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【公認心理師監修】「上の子かわいくない症候群」とは? 要因や対応策について解説

【公認心理師監修】「上の子かわいくない症候群」とは? 要因や対応策について解説

ここ最近耳にするようになった「上の子かわいくない症候群」という言葉。「上の子をかわいいと思えない」という親御さんからの訴えですが、どう解消していったらいいのか悩まれる方が多いようです。そこで今回はこの現象を取り上げ、要因や改善策についてお伝えしていきます。

「上の子かわいくない症候群」とは?

“症候群“とは、ある特定の病的な変化を基盤として出てくる症状に対して用いられる呼称ですが、今では医学的な背景がなくとも、ある現象が多くの人に見られたりするときにも症候群という言葉をあてがうことがあるようです。「上の子かわいくない症候群」もそれに当たります。よって、これは疾患ではありません。

どのような状態を指すのかと言えば、この呼び名が表すとおりです。「下の子と比べると上の子の方がかわいいと思えない」と親自身が実感することを指します。

私自身、この呼び名自体を自ら用いることはないのですが、最近は、私の相談室の方にも、「私は上の子かわいくない症候群なのでしょうか?」と実際にこの言葉が持ち込まれることがあります。それだけ呼称として定着しつつあること、またこの呼称により、「私もそうなのかもしれない」と感じる方が増えているのを感じています。

上の子をかわいいと思えなくなる7つの要因

相談室で経過を伺うと、ご家庭ごとに細かな事情は異なるものの、共通することもたくさん見受けられます。そこで、ここでは上の子かわいくない症候群に陥りやすい境遇を見ていきたいと思います。

●要因1 下の子のお世話による疲労
まず前提としてあるのが、疲れです。下の子の夜中の授乳で睡眠不足なのに、昼間も休息を取れない……。疲れていなければ受け入れられることが、疲労困憊のあまり、同じことがイラっと感じられると言います。

●要因2 比較対象ができる
それまで一人っ子状態のときは感じていなかったのに、下の子が生まれたことで比較をしてしまうというのもよく聞きます。下の子は小さくて丸くてかわいい。上の子は大きくて口答えをする。それに、手も足も背も大きい。当たり前のことなのですが、いったんそう見えてしまうと比較の悪い対象になってしまうようです。

●要因3 きょうだいの年齢差
きょうだいの年齢差が2~3歳というご家庭は多いですが、この場合、下の子が生まれたタイミングが、ちょうど上の子の第一次反抗期に当たります。イヤイヤや反抗があまりに激しかったりすると、それもかわいくないと思うきっかけになりがちです。

●要因4 しつけのあいまいさ
しつけのあり方が要因になっていることもあります。一人っ子時代に、家庭でのお約束などがあいまいになっていたり、そもそもなかったりすると、その子は少し待つとか、今はがまんするなどの自制の経験が乏しいまま下の子を迎えることになります。それにともない、赤ちゃんのお世話をしたいのに、上の子が待てずにてんやわんやということが続き、上の子を責めることが増えてしまうのです。

●要因5 上の子の気質的な手こずり感
子どもたちは白紙状態で生まれてくるわけではなく、その子にもともと備わった気質があります。中には、とにかく粘る、折れない、自分を押し通そうとする、こういうタイプの子もいます。周囲からは「家庭教育がなっていない」と捉えられがちなのですが、実際にはきちんと導こうとしてもなかなかうまく行かず、そのてこずる感じが疲弊を生みます。

●要因6 自分との性格の違い
2~3歳になると、その子らしさもはっきりしてきますが、自分とタイプが違うがために、「なんでこんなことするの?」「この子のこと理解できない」と違和感を覚える方もいるようです。とくに同性(ママだったら女の子)の場合に起こりやすい印象があります。

●要因7 それまでの完璧度
何ごともとにかくがんばってしまう人も要注意です。育児はこれで100%という線がありません。やることはいくらでもあるけれど、日づけが変わったから今日はここまで、こんなサイクルで毎日が回っている感覚があるものです。1人目であまりにもがんばってしまうと、2人目が生まれた後、上の子が物足りなさを感じ、「かまって、かまって!」とばかり、困らせ行動を増加させることがあります。それにより、「私がこんなにがんばっているのに、この子はちっともわかっていない」という思いが出てきやすくなります。

前のようにかわいいと思えるにはどうすればいい?

冒頭でもお伝えしたように、上の子かわいくない症候群は病気ではありません。なにかしらの要因でそういう思いを抱くようになったという“感じ方の変化”です。とはいえ、「上の子をかわいいと思い込もう」と意識して変わるものではありません。要因に沿った改善策を取り、結果的に「前のようにかわいいと思えるようになった」を目指すのが本道になります。

「上の子がかわいいと思えない」と感じているほとんどの人が、
・時間がないのに
・上の子が言うことを聞かない

という状況に置かれています。

よって、
・時間的な圧迫を緩和する策
・上の子との関わりの見直し

ということがポイントになってきます。

時間的な圧迫を緩和するには“こだわり”を手放すこと!

