齋藤孝さんの『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』で 楽しく語彙力をアップさせよう!
ヤバい、かわいい、エグい、ウザい……。こうした言葉だけでコミュニケーションをとる子たちが増えています(大人も!)。そこで、“使える語彙”を楽しく身につけるために出版されたのが、齋藤孝さんの著書『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)。
編集者の加藤実紗子さんに、この本の見どころや齋藤先生のこだわりポイントについて、詳しくお話を伺いました。親子で楽しく語彙力を身につける秘訣をご紹介します!
目次
「楽しかった」「面白かった」しか感想が言えない今の子どもたち
__この本を作ろうと思った経緯を教えてください
ニュース番組の街頭インタビューを見ていたとき、子どもたちの感想が「楽しかった」「面白かった」ばかりなのが気になりました。私自身、小さい頃同じような子どもだったので、親からもよく「それしか感想ないの?」と言われたのです。
それで、改めて「子どもたちの語彙力」に注目し、齋藤先生にお願いして「“使える語彙”が楽しく身につく本を作りましょう」というお話になりました。子ども向けの語彙力に関する本は参考書的なものが多く、「お勉強」という印象が強かったので、とにかく「情報量は盛り込みながらも楽しく学べること!」にこだわりました。
また、ただ語彙をたくさん紹介するだけでなく、友達の服装がダサいと思ったときに、「その服変だね」ではなくて「〇〇ちゃんに似合っていて素敵だと思うよ!個性的だね!」といったポジティブワードに変換するなど具体例も盛り込んでいます。
その語彙が使えるシーンを子どもたちがイメージできるようにイラストを多用しながら、いろんな角度から語彙を学べるよう工夫をこらしました。
おかげさまで、お子さんはもちろん、「大人が読んでも勉強になった」という声を多数いただいて嬉しく思っています。
“わが子の語彙力=親の語彙力”でもある理由
__なぜ12歳まで、なのでしょうか
小学生の保護者にヒアリングを行った際、中学受験の国語では、問題文を言い換える力も問われていると知りました。
また、10歳以降の思春期になると、親がすすめた本を読まない時期に入ってくると思います。そのときに、ある程度の語彙力が身についていないと、読書も楽しめませんし理解もしにくくなってしまいます。
『3000万語の格差』という有名な研究では、言葉かけを積極的にしている保護者とそうでない保護者とでは、子どもが3歳になるまでにインプットする語彙数に3000万語の格差が生まれ、それが生涯の学力や語彙力に影響することが示されています。乳幼児期の言語獲得には、家庭での日常会話がとても重要なんですね。“わが子の語彙力=親の語彙力”とも言えるでしょう。
さらに、齋藤先生と話していて驚いたのが、「子どもは四字熟語やことわざなど、難しい言葉もすらすら覚える力があるから遠慮しないでどんどん触れさせたほうがいい」ということです。
日常会話ではなかなか四字熟語などは使いませんし、核家族が増え、祖父母や親戚といったさまざまな大人と接する機会が少なくなった今、こうした本なども活用しながら語彙力を補う必要があるのではと考えています。
言葉のバリエーションが少ないと、コミュニケーションでトラブルが起きることも
__やばい、かわいい、エグい、エモい、ウザい、キモい…こうした言葉だけで
通じるコミュニケーションには、どのような問題があるとお考えですか?
本書には「エモい」といった新しい言葉も盛り込んでいますが、それは齋藤先生のご提案でもありました。新しい言葉や使い方が生まれるのは自然なことだと思いますし、短いフレーズでお互い共感し合える言葉には、便利な部分もあると感じています。
仲間うちで盛り上がるシーンや、LINEなどのやり取りでは便利なのですが、問題はどんな場面、どんなものごとでもそれで済ませてしまうこと。
たとえば、面接や目上の人から意見や感想を求められた時に、「ヤバかったです」「いいと思いました」「面白くないと思います」と答えたとしたらどうでしょうか。言葉だけに問題があるとは言えませんよね。
さらに、成長するにつれて自分の意見や考えをまとめることも増えるでしょう。
語彙力は思考力や国語力の土台とも言いますが、言葉のバリエーションが少ないと、自分の思考をうまくまとめたり、伝えることができません。その結果、コミュニケーションがうまくとれず、トラブルになってしまうこともあるでしょう。
政治やジェンダー観といったセンシティブな話題について意見を聞かれた際に、「それ『ない』と思う」といった意見の伝え方をしたら、誤解を招きかねませんよね。
また、大人でもそうですが、LINEやメールの文面で「それヤバい!」と返されると、いい意味なのか引いているのか難しいことがありますよね。同じように、お友達と喧嘩したときに短絡的な言葉で感情を伝えてしまうと、悪気がなかったとしても相手を傷つけてしまいます。語彙力の乏しさは、学力だけの問題にとどまらないのです。
語彙を学ぶことが自然でポジティブな家庭環境作りを!
__家庭でできる、親子で語彙力アップのアドバイスがあれば教えてください。
リビングなどにこの本を置いておいて、生活の中で自然に使ってもらえたら嬉しいですね。
これは読者の方に教えていただいたのですが、食事中の会話や、テレビを見ている時に「かわいい」という言葉がでてきたら、本書を見ながら他のフレーズで言い換えてみるという使い方をしてくださっている方もいるそうです。わからない言葉がでてきたときに辞書を引く感覚ですね。
このように、語彙を学ぶことがポジティブで自然になることで、「こういうシーンではこんな言葉が使えるんだ」と、おのずと身についていくのではないかと思います。
それからもうひとつ、齋藤先生からのこだわりがつまったSTEP4「観察眼を磨く 目の付け所探しトレーニング」もぜひ活用していただきたいと思います。
この章は、「『楽しかった』しか感想が言えないのは、語彙力の少なさだけでなく、『目の付け所を見つけられない』こともひとつの原因です。せっかく語彙が身についても、目の付け所が分からなければ使えないのです」という齋藤先生のお話を受けて構成しました。
子ども達は好奇心旺盛ですから、目の付け所トレーニングを通じて「物事にはいろんなことが隠れているんだ」「調べてみると面白いことがあるんだ」と知ることができれば、普段の生活の中でも興味を持ったことを調べたり、観察できるようになっていくでしょう。
言葉は日常の中で自然と使うものです。また、日本語は本当に奥が深く、さまざまな表現があります。本書をきっかけに、いろんな語彙に触れる楽しさを感じていただけたら嬉しく思います。
いかがでしたか。語彙力を「勉強!」と構えずに、普段の生活の中で楽しみながら自然に学べてしまうエンタメ的な学習ツールにするのが、語彙力をアップさせるカギとなりそうですね。
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SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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