イギリスから学ぶ私立・公立のPTAの違いと活動内容
英国の学校は、私立も公立も保護者数名が学校経営に携わる理事会の役員になりますが、その一方でPTAのあり方はさまざまです。自動的に全保護者がPTAメンバーになるという従来型のケースが多いものの、参加が任意の学校もみられます。多くの私立ではPTA活動が活発ですが、公立ではPTAを置かない学校もめずらしくなくなりました。英国のPTAの現状などを紹介します。
目次
受験にも関係する私立校のPTAはかなり活発
英国はチャリティー活動が盛んなため、PTAのチャリティー参加はめずらしくありません。多くの保護者が学校への寄付のために、ボランティアとして時間を提供します。とくに私立校のPTA活動はとても盛んで、毎週のようにイベントが開催されます。放課後に行われる学校のお祭りやディスコパーティー、映画鑑賞会などが代表的な行事となっています。
例えばケーキやお菓子を作って販売したり、イギリスではお馴染みの仮装で登校したり、といったさまざまな企画を通じて募金を集めます。
このような活動の主な目的は寄付金集めで、収益は新しい楽器の購入など学校活動に還元されるほか、学校外のチャリティー団体に寄付されることもあります。学校によっては、PTAが多額の資金を運用する責任を担っています。
さらにPTA活動は、保護者同士や先生との交流の場としての役割も果たしています。学校内でのモーニングコーヒーの催しや夜の交流イベントには、保護者だけでなく先生も参加。学校に関する情報交換や話し合いができる貴重な機会であり、学校コミュニティ全体の結束が高まるとともに、子どもの教育や学校生活の支援にもつながっています。
保護者のPTA参加については任意もありますが、専業主婦の保護者がプロの仕事に匹敵する量の役割を担うこともあります。これは、進学校の場合は受験の際に、PTAへの貢献度が子どもの内申点として加点されるという風習が影響しているようです。そのため、ワーキングマザーのように活動が難しい保護者にとっては不利な状況となっています。
人材確保が難しく下火になる公立校のPTA
一方で公立校のPTA活動は、参加に付加価値がある私立校の活動とは対照的に下火になっています。英国の一般市民の生活が楽とはいえないなかで、公立校の保護者の多くが共働きの家庭であるため、PTA活動を担う人材確保が課題です。
英国の学校は公立も私立も独自の経営方針で運営されていて、校長が予算内で効率的に運営すればPTAが資金を集める必要はありません。したがってPTAがない学校では、PTA主催の行事は一切行われないことになります。
ただ、教会系の公立校は例外ともいえるでしょう。クリスマスや復活祭などの宗教に関連したイベントが盛大に行われるため、しっかりしたPTA組織が存在しているケースが目立ちます。
教会とのつながりによって保護者も協力的であり、参加は自由ですが全ての保護者がPTAメンバーということも。父親など男性の参加も多いのが特徴といえます。
PTAをサポートするチャリティー団体に多くが加盟
公立校のPTAのあり方はさまざまで、学校や在籍する保護者、先生、理事会の方針によって大きく左右されます。そのため、PTAの運営が難しく不安定になる場合もありますが、そのような状況をサポートする専門団体も存在します。
Parentkind(ペアレントカインド)は、1956年に創設されたPTAをサポートするチャリティー団体です。地域と学校をつなぐという視点からPTAの運営を助け、活動の効果を最大化することに力を入れています。学校がPTAからの恩恵を受けることができるように、PTAの立ち上げや運営方法などを支援します。
各PTA間の連携を通じて成功事例を共有したり、PTAとの関わり方について学校にアドバイスしたりするほか、学校運営に不可欠な資金の調達方法や効果的な資金運用方法についてもサポート。保護者と学校が協力し合って教育に良い影響を生み出すための研究や、地域にもたらす影響についての調査も行っています。
英国全土で多くのPTAが加盟しており、会費はかかりますがPTAイベントの保険が付帯されるなどの特典があります。
まとめ
ここ数年、日本でもPTAの存在意義が話題にのぼることが多くなりました。核家族が増え共働き家庭が当たり前になるなど家庭環境が大きく変化しているなかで、PTAが変わりつつあるのは当然の流れでしょう。
日本でも英国でも保護者の負担が重くなり過ぎないことを優先し、地域コミュニティを巻き込みながら、効率的な運営や子どもたちのケアができる体制が求められているといえそうです。
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