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ニュージーランド発「飛び出す小説」! 子どもに、豊かな読書経験を与えてくれるAR児童小説とは?

ニュージーランド発「飛び出す小説」! 子どもに、豊かな読書経験を与えてくれるAR児童小説とは?

近年よく話題に上る言葉、「AR」。「Augmented Reality=拡張現実」を意味し、私たちの目の前にある「現実」環境にコンピュータで別の情報を加え、「拡張」表現したものです。例えば、スマートフォンなどのカメラ映像を現実世界にかざすと、実際にはその場にないはずの映像や情報を表示してくれるアプリケーション。夜空にかざすと見えている星座を確認することができるものや、部屋を映すと家具の配置をシミュレーションできるものなど、さまざまな場面で活用されています。

多くの分野で応用されているARは、幼児用絵本にも見られます。専用アプリケーションをダウンロードしたスマートフォンやタブレットを通して、AR絵本を見ると、絵が立体的に浮かび上がり、動くなどします。「飛び出す絵本」のハイテク版といえるかもしれません。

ARは、さらに児童小説界にも進出を始めています。世界に先駆けたAR児童小説の1冊が、9~11歳向けの小説『ドラゴン・ディフェンダーズ1』(著者名:James Russell、出版年:2017年4月、出版社:Dragon Brothers Books Ltd.)です。2017年4月にニュージーランドで出版され、発売後4週間にわたり、国内の児童小説ナンバー1のベストセラーとなり、子どもや親が選ぶ、大手書店主催の「子どもの本トップ50」の1冊にも挙がる人気ぶりを見せています。英語圏の国々やチェコでも販売されています。

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上段が『ドラゴン・ブラザース』絵本三部作、下段左が『ドラゴン・ディフェンダーズ1』、右が2巻目

主人公2人と一緒にドラゴンを守る臨場感をARで味わう

『ドラゴン・ディフェンダーズ1』は、『ドラゴン・ブラザース』というAR絵本三部作の続編です。主人公は、パディとフリンの兄弟。2人の住む孤島にはドラゴンがおり、悪者がその卵を狙っています。ドラゴンを殺して卵を持ち帰るよう下に指示する悪者に、兄弟が立ち向かっていくストーリーです。

本のなかには、暗号文を読んだり、地図をたどったりと、ARが5カ所に挿入されています。挿絵と文章だけ読んでも十分に楽しめる冒険小説ですが、ARによって読者はよりリアルな臨場感を味わえます。

実際読んだ子どもたちは、「読み出したら、止まらない」「物語の最初から没頭した」「『ハリー・ポッター』も顔負け」と、読後感想を語っています。

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『ドラゴン・ディフェンダーズ1』に挿入されているARの1つ。主人公兄弟とドラゴンが住む島が浮かび上がる。

ARは「魔法」!子どもを本好きにし、創造性を育む

『ドラゴン・ディフェンダーズ1』の作者、ジェームズ・ラッセルさんは、「物語中のARはちょっとした『魔法』なんだ」と話しています。子どもにとって本を読む楽しみは、物語の世界で登場人物と共に過ごすことにあります。ARはその経験をより豊かにするための「魔法」なのです。

AR小説は、さらに子どもたちを読書家に変身させる「魔法」でもあります。ジェームズさんの元には、「今まで本にまったく興味を示さなかった子どもが、ARを取り入れた同書を読んだことをきっかけに本好きになった」という親からの感謝状がたくさん寄せられているそうです。

また文章のみの本に比べ、ARが組み込まれた本を読むことは、多くの感覚に刺激を与えることになります。このことが脳の働きを活発にさせ、創造性を養うのにも役立ちます。官民一体で世界情勢の改善を図る世界経済フォーラムによる最新の調査には、今後社会人として成功するために必須のスキルの1つとして、創造性が挙げられています。子どもの将来にとっても、ARは有益なのです。

ARを日常的に使いこなす時代に備えて

11月には『ドラゴン・ディフェンダーズ1』の続編も出版されました。取り込まれているARは1巻目以上の内容で、より複雑で、より見ごたえがあるものになっています。

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『ドラゴン・ディフェンダーズ2』のARは、1巻にも増して迫力満点

現在、アップルとグーグルがOS標準でARへの対応を進めていることからもわかるように、近い将来、ARは日常生活の一部となることになりそうです。子どもに与える好影響を踏まえ、ARの教育分野への活用も各国で進みつつあります。これから日本でも続々と出てくる可能性の高いAR絵本やAR児童小説に、ぜひ注目してみてください。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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