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言葉が遅いのは“発達障害”なの?気になる【3歳児の話す力】の伸ばし方

言葉が遅いのは“発達障害”なの?気になる【3歳児の話す力】の伸ばし方

2、3才になって、だんだんとおしゃべりも上手になってきたわが子。一方で、言葉が遅いと「うちの子、発達障害なの?」という心配もあるかもしれません。そこで、今回は【3歳児の話す力】についてまとめてみました。

伸ばすコツについては伸芽会・教育研究所の佐藤眞理先生、発達障害との見分け方や心理的アプローチについては公認心理師の佐藤めぐみさんに伺いました。

佐藤眞理先生
佐藤眞理先生(伸芽会教育研究所 主席研究員)
幼児教育指導歴40年。子どもの潜在的な力を引き出す指導と的確なアドバイスで、有名小学校や幼稚園に多数の合格者を送り出している。著書に『伸芽会式 子どもを伸ばす家庭教育「5つの力」』(講談社)。

ただのおしゃべりとコミュニケーションは違います

「家ではよくおしゃべりするんですよ」とお母様方は言いますが、聞かれたことに答えられなかったりお友達との会話ができなかったりということがよくあります。言葉を話し始める時期は個人差があり、人に興味があるかないかも人によって違います。

けれど、人に興味を持つことが、コミュニケーションの始まりです。2才の後半には、情感や情緒も育ってきて、「好き」「嫌」などといった意思表示が出てきます。思ったことや感じたことを外に出して、何らかの反応を得ることで子どもはまたひとつ成長していきます。何かを話したらきちんと答えが返ってくる楽しさを感じさせることが必要です。

3才になると物事を説明したり「貸して」「いいよ」もできるようになり、お友達との関係が変わってきます。2才はまず聞くこと、3才は話すことができるようにしていきたいですね。

先取り、聞き流し…話す力が伸びないNGパターン

よくあるパターンでは、子どもの言いたいことを先取りをしてしまうこと。どちらかというと女性のほうがせっかちなので「こう言いたいのね」と先に言ってしまいがちです。

教室でクレヨンを忘れた子のお母さんが「クレヨン貸していただけませんか?」と聞いてくることがありますが、これではNG。子どもから忘れて困ったから貸してほしいと自分の言葉で言えるように仕向けていきましょう。

また、聞き流すこともよくないパターン。一方通行のやり取りでは、人の気持ちはわからないままです。難しいことではなくて、子どもが「きれいなお花だね」と言っていたら、「本当にきれいね」と共感を示してあげることが大切です。

お話をしない子はシャイだったり、めんどうくさいと思っている場合もあります。話をすることが楽しいと思えるようになるには、まずはお母さんが聞き上手になることですね。人と気持ちを通わせるベースができてくるのが3才です。

絵本も上手に使ってみよう

絵本のなかには、いろんな表情をしている子が出てきます。そんなときこうお話してみましょう、「どうして笑っているのかな?」と。

最初はうれしい、たのしい、おもしろいという区分けができなくても、5才くらいになると言えるようになります。絵本を見ながら「この子は何で笑っているのかな?」「どうして泣いているのかな?」と考えさせることで人の気持ちを考えることができるようになります。

3才では、生活とつながっている絵本を選んでほしいと思います。絵本で、自分の経験しないことを考えさせていくことも大事です。他人の気持ちに気付いたり目を向け始める3~4才という時期には、よりたくさん絵本に触れさせたいですね。

では、実際に発達心理学の専門家である、公認心理師の佐藤めぐみさんに、「3歳の会話レベル」の特長やよくあるお悩みへのアドバイスをお聞きしました。

3歳でもあまりしゃべらないのは大丈夫?

3歳であまりしゃべらないという場合、とても心配になると思います。とくに3歳は言葉が伸びる時期なだけに、周りの子と比べて気になっている方もいるでしょう。

ですが言葉というのは、3歳になったら自然に伸びるものではなく、周りからの刺激によって促されることが多いものです。とくにその子の周囲にいる大人の存在は重要で、どのように関わるかによって、その子の言語発達は違いが出てくることは、さまざまな研究で明らかにされています。

いくつかご紹介しましょう。

・親が子どもと積極的、かつ、反応よく関わっていると、10年後、16年後の追跡調査で、その子どもたちのコミュニケーション能力、言語能力が高い傾向があった
・子どもへの反応の仕方、関わり方についてのトレーニングを受けた母親は、接し方が上手になり、それが子どもの変化を引き起こした
・親がより積極的、かつ、反応よく関われるようになると、結果として、子どもたちの社会的能力が上がる傾向があった

このように親の関わり方は子どもたちのコミュニケーション能力や言語発達に大きな影響を与えるのですね。ここで共通するのは、“積極性”と“反応のよさ”のようです。もし「うちの子、言葉が遅れているかも」と気になっている場合、まずは普段のコミュニケーションを振り返ってみることは大事になると言えそうです。

言葉が遅いのは“発達障害”なの?

