【1歳~2歳児】物を投げる・たたく子どもの心理とやめさせる方法
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2歳前後のイヤイヤ期は、子どもが物を投げつけたり、相手をたたいたり、噛んだりと、粗暴な行動に悩む年頃でもあります。そういう場面での子どもの心理や親としての向き合い方、さらには家庭、保育園、公園などシーンごとに気をつけるべきポイントを公認心理師の佐藤めぐみさんが解説します。
・イヤイヤ期に関しては、こちらの記事をご覧ください。
『魔の2歳児到来!? イヤイヤ期を乗り切る秘策と知っておきたい2歳児の特性』
『2~5歳、ママを悩ますイヤイヤ期の対処法を保育のプロがアドバイス!』
『パパが知っておきたい、子育ての心理~イヤイヤ期編~』
目次
物を投げる・たたく行為はどんな場面で起こりやすいか
では、物を投げる・たたく行為はどのような場面で起こりやすくなるのでしょうか。
・靴が履けない、色が塗れないなどやりたいことがうまくできないとき
・もっとテレビを見たいのに、親に消されたとき
・他の子と遊びたいおもちゃが一緒で、取り合いになったとき
・親が弟・妹ばかりを可愛がっているとき
・保育園の先生が自分を見てくれないとき
・スーパーなどで、おねだりしたけれど買ってもらえないとき
このように、自分の思い通りにいかないときに起こりやすくなります。では、このような状況になったとき、どう対処していけばいいのでしょうか。
物を投げる・たたく行為をやめさせる方法
どのような理由であれ、物を投げたり、他者をたたいたりするのは危険を伴いますので止める必要があります。
「○○だったんだね」と共感したうえで、「物を投げると危ないよ」「たたいたら痛いよ」とその行為がダメだと伝えていくのは共通して重要なことです。
ただ、まだ小さいので、言葉で伝えても伝わらないこともあるでしょう。言葉だけでその場を終息させようとすると、つい声が大きくなったり、語調が厳しくなったり、しまいには、子どもの方もさらに物を投げ、親をたたいてくる、という展開になりかねません。
2~3回言っても止めないようなら、言葉に頼らない形にシフトしましょう。
方法① 抱き上げる
物を投げる、誰かをたたくという場面では、その子は感情が高ぶっていることが多いので、現場からいったん距離を作るという意味で有効な策です。
方法② 気持ちを逸らす
抱っこして、別の部屋に行ったり、外に出てみたりと場所を移動することで、気持ちが逸れることもあります。
一方で、物を投げた理由によって、対処が変わってくることもあります。パターンごとに見ていきましょう。
パターン1 思い通りにならない~チャレンジしている場合
イヤイヤ期は、「自分でやりたい」という気持ちが高まるので、できればその思いを応援してあげたいものです。
さまざまなことにチャレンジしているときに、思うようにできずイライラして物に当たった場合、「フタを開けたかったんだね」「自分で食べたかったんだね」とやりたかったことを言語化してあげ、可能であれば、少しやりやすくした状態にして再チャレンジさせてあげましょう。そこでうまくできれば、物に当たらずに取り組むことを学ぶことができます。
パターン2 思い通りにならない~わがままを押し通そうとしている場合
親がテレビを消したら、癇癪を起こしてリモコンを投げた。このような場合は、同じ「思い通りにならない場合」であってもパターン1とは状況が違います。パターン1はいずれ習得していってほしい行為。
パターン2は癖にしたくない行為。この点で違いがあります。こういう場面で親が折れてしまうと、テレビを消そうとするたびに癇癪を起こすようになってしまうので、端的に注意し、譲歩しないことがとても大事です。
パターン3 注意を引きたい場合
親が自分を見てくれないから、下の子をたたいたという場合がそうですが、そのときだけ親が飛んでいくと、たたくこと=親を呼ぶ手段だと思ってしまうため、また繰り返してしまいます。
とは言え、たたいているのを見過ごすことはできないので、まずそこでは、たたくことはダメだと伝えて下の子から離します。
そして、それ以外の時間に親が意識的に上の子と過ごすようにすると、親を呼ぶ手段としての「たたく」に頼らなくなってきます。その場の対応はあっさり毅然と、でもそれ以外の時間を充実させていくことがポイントです。
パターン4 わからなくて投げている場合
1〜2歳だと何を投げてよくて、何がダメなのかがまだわかりにくいので、投げていいものを手渡して、投げたい気持ちを一気に満たしてあげるのもおすすめです。
代替品で思いを遂げるということです。あとは床や手の届く範囲に物を置かないこともできる工夫です。割れ物や鋭利な物などは特に高いところに置くようにし、事象自体を未然に防いでいきます。
シーン別、物を投げる・たたく子の対処法
最後に、問題が起こりやすい場所を家庭内、保育園、公の場の3つに分け、シーン別の対処ポイントをまとめていきます。
【家庭内で】
物を投げたり、誰かをたたいたりする行為は、母親だけ、父親だけのように、どちらかが気をつけていてもなかなかなくなりません。
・上で記した内容を踏まえながら、理由を家庭内(夫婦間、同居している場合は祖父母も)で話し合ってみる
・それに沿って、対処法を共有する
と家族のメンバーが同じ認識を持つよう心掛けます。
【保育園で】
もし園でも同様な行為をしてしまっている場合や、園だけで問題になっている場合、親は中に入り込めない分、さらに悩むことが多いですが、
・保育園としっかり連携を取る
・園で起こったことの報告を受ける
・家庭での取り組みについても伝える
先生方と意思疎通を図りながら、問題の緩和を図ることが大切です。
もし他の子をたたいてしまったなど直接的な影響が出ている場合は謝罪する必要も出てくるでしょう。
【公の場(公園や児童館など)で】
保育園でもそうですが、子どもが集まる場にはいろいろな方針のご家庭があります。まだ小さいからと言っても、「おたがいさま」ではありませんので、真摯に受け止めて対応していきましょう。
もし親と一緒に過ごしている公の場で、物を投げた場合は、周囲に当たっていないか確認し、迷惑がかかっている場合は速やかに謝罪します。その場で注意しても収まらない場合は、その日は帰宅することも考えましょう。
・お友達をたたいたときの対処法は、こちらの記事をご覧ください。
『うちの子がお友だちをたたいた!親としてどうすべき?』
発達の途中とはいえ、他者に危害を加える行為は避けなければなりません。特に家庭外で起こる場合は、よそのお子さまを巻き込む可能性もあるので、トラブルにならないよう注意が必要です。
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育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/