko Ogi

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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