3歳は言葉が伸びる時期なだけに、周りの子と比べて遅かったりすると、発達障害が気になってくることが多いようです。言葉はそのひとつの側面にすぎませんが、成長の目安としては、3歳児健診が参考になるでしょう。3歳児健診の精神発達・神経発達の項目では、おもに次のようなことが聞かれます。

・同年齢の子どもと会話ができるか
・言葉が遅れているという心配はあるか
・何でも自分でしたがるか
・ひどく不安を示したり、恐れることはあるか
・ひどく乱暴で困ることはあるか
・ひどく落ち着かず注意が集中できなくて困ることがあるか
・指しゃぶり、爪かみ、ひどい人見知りをするなど困っていることはあるか

ただ、これらに対し、はい・いいえの二択だけで回答するのは、正直難しく、親の主観で回答が変わりうることもあります。心理学の研究でも、親が自分の育児に不安を抱えていると子どもの様子もネガティブに回答しやすく、自分の育児に自信を持っていれば子どもの行動もポジティブに捉えやすかったりすると言われています。

一般的に3歳の子は落ち着きがないため、「ひどく」というのがどの程度を言うのかは素人判断では分かりません。

たとえば年少児の多くは落ち着きがないので、ADHDかどうかを診断するには専門家でも「まだ早い」ということもあり、また読み書きなどの高次な機能については、幼児で評価することは困難だったりします。

専門家であっても難しいのですから、自分ひとりで悩んでしまうと、「3歳、発達障害、言葉の遅れ」などと検索してさらに気持ちを動揺させて、負のスパイラルを起こしてしまいます。乳幼児健診のような場は、専門の先生に話をするいい機会ですので、気になることは抱え込まずに相談するのが一番です。

発達障害の相談や介入は早い方がいい

私が行っている育児相談でも、お子さんの様子を見て、受診をおすすめすることがあるのですが、ご夫婦で「行く・行かない」で意見が割れることはわりとよく見られます。

お子さんの成長を過度に不安がるのは親子ともに負担がかかるので避けたいところですが、明らかに相談した方がいいケースにも関わらず、先送りしてしまうのも問題です。なぜなら、発達障害における早期介入の必要性は強く言われているからです。

私が以前に参照したことがあるMore than wordsという自閉症スペクトラムの子向けのプログラムでも、早く始めた子の方が、効果が表れやすかったというデータが出ています。

専門家の中には、いったん自閉症が疑われたら、「様子を見ましょう」というアプローチは適切とは言えないという人もいます。これを踏まえると、気になった段階で何らかの行動を起こすことは大事だと言えるのです。

なお、発達障害が疑われる場合、親が言った言葉を同じように繰り返す「おうむ返し」と呼ばれる返答が特徴的ですが、そういう兆候はなく、言葉の遅れとして気になる場合は、まずは関わり合いの部分をてこ入れしてみるのは大事なポイントでしょう。

グレーゾーンと思っていたらしつけの問題だったというケースも

一方で、「うちの子の発達が気になる」「もしかしたらグレーゾーンかも」と思っているお子さんでも、関わり方を変えることで気にならなくなる場合もあります。

よくあるのが、親が寄り添いすぎて、自発性が伸びる機会がなかった子、そしてそれまで何でも好き放題にやってきて、がまんすることを学んでこなかった子のケースです。

タイプ① 親が先回りしすぎて自主性がない

これは親が子どもの欲求を先取りしてしまうことで起こります。たとえば、ママが気を回して、「はいお水どうぞ」「スプーンね」のように、子どもの言葉が出る前に欲求を満たしてしまうなど。これにより、その子はコミュニケーションを取らずに済むことが習慣化していってしまいます。

そして、幼稚園などでも、先生の顔をじっと見ているだけで訴えようとすることも。子どもに何かをあげるとき一度にたくさんあげてしまうと、子どもは「もっと」を要求する必要がなくなってしまいますので、少しずつ渡してみるというのも言葉を引き出すポイントなのです。

タイプ② 好き放題で我慢を知らない

この場合、しつけが脱線、もしくはもともとしつけという概念が浸透していなかったことで起こりがちです。すべて自分中心で動いてくれるので、気持ちをコントロールする必要もない日常に慣れていってしまうことになります。

こういう場合、お家の中のルールを守るということから始め、「時にはがまんしなくてはいけないこともあるんだ」ということを経験することでセルフコントロールを学んだり、またその際に一緒に湧き出る負の感情もなんとかなだめる術を身につけたりすることで変化が生まれるのです。

おしゃべりが止まらないのは大丈夫?

また逆のケースとして、この時期、「おしゃべりが止まらない」「この子どうしちゃったの?」と悩む親御さんもいるようですが、基本的には発達に関して気にする必要はありません。この時期は言葉が伸びている時期なので、お店の人や公園で初めて会った人に話しかけてしまうことはよく見られます。

エゴセントリズムと言って自己中心性が強い時期ですので、相手の立場に立って物事を考えることはまだ難しい時期なので、会話量を適度のボリュームに調節するという計らいは苦手です。明らかに度が過ぎているという場合以外は、子どもらしいふるまいですので心配にはおよびません。

大事なのはひとりで悩まないことです。親の目では判断しにくく、気になりだすとそのように見えてしまうことも多いので、その場合は第三者の専門家に相談し、意見を求めましょう。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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