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子育て

2歳がカギ!スペシャルニーズ(発達障害)について親が知っておくべきポイントとは?(前編)

2歳がカギ!スペシャルニーズ(発達障害)について親が知っておくべきポイントとは?(前編)

発達の遅れにより支援を必要とする「スペシャルニーズ」の診断を受けるには、一般的に2歳が適切であり、遅くても3歳までにといわれています。ただ、日本ではわが子が対象だという事実を見過ごしていたり、診断結果を恐れていたりなどの理由から、意識的に検査を先延ばしにする人も多いように見えます。そのような不安を少しでも解消するべく、今回はアメリカで長年自閉症の早期介入プログラムに携わっている心理学者のScott Mesh(スコット・メッシュ) 博士にお話を聞きました。親として知っておくべき重要なポイントを2回にわたりお伝えします。

スコット博士はどんな人?

――はじめに、長年自閉症の早期介入プログラムに携わってきた博士の自己紹介を簡単にお願いします。

筑波大学大学院で博士課程を修了後、アメリカの大学で生物教育学の研究や講義に携わりました。また、メンタルヘルスや教育分野で幼児期の子どもや家族に長年かかわり、特に精神的分野で子どもの教育に取り組んできました。

精神病院やいくつかの施設で働いた後、ブロンクスのコミュニティメンタルヘルスセンターに勤務。子どもたちのスペシャルニーズの診断をするようになり、心理学者でもある妻とともに、それまで施設がなかった地域に3歳以下の乳幼児のための特別教育プログラム機関を設立しました。数百人のスタッフと一緒に年間数千人の子どもとかかわり、これまで合計35万人ほどの子どもたちとその両親をサポートしています。また、心理学者や教師に向け、幼児期の子どもたちのスペシャルニーズ(主に自閉症)の可能性を判断する実用的なガイド書籍を出版しました。

診断を受けるタイミングやスペシャルニーズのサインとは?

―― 2歳から3歳までの間にスペシャルニーズの傾向があるかどうかを調べた方がよいと専門家が提唱していますが、その背景をお聞かせください。

心理学者や神経科医ではない一般の親や保護者がするべきことは、何よりもわが子の特定の兆候を示すサインに気づくことです。子どもの兆候について何かおかしいという懸念を抱いたなら、まずは専門家の診断を受けましょう。

では、どのようなサインなのかといえば、まず、同じ年齢のほかの子どもたちと比較することが大切です。発達に関する質問の中で最も多いのは、発語に関するものです。3歳未満の子どもの場合、約70%が発語に遅れがあったり問題があったりして診断を受けにきます。

子どもの発語については、1歳の誕生日前後に最初の言葉を言うのが一般的です。18ヶ月の時には10語程度、2歳になったら、100語程度です。多少の前後差はありますので、発語が1~2ヶ月遅れることや、18ヶ月の時に一般的な10語に満たず9語や8語でも、そのぐらいの誤差は許容範囲です。ただし、18か月や2歳の時点で1語も話さなかった場合、診断を受ける必要があるでしょう。

遅れが気になった場合や問題があると疑った時は、できるだけ早く診断を受けてください。ただ、もし自閉症といわれたらと考えると、診断を受けるのは怖いですよね。もし自閉症と診断されたら、親はわが子を一生サポートし続けることになるかもしれないと悩んでしまうのは、ごく当り前といえます。

けれども、私が2歳の時点で自閉症と診断したお子さんで、よい専門家に恵まれ素晴らしい早期治療のおかげで、診断後数年以内に自閉症診断が覆されたケースもあります。そのような明るい事例もあるため、わが子に何か問題があると思ったら早めに対処することが重要なのです。

どんな兆候が見られたら診断を受けるべき?

――どのような兆候やサインが見られたら専門家の診断を受ければよいですか?

いくつかあるのですが、よくみられるのは次のような兆候です。

発語
発語の遅れは自閉症児にもよくみられます。コミュニケーションには、言葉が出ていく能動的なものと、言葉が入ってきて理解する受容的なものとがあります。実際には、子どもは発語できている言葉以上に、理解している多くの言葉があるのです。もし、2歳の子が50〜100語の言葉を話していたら、それ以上の数百語を頭では理解しているということになります。従って発語できる言葉が少ないということは、理解している言葉も少ない可能性があります。

Social skill (社会的スキル)
相手に何かを伝えようとするとき、子どもは言葉が話せなくても行動によってその何かを示すことができます。指さしをしたり、つかんだり、引っ張ったりして、相手に自分の意思表示をします。同じ年齢の子と比べて、何かを他の行動で伝えようとせずに泣いて伝えようとすることが多い場合は、発達が遅れている可能性があるといえるでしょう。