1つめの時間的な圧迫への対処についてですが、もっとも望ましいのは、夫婦で話し合い、バランスを整えていくことです。この現象は、ママばかりが奔走しているご家庭に多い印象があるので、パパがしっかり関わり、負担を軽減していくのが理想でしょう。

しかし、このような理想論が無理だから困っているという方も大勢います。実際に相談に来られる方は、夫の協力が得られないか、忙しすぎて家にいないことで、ママが抱え込んでしまっていることが多いのが実情です。

そういう場合、ファミサポなどの自治体のサポートを得られないか、家電導入で軽減できることはないか、など家事を中心とした軽減を検討するのが次にできる対策と言えます。夫がダメなら外部に頼るという発想です。

しかし中にはこれらの対策も、「気が進まない」という方がいます。この場合、目標設定自体が高くなり過ぎていたり、こだわりを譲れなかったりすることで、結果的に自分を苦しめてしまっていることが多いです。

「だれかが家に入るのはいや」「食器は手で洗わないとすっきりしない」「市販の物は体に悪い」というように、自分でブロックをかけてしまっている人はたくさんいます。たしかに、できることなら、自分で料理をし、すっきり後片づけができれば、それに越したことはないのかもしれません。でも実際にどうでしょうか? 無理難題を自分に押しつけていないでしょうか?

私が日々の育児相談などを通して感じている「時間的な圧迫を緩和する策」は、自分で自分を縛っている“こだわり”を手放すことだと思っています。よって、「わが子をかわいくないと思ってしまうほど、これまでの流儀を続けようとする意味があるのか?」という問いはとても重要だと思います。時間的な余裕を少しでも生み出せると、子どもたちへのまなざしにも変化が出てくるはずです。

上の子との「ルールやお約束」を見直してみる

そして2つめの「上の子との関わりを見直す」についてです。上の子かわいくない症候群で悩んでいる人の多くが、「言うことを聞かないこと」を不満に感じています。言うことを聞かない要因を探ることはとても大事で、それが改善、解消されるのであれば、その部分への介入が有効です。

たとえば、同じ“イヤイヤ”でも、イヤイヤ期真っ最中の子の自立に向けたイヤイヤと単なるわがままは違います。もししつけの不足によるものであれば、そこの見直しが必要でしょう。とくにそれまでの数年、「子どもをのびのび育てたい」「だから好きなようにやらせてあげよう」というモットーで接してきたのであれば、その方針を見直す時期に来ているのだと思います。

中でも、子どもにがまんさせるのを、「かわいそう」と感じやすい方は要注意です。どの子にとっても、家庭内のお約束やルールというのは必要で、それがその子の将来的な自制心や自己管理力につながっていきます。幼少期にお約束やルールがない環境で育ててしまうと、大きくなって、クラスメイトがちゃちゃっと動けるのに、わが子だけが自分の気持ちを制御できずにグズグズしてしまう……、こんな場面に遭遇する確率が上がってしまいます。子どもにがまんさせるのを「かわいそう」と感じやすい方は、いずれ、「がまんできなくてかわいそう」と感じることになりやすいので、幼少時から基礎的なお約束は作って練習していきましょう。

ただ、それまでお家の中で好き勝手にやってきたのに、いきなりルールやお約束が登場したら、下の子へのやきもちも相まって、さらに反発が予想されます。大事なのは、甘えたい気持ちは満たしつつ、「でもお約束もね」というメリハリです。上の子とのスキンシップや遊びを心がけつつ、「じゃああと3回ね」「針が12になったら夜ご飯だよ」のような制限も設けるバランスです。これを実施するためには、やはり時間の余裕を作ることが先決と思われますので、1⇒2の順で進めていくのが現実的だと思います。

今回ご紹介したアプローチは少し遠回りに思えるかもしれません。でも、「上の子をかわいいと思わなくちゃ!」と意識して解消できるわけではないので、根っこから築き上げていき、結果的にだんだんと上の子への見方が変わってくるということを目指すのがポイントになります。

「下の子かわいくない症候群」も

ここまで上の子かわいくない症候群について解説してきましたが、下の子にも起こりうるものです。言うなれば、下の子かわいくない症候群でしょうか。これも要因は似ていて、比較対象があることや、上の子との気質的な違い、自分自身との違いなどが挙げられます。

ただ俯瞰して見ると、その子がどの成長段階にいるかも影響を受けているように思います。たとえば、上の子がイヤイヤ期の最中に下の子が生まれ、しばらくは上の子よりも下の子の方がかわいいと思えていたけれど、3年経って、今度は下の子の方がイヤイヤ期に入り、かわいいと思えなくなってきた……、このような変化です。イヤイヤ期は親が大変だなと感じやすい時期の代表ですが、わが子が成長過程のどこにいるかによって、感じ方に影響を与えることはあると思います。

もちろん理想を言えば、子どもたちを常に平等に愛することが望まれます。しかし、私たち親も不完全な生き物ですから、実際には、「完璧に、しかもいつも平等に」というのは難しいということも日々のカウンセリングで感じています。

子どもたちへの愛情が波を打ってしまうのは起こりうることです。大事なのは、それをそのままにしないことだと思います。その状態が長く続くほど、当然ながら子どもたちは傷ついていきますので、早い段階で気づき、できる手立てをしていくことが大切です。

あまりにもひどい場合は専門家に相談を

とは言え、自分でも頭ではよくないとわかっているのに、改善への取り組みができないという方もいらっしゃるでしょう。自分を責めてしまうことで空回りし、改悪してしまうこともあるかもしれません。

こういう場合は、専門家に相談することが一歩を踏み出すきっかけになることもあります。

「上の子かわいくない症候群」のような呼称は、ときにその中身を見えにくくしてしまうものです。実際には「上の子をかわいいと思えない」という現象が共通しているだけで、なぜそこに至ったのかは、その人それぞれです。それを専門家と一緒にひも解いていくことで、どこからアプローチしたら望ましいかは見えてきやすくなります。

どこから手をつけていいのかがわからず足踏みしている方は、知識のある人に相談してアドバイスを受けるのもおすすめです。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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