すぐ「ずるい」と言う子どもの心理と親の対応

すぐ「ずるい」と言う子どもの心理と親の対応

子どもに「ずるい」と言われると、親は穏やかではいられません。「なぜうちの子は『ずるい』を連発するのか?」「その状況にどう対応すればいいのか?」と気になり、不安になったり、腹立たしく感じたり、落ち込んでしまったり……。刺さる言葉だけに心が揺れてしまうのです。そこで今回は「ずるい」という言葉に着目し、その心理や対応について見ていきたいと思います。

子どもの「ずるい」は自然な心理でもある

“ずるい”は、辞書には、「公正でないことをする卑怯な性質のこと」と載っています。辞書的な“ずるい人”は相当な悪者という響きですが、子どもたちが連発する「ずるい」はもっと広義に使われている気がします。

子どもたちの心理に見えるのは、
・自分が損をしたくない
・できればちょっと得をしたい

という思い。これは子どもがウソをつく状況ととても似ています。子どものウソは基本的に自己防衛で、
・自分が損を被らないように(例:「ボク/ワタシはやってない」
・できるだけ得するように(例:「まだ1個も食べてない!」)

と自分の立場を優位に持って行こうとポロッとウソが出るのです。

自分が得するものは嬉しいし、損するものは避けたいと思うのはごく自然なこと。大人だってそうですよね。とくに小さいうちは、“エゴセントリズム”と言って、自己中心的な思考傾向がありますので、この思いが前面に出やすいわけです。このような子どもの心理の発達段階を見ると、小さい子ほど、「ずるい」が出やすい状況にあると言えるでしょう。

「ずるい」には4種類あった!

一口に「ずるい」と言っても、その心理はさまざまです。ここで、よくあるケースを見ていきましょう。

パターン1:公平なのに「ずるい」
明らかに「ずるい」という状況ではないのに、交渉術として「ずるい」が機能している場合があります。たとえば、代わりばんこで遊ぶ、お菓子を分けて食べる、というときに、「自分の方が少ない、ずるい」とぐずり、その結果、自分がちょっと得をしようとするケースが該当します。

パターン2:友だちの“今”がうらやましくて出る「ずるい」
友だちはさっさと宿題を済ませてオンラインでゲームしたり、外に遊びに行ったり。このような場面で「ずるい」となる場合があります。自分もさくさくと宿題をこなせば、そこに参加できたのに、やるべきことはせずに、友だちの今をうらやましがるケースです。努力には興味がなく、結果をうらやましがるとも言えるでしょう。

パターン3:異なる家庭の方針による「ずるい」
子ども同士で過ごす時間が増えてくると、よそのお家の状況に対し、「ずるい」と感じる子がいます。たとえば、好きなゲームを次々買ってもらえる友だち。「どうしてうちは買ってくれないんだ、ずるい」となるのです。各家庭で方針は異なるものなので、親としてどう対応したらよいものかと迷うパターンでもあります。

パターン4:きょうだいなど接し方に差がある場合の「ずるい」
きょうだい間で明らかに違う接し方をされている場合にも「ずるい」が出やすくなります。これは、これまでの「ずるい」とは深刻度が違い、訴えて当然と言えるケースです。あとは、学校などの集団生活で、先生をはじめとする大人の対応が不平等と映る場合にも出やすくなります。

「ずるい」が“やばい化”してる!?

このように、「ずるい」はもともとの意味合いよりも広義に使われていることがわかります。中には、いくつも当てはまったという方もいるのではないでしょうか。あっちでもこっちでも「ずるい」が横行している状態です。この汎用性は「やばい」と似ているところがある気がします。

美味しくてもやばい、嬉しくてもやばい、危なくてもやばい……。今の子どもたちは、なんでも「やばい」1つで表現してしまいますが、「ずるい」も同様に色々な場面で用いられているのが実情です。

そんな“やばい化”している「ずるい」ですが、これは大人の反応を引き出す強い言葉なので、「やばい」以上に気になってしまうことが多いかもしれません。ここからは、その対応について見ていきたいと思います。

4つの「ずるい」パターン別の対応

上記の通り、「ずるい」には色々あります。表面に見えている現象は同じでも、背景が違えば対応も自ずと変わってきますので、わが子の「ずるい」が気になった場合、まずはその要因を探り、それに沿った対応を取っていくのが望ましいと言えます。上に挙げたパターン以外にもあると思いますので、お子さんをよく観察し、ご自分なりに分析をしてみてください。

