ピアジェ博士の発達理論から見た7歳反抗期の理由とは?

ピアジェ博士の発達理論から見た7歳反抗期の理由とは?

小学校に上がった頃に見られる子どもの反抗、7歳反抗期と呼ばれることもあります。2歳のイヤイヤ期と比べ、理屈っぽく反抗してくることもあり、「腹が立ってしかたがない!」という親御さんも多いようです。

この時期に見られる反抗とはどういうものなのか。認知発達の心理の権威であるピアジェ博士の理論から7歳反抗期を解説します。

7歳の反抗は日本だけでなく世界共通?

小学校入学のあたりで見られる子どもの反抗は、その年齢から「7歳反抗期」とも言われているようです。子育て中の二大反抗期といえば、2歳の頃のイヤイヤ期と中学生の頃の第二反抗期のはずなのに、7歳にもあると知ってがっかりする方もいるかもしれません。

でも、周りに聞くと、「たしかにうちの子も7歳反抗期、あったあった!」と該当するママ多数……。

7歳といえば、日本では小学校入学の年。新たな環境に入ることでのプレッシャーや求められるものの変化、それらにより子どもの反抗が起こりやすいとも言われていますが、実は世界中のパパやママも同じように7歳児に参っており、英語圏では、「The Stroppy Sevens(反抗的な7歳児)」という言われ方をしていることもあるようです。

ではなぜ7歳なのか、それには子どもの認知発達が関係しています。心理学で認知発達といえば、スイスの心理学者であるピアジェ博士。博士の提唱した認知発達段階理論をここで見ていきましょう。

ピアジェ博士の認知発達段階理論

次の表は、ピアジェ博士が出した認知発達段階理論を簡潔にまとめたものです。

年齢で4段階に分かれています。ここにある年齢は平均的なものなのでその子によって多少前後しますが、この発達順序はどんな子どもにも共通するものとされています。

今回のテーマである7歳の子どもたちは、ここでいう“前操作期”と“具体的操作期”にまたがっていますが、その2つが実際に子どもの成長でどんな違いとして現れるのか、ここで具体例を出して触れていきたいと思います。

7歳の子がまたがる前操作期と具体的操作期の違い

まず“前操作期”の最大の特徴は自己中心性です。ピアジェ博士が行った「3つの山問題」という有名な実験で、この時期の子どもは、他者の視点をまだ持てないということが分かっています

この実験では、テーブルの上に形も高さも違う3つの山を置き、立つ位置によって、見える景色が違うようにセッティングしました。そして子どもに、「向こう側にいる子にはこの山がどう見えていると思う?」と聞いたところ、自分から見える山が映った写真を選んだのだそうです。

他人から見たらどう映るのかを想像するのがまだ難しいのが前操作期の子どもたち。よく大人がしつけのときに使う「そんなことしたら、○○ちゃんどう思うかな?」という言葉が、この時期の子にとっては難しすぎる(伝わらない)のが分かりますね

また、この時期の子は、頭の中で情報を区分したり、くっつけたり、変形したりするのが苦手です。なので、背の高いグラスに入っている水を、子どもの目の前で広口の背の低いコップに注いだとしても、「水が減ってしまった」と捉えてしまうのです。

頭の中で保存するのがまだ難しいため、形が違うものに移動してしまうと、「さっきはもっと高くまで水が注がれていたのに、今はこれしかない」と感じてしまうのですね。

それが具体的操作期になると、大きく変わります。向こう側にいる子から見たら、3つの山の見え方も変わってくるのも分かるし、あとは目の前で移動した物であれば、たとえ形を変えたとしても同量だと認識できるようになるのです。

7歳で反抗が増えるわけ

自己中心的にしか考えられなかった時期からの脱中心化。7歳が認知発達の大きなターニングポイントになっていることが分かります。しかし、このような変化は1日で起こるわけではありません。少しずつ、そして行きつ戻りつしながら変化をしていきます。

以前私が書いた”ワンダーウィークス“に関する記事で、知能の急成長期には葛藤が起こりやすいということをお伝えしました。その中で、赤ちゃんは20ヵ月までに10回のメンタルリープと呼ばれる超ぐずり期を通過するとご紹介しています

7歳の子も同様で、自分の中で大改革が起こっているのですから、その子の感情の表れ方にも影響するのは当然と言えば当然なのです。

ここで、先にご紹介した表を見直してみましょう。よく見ると、4つの段階の移行期となる年齢は、どれもママが悩みを抱えやすい時期と合致するのが分かります。

・0歳のメンタルリープの時期
・2歳のイヤイヤ期
・7歳の反抗期
・そして11歳以降の思春期

認知発達上の成長期というのは、感情の揺れが起こりやすい時期とも言えるのですね。

ピアジェ博士の理論を踏まえた7歳反抗期の対処法

私がカウンセリングなどで、ピアジェ博士の認知発達段階のお話をすると、「うちの子、まだそんな段階なんですね」とよく言われます。先に挙げた水の保存の実験なども、「え、まだそんな程度の理解なの?」と驚き、「なら、仕方ないか」と思いなおすママも多いです。

7歳というと、もう小学生ですし、親の期待が上がってしまっていることはよくあります。でもピアジェ博士の理論を知ると、過信し過ぎていた自分に気づくことが多いようです。

先ほどもお伝えしたように、次の段階への移行は「ある日突然」ではありません。それを踏まえ、前操作期から具体的操作期の移行期にあたる小学校低学年期は、まだまだ頭の中だけで理解するのが難しい時期なのだと理解し、それに合った指示の出し方を工夫しましょう。

たとえば、口頭で「あれやって、これやって」と指示を連続で出すと子どもは混乱するので、家庭内のルールはできるかぎり目に見える形にするのがおすすめです

「できたらシールを貼る」のような取り組みがその例です。あとは、指示を出すときも、1つにし、それが終わってから、また別の指示を伝えるという形が望ましいでしょう。いったん反抗スイッチが入ってしまうと、手に負えなくなることがほとんどなので、それを未然に防ぐための工夫を施すのがおすすめです。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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