公開
学び

全米で大人気!お受験にも役立つ?コミュニケーション能力と自信を育てる北米のマナー教育とは?

全米で大人気!お受験にも役立つ?コミュニケーション能力と自信を育てる北米のマナー教育とは?

多様な文化や背景を持つ人々が暮らす北米では、マナーに対する意識や教育も家庭によってさまざまですが、6歳あたりから人気の習いごととして”Cotillion Program”があります。社交ダンスをベースに、あいさつや自己紹介の仕方、テーブルマナーなどを学ぶクラスです。

人気が高くスコアの高い学区やエリアにあるのが一般的で、人気のコースはすぐに埋まってしまいます。娘を受講させてみて、とくによかったのは、マナー自体もさることながら、子どもの自信を育てるということに重きをおいていること。

この記事では具体的にアメリカの人気マナー教室でどんなアクティビティが行われているのかをご紹介します。

“Cotillion” プログラムとは

“Cotillion”とは、18世紀にヨーロッパやアメリカで流行した男女ペアで踊るソーシャルダンスの名前だといわれています。

その後、アメリカで1950年頃から、社交ダンスの要素を取り入れながら社交スキルを磨くエデュケーションプログラムとして浸透。1980-90年代に、競争社会を生き抜くための社会能力のひとつとして子どもに習わせるというムーブメントが起きました。

この時代の子どもたちが親世代となった今、静かなブームが到来している習いごとです。

通常、小学校教育では3rd grade (7-8歳)くらいから チームで行うプロジェクトがはじまり、4th grade(9-10歳)の授業では、本格的なコミュニケーションスキルが必要になるとされているため、参加は6-7歳あたりが望ましいと考えられています(14歳くらいまで受講できる教室もあります)。

プログラムの内容は、大きく2つに分かれ、ダンスや挨拶、立ち振る舞いなどをダンスフロアで学ぶもの、テーブルで食事のマナーや会話についてなどを学ぶものがあり、この両方をバランスよく学ぶカリキュラムが基本です。

<ドレスコードについて>

Cotillion Programにはドレスコードがあり、男子はジャケット着用、女子はドレスにグローブ着用が原則です。グローブ着用の理由については、特に低学年女子にとって握手やダンスの際に異性の手に触れることへの精神的なハードルを下げる役割と説明されます。

ただ、実際に受講生を見ていると、「ドレスを着てさらに手袋をする」という特別感が気分を盛り上げるという効果の方が大きいように感じました。

また、半年間あるいは、一年間のプログラムの期間中に数回、ドレスコードのテーマ(時代やエリア、国際的な要素が含まれたものなど)が設定されます。

これはプログラムにメリハリをつけるという目的だけでなく、設定された時代背景や場面について子どもたちが事前にリサーチし、TPOをわきまえたドレスコードを考えるきっかけにもなります。

さらに、ベストドレス賞などに選出された際にはコメントを求められるため、リサーチした内容を発表することもできます。

<レッスン1:ダンスホール>

ダンスホールではまず自己紹介を通して、握手やアイコンタクトなどのレクチャーを受けます。同じ人が自信を持って挨拶する場合と自信を持てずにする場合の印象の違いなどを実際に見て学び、自信を持って堂々と立ち居ふるまう実践練習をします。

最初は小さな声で自分の名前を伝えるのが精一杯だった子どもも、カリキュラムが終わる頃には堂々と自信を持って挨拶ができるようになります。

続くダンスでとくにに重きをおかれることは、ステップやリズムではなく、とにかく“姿勢”。姿勢のよしあしを例に第一印象が与える影響について指導されます。

ホールでのレッスンにはインストラクター以外にStudent Assistantと呼ばれるティーンエイジャーのお兄さんお姉さんたちが登場します。

彼らはプログラムを卒業した学生ボランティアで、まさに”well mannered”な子どもたちの模範になるような存在です。なかにはCotillionでのボランティアが大学進学のためのレジュメに効果があると踏んで、参加している場合もあるようです。

しかし、保護者目線からすると、子どもの面倒をよくみる感じのよいティーンエイジャーたちであり、「こんな風に育って欲しい」と思えるアイコン的存在です。

子どもたちからしても、例えば同世代の子どもにはきちんと目を見て挨拶するのが難しい子でも10歳ほど離れたお兄さんお姉さんたちのリードがあればできるというケースもあるので、お互いにとって相乗効果があります。

自信を持った立ち居ふるまいの練習は、とにかく「ほめて伸ばす」という環境で行われます。インストラクターは幼稚園や小学校低学年の先生のようにただ優しくほめるというわけではなく、「どこがどのように良かったか」ということを 大人に対して話すように理論的に説明します。

<レッスン2:テーブルマナー>

テーブルマナーのクラスでは、実際に食事をしながらテーブルマナーについて学びます。BMWと呼ばれるテーブルセッティングや、シルバーウェアーの使い方などテクニカルなレッスンもありますが、 おもにコミュニケーション能力を育てることにフォーカスが当たっています。

食事中どのようなトピックを選んで会話するべきか、同席している人を心地よい気分にするためにどのような発言を心がけるべきかというレクチャーがあり、「 はじめまして」の状態で会食をするシーンが演出されます。

最も重視されていることは「相手をリスペクトする」という心がけです。テーブルマナーそのものより会話や態度によって、同席している人にリスペクトを表現する練習でもあるのです。

まとめ

Cotillionプログラムは一般的に「マナークラス」と言われていますが、社交ダンスやあいさつの練習は切り口であり、自信を育て、コミュニケーション能力を磨く場となっています。

第一印象が与える影響について子どもたち自身に考えさせたり、どういった立ち居ふるまいをすることが、今後の人生にとって有益であるかを学んだりします。

また、ともすると同性の友人とばかり遊ぶ年齢の子どもたちが、異性の友人をリスペクトしながら円滑にコミュニケーションを取る大切さについても理解することができます。

どんな文化的背景であっても”Good manners never go out of style.” (よいマナーが色あせることはない)という考え方は根本にあり、”well mannered”な子どもたちは、学校でも友人の親同士でも高く評価されます。

例えば子どもの友人を預かったり預かってもらったりするプレイデートの場で、いわゆる「お行儀のよい」ふるまいをした場合、ほかの子どもたちの前で本人を積極的に褒めるという習慣も北米の特徴かもしれません。

受講生たちはレッスン中、一貫して“子ども扱い”は受けず、一人の大人のように扱われているため、 Cotillion Programを通して、すでに社会に出る準備がはじまっているといえるかもしれません。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事