伸芽会が提案する幼児期のデジタルの学びとは?
先日、伸芽会吉祥寺教室にて伸芽会では初となる、幼児向けのデジタル授業が行われました。
ここ数年、小学校受験でもデジタルデバイスを取り入れた試験が行われる学校も出て来ていますが、幼児教育におけるデジタルの学びとは、どのような点に注意して行うべきなのでしょうか。実際にデジタル授業を行った伸芽会教育研究所の飯田先生にお話を伺いました。
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
目次
伸芽会式が独自開発したデジタル教材を使った小学校受験のための授業とは?
今回のデジタル授業では、伸芽会が独自に開発したデジタル教材をスクリーンに映し出して、子どもたちと学んでいく授業が行われました。主な授業の内容はこちらです。
【話の記憶】
スクリーンに映し出された動物たちの物語を使って話の記憶を問う問題に挑戦しました。
お話の後に子どもたちは各自ペーパーに解答をし、答え合わせをスクリーンで行うというスタイル。問われている部分の絵が「?」マークになっており、そこを先生がクリックすると正解の絵が現れる仕組みです。
【つみきの数】
立体の積み木の見え方を、デジタル教材を使って解説していきました。積み木の数を数える問題では、見えない後ろの部分がポイントとなりますが、デジタル教材だと考えながら積み木を動かして反対から見たり、離してバラバラにしたり、色をつけていけるので、視覚的に捉えることができます。
この積み木は全部で何個かを考えていきます。
1段目を赤、2段目を黄色、3段目を青、と色づけしていきます。
4段目も緑に色づけできました。正面から見えるところだけで大丈夫でしょうか?
「うしろ!」という子どもたちの声を受けて積み木を後ろに向けると、まだ色づけしていない積み木が見えてきました。
積み木をバラバラにして、縦の列で考えられるとわかりやすいことを視覚的に学ぶことができました。
【対称図形】
折り紙を点線に沿って半分に折り、描かれた図の通りに切って広げたら、どんな形になるかを問う問題です。こちらは実際に折り紙を使うことで比較的イメージしやすい問題ですが、折り紙が苦手な男の子にとっては興味を得ることが難しい場合もあります。ところが、今回のデジタル教材ではスクリーンに映ったデジタルのハサミがチョキチョキ動いていく様子を見て大はしゃぎでした。
【四方図】
見る場所によって物の左右や遠近の見え方が異なることを問う問題です。これも平面だけではなかなか理解が難しいのですが、デジタル教材を使うことで、四方で見え方が異なることを体験することができます。その後、実際に積み木を使ってお友達と一緒にお手本と同じ配置に積み木を並べる課題に挑戦しました。
飯田先生にインタビュー
__伸芽会初となるデジタル授業を終えてみた感想を教えてください。
子どもたちが「楽しい!もっとやりたい!」と言ってくれていたのは嬉しかったですね。
もちろん個人差はありますが、学びを深めるという意味ではとてもいい教材だと感じました。また、親御さんたちには別室で待機していただいていたのですが、授業の内容を振り返る際にも、デジタル教材だとどんな授業かを共有しやすく、保護者の方からも好評でした。
__幼児期のデジタルの学びにおいて、伸芽会が大切にしていることとは?
伸芽会では日頃から、具体物を使った体験型の授業を大切にしていますが、デジタル教材を使うことで、何度でも戻って説明ができるのがデジタルならではのよさだと思っています。
ただし、デジタルデバイスを「操作すれば授業が楽にできる」ツールと捉えるのではなくて、その前に「どうなると思う?」と答えを予想させてから解くことが何より重要です。
あくまで問題を解く途中のイメージ作りや考えを深める教材として使うのが理想なのではないでしょうか。伸芽会では、具体物とデジタルの融合がポイントだと考えています。
__デジタル学習のメリット・デメリットを教えてください
メリットとしては、先述した通りプロセスを確認できることと、きっかけ作りになることがあると思います。積み木の数を数える問題では、「バラバラにしたら縦に数えられる」というデジタル体験をしましたが、それをしたことがあるかないかで、その後問題を解く際のイメージの仕方が大きく変わってくると思います。
デメリットとしては、当てずっぽうのクイズになる可能性があるとうことです。小学校受験においては、答えを暗記したり、たまたま正解するのではなく、筋道を立てた学びが大事になりますから、正解しても間違っても「なぜその答えを選んだか」「どう考えたか」を聞いていく必要があります。
さらに、折り紙を折ったり切ったりする手先の器用さは、デジタルデバイスでは養えません。ですから、あくまでデジタルはきっかけづくりと考え、実際に手を動かすことも大事になってくるわけです。
__3Dを見せているだけで2Dの問題はできないのでは?
デジタル教材も具体物の一種と考えていただければわかりやすいと思います。平面の理解につなげるための筋道をとして、3Dのデジタル教材で可視化して2Dとつないでいくというイメージです。ただし、積み木で遊んだことがない子にいきなり積み木のデジタル図形を見せてもピンと来ないので、最初は実物に触れた上でデジタルを使うといいと思います。
今回の授業でも、子どもたちは、積み木が「離れた、動いた!」、四方図では「後ろにも隠れているよ」、折り紙の「向きが変わった」「織り線がついた!」などと反応していましたが、そこが理解を深めるポイントなのだと改めて大人としても再認識できます。
__これからの小学校受験の試験問題はデジタル化になるのでしょうか?
問いとなるお話など情報のインプットのためにタブレットを入学試験で使う学校は実際に出てきていますが、解答の操作をするアウトプットとしては、まだまだ紙と鉛筆やペンを使うところが多いと思います。小学校に入学してから鉛筆が持てないと困ってしまいますからね。ですから、アナログとデジタルを合わせた問題が多くなるのではないかと推測しています。
__保護者が家庭でデジタルデバイスを取り入れる際の注意点があれば教えてください
ご家庭でデジタルデバイスを使った簡単な問題やクイズなどに挑戦するときは、ただ与えておくのではなく、終わった後でもいいので「何でこれを選んだの?」と理由を答えられるかも注意してみてください。また、女の子は間違えた問題を考え直す子が多いですが、男の子は間違っていたらめんどうくさくなって「じゃあこれ!」などと適当に答えがちです。そうではなくて「筋道を立てて考える」プロセスをいかに楽しみながらできるかが学びにつながっていきます。
今は大人も楽しめる脳トレや謎解きのようなアプリもたくさんありますから、お子さんと一緒に遊びながら「図形のセンスあるね!」「よく覚えていたね!」などと気持ちを盛り上げていけるとその後の学びの自信になるはずです。
__伸芽会として今後取り入れるデジタルの学びとは?
これまで通り、体験を重視した学びは意識しつつ、学校側のデジタルを使った出題傾向の変化にも臨機応変に対応していこうと考えています。
また、お教室に通えない地域の方でも等しい学びがいきわたるように、今後はサテライト配信授業なども考えているところです。将来的には、SDGsが掲げる目標のひとつ「質の高い教育をみんなに」に貢献できるよう、ご家庭でもこういったデジタルデバイスを使って同等の学びができるのが理想です。
幼児期のデジタルの学び、いかがでしたでしょうか。大きく社会が変化する今、小学校受験や幼児教育の在り方も変化しつつあるようですね。今後の最新動向も追ってお伝えしていきたいと思います。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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