要チェック! 叱るときにやってはいけない「か・き・く・け・こ」
私が行っている育児カウンセリングで相談されるお悩みは多岐にわたりますが、元をたどると「しつけ」に行きつくことが大半です。
「言うことを聞かない」「宿題をやらない」などの行動に関するお悩み、そして、「叱っているのに効果がない」「どう叱るべきか分からない」などの叱り方自体に関するお悩みもよくあります。
そこで今回は、「叱っているのに効果がないのはなぜなのか?」に注目し、ママが陥りがちな「叱るときの“かきくけこ”」についてお伝えしていきます。
目次
負の連鎖を起こす「か・き・く・け・こ」って?
すでに親子間の負のスパイラルを経験しているママなら、叱り方の難しさを実感されていると思います。
子どもが言うことを聞かないときや困った行動をしたときに、ただ叱れば事が収まるわけではありません。たまに上手くいったときがあったりすると、叱り方にもコツが必要なのだと気づかされます。
叱ったときに負のスパイラルにはまる典型パターンがあります。それが、次にご紹介する叱るときの「か・き・く・け・こ」です。
か ⇒ 過去を叱る
き ⇒ きぃきぃ叱る
く ⇒ くどくど叱る
け ⇒ 形容詞で叱る
こ ⇒ 子ども自身を叱る
この「か・き・く・け・こ」は連鎖を起こしやすいため、この中の1つでも踏み込んでしまうと、あっという間に「か・き・く・け・こ」全て制覇ということも! そうなってしまうと、その後は何を言っても効果なしというループにはまってしまいがちになります。
脱線を引き起こしてしまう5つの理由
では、なぜこの「か・き・く・け・こ」が負のスパイラルを呼び込みがちなのでしょうか? それは子どもの心理に則していないからです。その理由を1つ1つ解説していきたいと思います。
か:「過去を叱る」がダメな理由
「過去を叱る」とは、その子がこれまでにやった数々の問題行動を羅列して叱ることを指します。
「昨日も○○だったでしょ」「前回だって○○したじゃない」など。過去の不出来を総動員することで、ママの心の中には、叱りネタが10倍、100倍と膨れ上がっていきます。
そして、ママの感情は爆発、それが子どもに直下……。お互いの感情が逆なでされ、言うことを聞ける状況ではなくなってしまいます。
き:「きぃきぃ叱る」がダメな理由
「きぃきぃ叱る」とは、ママが感情的になってヒステリックに叱ってしまうことを指します。大声を張り上げたり、罵声を飛ばしたり、ときには泣きながら叱ってしまうことも。感情的に叱っていると、だんだんと論点がずれていくケースがほとんどです。
本来叱ろうとしている部分から、気づいたら脱線していたということがよく起こるのです。それにより、子どもにママの本意が伝わりにくくなります。
く:「くどくど叱る」がダメな理由
「くどくど叱る」とは、延々とお小言を言い続けることを言います。この叱り方は、時間的に長引くので、それが子どもにとってのメリットになっていることがよくあります。
たとえば、ママが、ゲームを止めないわが子にくどくど叱っている場合。ママがお説教をしている傍らでも、まだゲームを続けることができていたら、「結果的にはいつもより長時間ゲームができた、ラッキー」と捉えられてしまうのです。
け:「形容詞で叱る」がダメな理由
「形容詞で叱る」とは、「だらしない」「意地が悪い」「弱い」など、その子のことを“質的”に否定してしまう叱り方を指します。悪いことをした際に、ママから自分の性格を非難、否定するような言い方をされると、反抗心が芽生えたり、やる気が失せたりしてしまいます。
こ:「子ども自身を叱る」がダメな理由
「子ども自身を叱る」とは、「悪い子だ」「ダメな子だ」「弱虫」など、子ども自身を全否定する叱り方を指します。この叱り方は、矛先が子どもに向けられているために、その子の自尊心を傷つけます。
さらには、叱っている的が大きすぎるため、具体的に何をどうすればいいのかが、子どもに伝わりにくくなります。
負のスパイラルに陥らないために、自分の弱点を探してみよう
「か・き・く・け・こ」は、項目ごとにそれぞれ特色がありますが、どれもママの感情が大きく揺れているという点で共通しています。連鎖が起こりやすいというのも、納得していただけると思います。
この「か・き・く・け・こ」は、ほぼ100%の確率で負のスパイラルを起こしてしまいます。それを避けるためにも、「自分は“かきくけこ”のどの部分から脱線しやすいのか?」「とくにやりがちなのはどのNGか?」を客観的に探ってみることをおすすめします。
そして苦手部分を見極めたら、地雷を踏まないようにコントロールすること、そして、その逆パターンを意識的に取り入れようとすることを心がけてみてください。
「か・き・く・け・こ」を上手に避けるコツとは?
「過去を叱る」のを避けるコツ
「昨日も」「おとといも」と過去を突き詰めると、ママの叱りネタが増大するだけでなく、叱るピントもずれていきます。
今叱るべきは、今、目の前のこと。過去を呼び起こしそうになったら、「今の○○はダメだよ」のように、「今の」というフレーズをまず口にしましょう。目線が「今」に向きやすくなります。
「きぃきぃ叱る」のを避けるコツ
このパターンは、いきなり単独では起こらず、他からの連鎖で引き起こされる傾向があります。とくに、「か・け・こ」で引き起こされた怒りから、ここに飛び火していることが多いようです。
人間、いきなり「きぃきぃ」と感情的にはならないので、そこに至る前の段階で、「か・け・こ」を意識的にコントロールすることがコツです。
「くどくど叱る」のを避けるコツ
このパターンの特色は叱り時間が長いことです。ママが長々と叱っている間、子どもが止めるべき行動を続けていては、元も子もありません。
ゲームに夢中になっている子にとっては、ママの延々と続くお説教は、単なるBGMになりがち。長く叱ることが、逆に子どものメリットになりうることを意識し、端的に短く叱ることを心がけましょう。
「形容詞で叱る」のを避けるコツ
ママが思わず言ってしまう「まったくだらしがない」「本当に意地が悪い」のような形容詞での性格否定。何度もその子の問題行動を目にしているうちに、心の中で、「あの子が○○するのは性格がだらしないからだ」のように結論づけてしまうことで起こりがちです。
それを避けるためにおすすめなのが、「名詞+動詞」で叱る方法。「だらしない(形容詞)」ではなく、「シャツを中に入れなさい(名詞+動詞)」とすると、性格否定にもならず、的を射た指示を出しやすくなります。
「子ども自身を叱る」のを避けるコツ
育児でよく使う「〇〇な子」という表現、「優しい子」「粘り強い子」などポジティブな言葉が入る場合はウェルカムですが、ネガティブな言葉を入れると、とたんにその子自身を否定するNGワードになります。
ママが叱る目的は、その子の“行動”を改めたいからです。行動を改善したいのなら、行動を的に叱らないと子どもには届きません。「悪い子」ではなく「悪いこと」、「ダメな子」ではなく「ダメなこと」と、「〇〇な子」は「〇〇なこと」と言い換えていきましょう。
叱るときの「か・き・く・け・こ」は、お互いが絡み合って連鎖を起こし、エスカレートしがちです。ぜひ、自分の叱り方を外側から客観的に振り返り、苦手部分を見つけてみてください。気持ちが落ち着いている時間に行うとより見極めやすいと思います。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/