STEAM教育にもぴったり!イタリアで子どもたちに刺激を与える博物館や施設
万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチを筆頭に、数多くの芸術家を輩出したイタリア。文系や理系といった枠組みを超えて社会的価値を創造できる人材を育てる「STEAM教育」にも有益と思われる美術館や博物館、施設などがたくさんあります。それらのなかから、子どもたちに良い刺激を与えてくれそうな歴史ある博物館と近代的な施設を1か所ずつ取り上げます。
目次
サイエンスの真実に触れられる「レオナルド・ダ・ヴィンチ科学技術博物館」(ミラノ)
(博物館の入り口)
■ダ・ヴィンチのスケッチや草稿、それをもとにした模型などを展示
絵画や建築で素晴らしい実績を残しながら、医学、天文学、数学、音楽にまで精通していたといわれるレオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリアを代表する偉大な芸術家です。それぞれ違った分野を結び付けて学習するSTEAM教育を学ぶには、まさにうってつけの人物といえます。
1953年にミラノに築かれたレオナルド・ダ・ヴィンチ科学技術博物館は、ダ・ヴィンチの名前を冠するにふさわしいさまざまな要素で構成されています。ダ・ヴィンチの発明品のもとになったデザインやモデルをはじめ、1万9,000点もの歴史的な科学技術遺産や多くの作品を展示しています。
まず、レオナルド・ダ・ヴィンチに関するコーナーでは、本人の設計やスケッチの草稿をもとにした展示物を鑑賞できます。ヘリコプターや望遠鏡などの科学的な模型も、芸術的で美しいのがダ・ヴィンチの真骨頂。流動的な思考を持ち、創造力や観察力を駆使して研究や実験を行ったことが理解できます。
■博物館のモットーは能動的に科学を学んでいくこと
さらに館内はダ・ヴィンチに関する展示にとどまらず、彼のスピリットを実践すべくさまざまなコーナーが設置されているのです。
たとえば「シンキング・ゾーン」は、インタラクティヴなラボとも呼ばれています。ここでは「いじる(Tinkering)」「創る(Making)」「デザインする(Design)」をテーマに、科学の真髄にアプローチすることを目的とした研究活動を行います。
もちろん、ダ・ヴィンチの思考に沿った最新のテクノロジーも体験可能です。「デジタル・ゾーン」では、メタバースやシミュレーションによる多数のデジタル・アクティビティが展開されています。
博物館が子どもたちのみならず大人にも呼び掛けているのは、「自身を知るためにサイエンスにおける真実を知ろう」ということ。とくにテクノロジーの革新が著しい昨今においては、真実を知るために能動的に科学を学んでいくことの大切さを訴えています。
ダ・ヴィンチは博物館のこのモットーを実現に導く旗手として、最もふさわしい人物といえるでしょう。
(ダ・ヴィンチの草稿をもとに再現された展示品も見学可能)
遊びを通して知識を深める「La Citta` dei bambini e dei ragazzi」(ジェノヴァ)
■五感をテーマに探索する近代的施設
アメリカ大陸を発見したコロンブスの故郷ジェノヴァにも、STEAM教育に相応しい施設があります。博物館ではないのですが、ある部屋から別の部屋に移動して、感覚を発見し、遊び、探索する場所です。子どもたちは遊びと直接の経験を通して、さまざまな知識を深めることができます。
「La Citta` dei bambini e dei ragazzi」は、直訳すれば「子どもたちの町」といったところ。2歳から14歳までの子どもと親を対象に、“五感を通じて科学や技術を習得する”ことを目的に1997年に設立されました。
同テーマの施設としてはイタリア最大であり、これまたイタリア最大級の水族館が隣接しているという好立地です。「五感」をテーマにした同施設の2,000㎡を超える敷地内には、40を超えるエキジビションが設置されています。“五感をテーマに旅をする”という鑑賞スタイルになっていますが、それらの内容は実にさまざまです。
(出典:La Citta` dei bambini e dei ragazzi公式サイト)
■感触を実践的に身に付けて学ぶ
例えば「聴覚」コーナーでは吸音パネルや音波を利用して音響の原理を学び、音がどのように伝播し、みんなの声がなぜすべて異なるのかを発見します。音が生きていること、さらになぜ私たちがいくつかの音が好きで、ほかの音があまり好きではないのかを一緒に理解しています。
「触覚」のコーナーでは、物質の硬さや形状、手触りなどを、視覚に頼らずに認識し、この感覚が視覚に代わる方法であること理解します。手で触れることで人間同士が理解し合い、コミュニケーションが円滑になることも学びの対象になっています。
そして、子どもたちの人気はなんといっても「視覚」のブース。眼鏡や顕微鏡、望遠鏡をツールにして、視覚とは何かを習得していきます。鏡のなかのイメージや、目の錯覚、光の反射などによる視覚体験も人気の要因になっています。
「味覚」と「嗅覚」の感覚はつながっているため、ひとつのコーナーで体感するよう設計されています。イタリアという食へのこだわりが強いお国柄のせいか、このコーナーはとくに充実度が高く、食育の一環にもなっているのだとか。子どもたちはここで、「味」というものが臭いや見た目、舌触りからも構成されていることを学び、正しい食についての知識を身に付けていくのです。
こうした五感の旅を通して子どもたちはそれらの感触を実践的に身に付けますが、重要なのはワクワクしながら学んでいくという点。デザインの国イタリアらしくブースはポップで魅力的な色合いで構成され、子どもたちを高揚させてくれます。
まとめ
リベラルアーツを生んだギリシアの文明をローマの文明が受け継ぎ、それを再生させたルネサンス発祥の地イタリア。天才芸術家たちが作った作品を楽しみながら、文系や理系にとらわれないSTEAM思考を培うには最良の国といえます。
多様なテーマの美術館や博物館を訪れるだけではなく、歴史や文化が残る街並みを歩くだけでも、多くの学びがあることでしょう。
<参照URL>
https://www.museoscienza.org/it
https://www.cittadeibambini.net/
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