指差し
生後18か月ぐらいまでに子どもが指さしをしない場合、それは重要なサインです。言語の遅れに対して、潜在的な自閉症の可能性を意味しています。ほとんどの母親は、日常的な子どもの変化やほかの子どもとの違いに気づくことができます。その点では、女性には男性よりも潜在的な能力を備えていますので、公園などで同じ年齢の子どもたちと客観的に比べてみましょう。専門家でなくてもよく観察していれば、自分の子どもとほかの子どもたちとの発語や指さし、ソーシャルスキルの違いに気づくと思います。

アイコンタクト
子どもが生後3〜6か月以内にアイコンタクトをしない場合、それは何らかのサインです。しかしアイコンタクトがあるからと言って、自閉症ではないとは言い切れません。自閉症でもアイコンタクトができる子はいるからです。自閉症の症状には幅がありますので、一概には言えず、これはあくまでも一つの兆候に過ぎません。

コミュニケーション力
子どもが自分以外の人と会話や意思の疎通ができているかどうかも、重要なポイントです。コミュニケーション力は基本的な社会的行動であり、社会的スキルと繋がっています。まずは、1つの単語を子どもが発した時、その言葉の意味を理解して使っているのか、ただ音を発しているだけなのかを知る必要があります。例えば「ママ」という言葉が母親を指しているのか、それとも「マ」という音をただ発しているだけなのかは、遅れを見分けるポイントとなります。

名前や言葉への反応
子どもが自分の名前に反応しているかどうかも重要なポイントです。子どもの名前を呼んだ時に子どもが反応するのは当たり前のように思われますが、実際に自分の名前だと理解して反応しているのか、ただ声に反応しているだけかを見分ける必要があります。1歳を越えた子どもが、呼ばれた時に自分の名前を理解していないようならば、それは1つの大きなサインです。

自閉症の兆候に気づくための重要ポイントとは?

――わが子が自閉症と気づくために親が見るべき一番重要なポイントは何でしょうか?

2歳児ぐらいの子どもは相互的にコミュニケーションをとれるようになり、会話を交互にするようになったり、1つの物を見たらそれに関連づけたことを話してきたりします。例えば、子どもが飛行機を見かけた時、それを指さして「飛行機!」やそれに近い言葉を発します。見た物に興味を示し、それを相手に伝えようとするのです。

私が子どもを診断する時のチェック項目の1つに、子どもが親の指示を理解して行動に移せるかどうかという項目があります。保護者に自分の子どもに対して何かを投げるように伝えてもらい、行動を見るのです。例えば紙を床に置き、手渡しや指さしなどの行動はせずに「その紙を拾って、投げて」と声だけで指示を出してもらいます。子どもが言葉だけで反応できるかをチェックするのです。それを見たうえで、子どもが本当にその言葉の意味を理解しているのか、それとも大人の行動やジェスチャー、非言語的な合図にヒントを得て推測で動いているのかを判断する必要があります。

ただ、繰り返しになりますが、兆候に気づくために最も重要なことは、自分の子どもを同年齢のほかの子どもの側に置いて観察することです。観察しなくてはならないことは、例えば本や緑が好きというような好みや個性ではなく、「その子がその年齢になったらできているはずのことが、おおよそできているかどうか」ということです。

発達の遅れについては、その子ができるすべてのことを同年齢の子どもと比較するため、本で調べたりほかの子どもを観察したりする必要があります。わが子の言語や行動が同年齢の子どもたちの範囲内なのか、それとも遅れているのかを見極め、少しでも疑いがある場合には診断できる専門家に診てもらってください。

※次回も引き続き、アメリカにおける特別教育や子どもの自立を促す方法などについてスコット博士のお話をお届けします。

【スコット・メッシュ博士 プロフィール】
ミシガン大学心理学専攻卒業ののち、セント・ジョンズ大学で臨床心理学の博士号を取得し、25年以上にわたり家族との関わりを深める。臨床心理学者として、子どもの特別なニーズの診断やメンタルヘルス教育に携わってきた。自閉症や広汎性発達障害の子どもの発達と心理的評価を専門としている。著書に「Assessment in Early Childhood(幼児期のアセスメント)」、共著に「A Practical Guide to Psychological and Developmental Evaluation in the Early Intervention Program(早期介入プログラムにおける心理学的および発達評価の実践的ガイド)」など。また、自閉症や特別なニーズを持つ2,000人の幼児にサービスを提供し、ニューヨーク市で受賞歴のあるLos Ninos Servicesの共同設立者兼CEOでもある。
著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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