以下は、上のパターンに沿ってまとめたポイントになります。当てはまるものがあれば、ぜひご参照ください。

パターン①公平なのに「ずるい」の対応は、環境に慣らすこと!
いつも自分が最優先にしてもらえる状態に慣れている場合、優先してもらえない状況や、他の子がいる場面では、たとえ平等であっても、「得をしていない」という点で不平等に映ることがあります。その場面で、もし「じゃあ今回だけね」などと、子ども側の言い分を聞いてしまうと、「ずるいと言った甲斐があった」と成功例としてインプットされてしまい、次回もまた「ずるい」を適用しようとしてしまいます。よって、明らかに不平等ではないのに、「ずるい」を連発する場合は、そういう状況に慣らしていくことが大事になってきます。

少しずつ行動範囲を広げ、「他の子がいる中の自分」の場数を増やしてみてください。自分の気持ちを時には抑える必要があるという学びにもつながっていきます。

パターン②:友だちの“今”がうらやましい「ずるい」の対応は、努力する成功体験!
自分のやりたいことだけをやりたくて、努力するのが苦手という場合、周囲の子のいい場面だけを切り取ってうらやましくなってしまいがちです。子どもの思いをどこまで受け入れるかは、親が悩むところですが、「やりたくない」という思いまでも簡単に受け入れてしまうと、ちょっと頑張って乗り越えるという経験が不足してしまいます。

お子さんが物事を簡単に考え過ぎているなぁと感じる場合は、少しずつでいいので、コツコツ取り組む機会を設けていきましょう。習い事や家庭学習は地道に努力をする場所としても望ましいので、そのような場面を活用しながら、“やることをやってからのお楽しみ”や“努力あっての結果”という体験を意識的に取り入れていくことをおすすめします。

パターン③異なる家庭の方針による「ずるい」の対応は、“よそはよそ”を徹底!
それぞれの家庭の方針は違うものなので、子どもにも「隣の芝生は青く見える」ことがあります。たしかに、最新のゲームのような魅力的なものは、「ずるい」の対象になりがちで、子どもの言い分もわかるのですが、親は良かれと思って、買わない方針を採用していますので、そこは一貫性を持って対応すべきところかと思います。

「なぜわが家は今それを買わないのか」という理由を親自身も明確にし、お子さんに説明してあげてください。そのときは、「ずるい」という思いが抜けないかもしれませんが、長いスパンで考えれば、その判断でよかったと思ってくれるはずです。

パターン④きょうだいなど接し方に差がある場合の「ずるい」の対応は客観的な判断を!
もし子どもからの「ずるい」という訴えがもっともである場合は、自身を振り返って改めていくことも必要です。きょうだいで差をつけてしまうというのは、私の相談室でも見られる事例ですが、人間も感情で動く生き物なので、完全に平等にというのは正直難しいかもしれません。

しかし、明らかに差をつけてしまっている自覚がある場合は、少しでも早く介入をしていくのが望まれます。きょうだい格差は児童虐待防止法の中の心理的虐待に該当します。ひどい状況の場合、子どもの心理発達に影響を及ぼしますので、子どもの「ずるい」をしっかり見極め、対応していくことが求められます。

また、パターン4は、「ずるい」の対象が家庭内ではなく、学校への訴えである場合があります。先生にケアをしてもらっている子に対して「ずるい」と感じているケースなどがそうです。ただ、子どもにはそう映っても、中には本当にケアが必要な子もいますので、きょうだい差別のような介入とはまた違ってきます。1つ1つ個別に対応を見極めていく必要があると言えるでしょう。

まとめ

最後に、要因を探る際のコツについて触れておきますと、それだけで終わらせないことがポイントです。「どうしてうちの子は『ずるい』ばかり言うんだろう」と自問すると、「この子のこういうところがダメなんだ」とか、「私のせいでこうなった」とか、「先生の対応が悪い」のように、だれかを責める形になりがちです。

要因を探るのは、改善策を見出すためなので、そこで負のスパイラルに巻き込まれないよう、「ならば何をすべきか」まで考えていきましょう。対応は基本的に未来を向いた思考なので、建設的な自問がしやすくなります。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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