イギリスの由緒ある私立名門校もオンラインスクールを開校、コロナ禍背景に注目集まる

イギリスの由緒ある私立名門校もオンラインスクールを開校、コロナ禍背景に注目集まる

コロナ禍による約2年間の行動規制でさまざまな影響を受けたイギリスの学校教育ですが、結果的にオンライン学習の導入拡大や認知度アップにつながりました。学校現場ではネット環境が急ピッチで整えられ、オンラインスクールの開校も増加。私立名門校が自らオンラインスクールを開いて運営するなど、新たな教育の場が登場しています。

本記事では、コロナ禍を背景に注目を浴びているイギリスのオンラインスクールについて紹介します。

全寮制名門校も高等教育修了テストに向けスタート

イギリスの全寮制名門パブリックスクールの9校の1つである「ハロウスクール」では、厳しい受験プロセスを経て選ばれた13歳から18歳までの男子が学生生活を送っています。年間寮費を含めた学費は約725万円で、イギリスだけでなく世界中の富裕層の子どもが集結。有名大学を目指し、伝統的な英国式エリート教育を受けています。

その一方、海外からの受験者が増加したことで、同校はコロナ禍前より全寮制ではないオンラインスクールの開校を計画していました。2020年に、まずは40%の生徒がイギリス国内生まれという形で、「ハロウオンラインスクール」がスタートしたのです。

ハロウオンラインスクールは男女共学で、16歳から18歳までの2年間高等教育修了テストに向けて学びます。入学には、中等教育修了テストにおいて7つから8つの科目で高評価を得ていることが条件です。

学費は取得科目数や課外授業の参加数などによって変化しますが、年間約270万円と全寮制の本校に比べてかなり手頃です。優秀な生徒には奨学金制度もあり、学業だけでなく、スポーツ、音楽、芸術などの枠もそろっています。さらに国内生には家庭の収入に合わせた学費サポート制度も適用され、場合によっては全額免除になる可能性もあります。

地域への貢献体験などの課外活動も必須

選択できる教科は全寮制の本校と比べると若干少なく、数学、生物、化学、物理、スペイン語、経済学となります。これらのなかから3~5科目を選びますが、それ以外の科目でも興味があれば相談しだいで受講可能です。

授業ではイギリスで学習サービスを提供するピアソン社が開発したツールを使用し、ハロウスクールの講師が授業内容のすべてを監修。6~10人の生徒によるライブレッスンや録画レッスン、個人レッスン、チャットグループレッスンなどで構成され、保護者はすべての学習進行状況にアクセス可能です。

そのほかにも、教科ごとに生徒個人が行う研究をはじめ、生徒集会や楽器の演奏、スポーツ、チェス、ディベートなど課外活動もあり、社会教育の一環として地域への貢献体験も必修です。責任者にあたる大人のレポートと一緒に、ボランティア活動の写真など体験を証明する記録を提出する必要があります。そのため、学習を含め1週間に25~30 時間の活動時間を確保しなくてはなりません。

このほど、初の卒業生の多くが優秀な成績を修め、約80%の生徒が世界トップクラスのインペリアル・カレッジ・ロンドンを含む希望の大学に進学しました。

今後は中等教育修了テストのコースも

ハロウオンラインスクールは今後14~16歳に向けて、中等教育修了テストのコースを展開すると発表しました。同時に、高等教育修了テストを1科目から柔軟に学べるコースも設けるようです。

さらに校外生に向けても、オンラインの家庭教師サービスを手がけています。1レッスン1万5千円、最低10回レッスンからのパッケージで、生徒の要望に沿った内容を提供します。

また春休みには、毎年夏に行われる修了テストに備えたオンライン集中コースも開催。世界各国から参加が可能で、約2週間のコースの費用は1科目につき約13万円です。

由緒あるオンラインスクールには希望者が殺到

イギリスにはほかにも、由緒ある複数のオンラインスクールがあります。

国内で一番古いオンラインスクールは、1894年に設立された「ウォルシーホールオックスフォード」です。5歳から入学が可能で、英国の高等教育修了テストまでのコースがあります。生徒は受講したい科目のみに受講料を払い、自らのペースで学習します。ほかの生徒との交流はほぼありません。

2002年に開校した「ケンブリッジホームスクール」は、選抜式のオンラインスクールです。こちらには毎日決まった時間割があり、生徒はライブレッスンに参加する授業形態です。7歳から入学可能ですが、希望者が殺到しているため1~2年前から手続きを始めなくてはなりません。

まとめ

イギリスの学校教育は世界でも人気があり、高い評価を受けています。

今後もコロナ禍を追い風に、イギリス名門私立校などが自校の教育ブランドを掲げながらオンラインスクールに参入する可能性がありそうです。

<参照URL>
https://wolseyhalloxford.org.uk/
https://www.chsonline.org.uk/
https://www.harrowschoolonline.org/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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