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インド人がすごいのはなぜ?インドにおける最新の早期教育事情【後編】

インド人がすごいのはなぜ?インドにおける最新の早期教育事情【後編】

前編にて、インドの教育がどのように変わってきたのか、また、気になる英語や算数の取得が何歳からどう行われているのかを報告しました。

後編では、そのような教育が行われている背景や、最新の早期教育事情などの点から、優秀なインド人が輩出される背景を総合的に探ってみましょう。

「幼児教育は、実はインドの教育制度で決められている」

インドにおける現在の教育骨子は、英国統治下の影響を受けていた際、上流階級に行われた英語によるエリート教育にあります。独立後、階層という枠を超えてインド全土への普及を目的とし、1986年の教育改革で国中の学校カリキュラムの統合を図ってきました。

インドの学校は所属する州の管轄下にありますが、近年はカリキュラムの独自性が進み、英語での教育がより重視され、IB(国際バカロレア)機構の認定校、米国や英国の有名大学との提携校も増え、国際化が進んでいます。

一方で、0~6歳の未就学児童に対しては、保育に加えて「読み、書き、算数」を目的とする「幼児教育統合プログラム」が教育改革後に制定されました。1年生になる前に算数を勉強することも、じつは国の教育方針なのです。

コンピューターについては、幼児プログラムにはうたわれていませんが、インドでは国を挙げてIT教育に力を入れているため、学習開始の年齢が早まっています。

後編・IT教室の様子
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「早期教育はプレスクールから。インドで増え続けるその秘密とは?」

インドの未就学児は、私立学校のキンダーガーデンに入るか、プレスクールに入ります。キンダーは学習面により力を入れているため、多くの家庭では、まずプレスクールに通わせて、キンダーを1、2年経験後に1年生を迎えるのが理想的と考えています。

インドのプレスクールは、前述の幼児プログラムに基づき、それぞれが独自な教育方針を展開しています。モンテッソーリなど海外の教育プログラムを取り入れたスクール国外の大学の提携校などは人気が高く、教師は海外での研修を重ねた精鋭ばかりです。

使用される言語は英語が基本です。ヒンディー語のほうが慣れている子どもがプレスクールに入ることもありますが、教師たちのサポートで子どもたちはすぐに英語の会話に慣れていきます。

どんなプログラムかというのも大事ですが、英語を習得できるという点でも、プレスクールの存在は欠くことができなくなっています。

また、インド人は、学歴や知名度を非常に重視するため、スクールは教師・アドバイザー・マネジメントの学歴を公開しています。その背景には、スクールを選ぶ親たちが自身の学歴や経歴に自信を持っている人が多いことがあります。

親たちは、スクールの教育方針・教師の経歴・マネジメント及び、口コミなどからスクールを厳選するのです。なかには自身のキャリアを生かし、自分でプレスクールを立ち上げた親さえいるほどです。

このように、プレスクールの人気は年々高まる一方であり、相乗効果で質も向上し数も増え続けています。インドの教育ビジネスは、魅力的な市場なのです。

「3歳では遅すぎる?プレスクールにおける教育」

後編・プレスクール・母子クラス2

プレスクールが掲げる目標は次のような感じです。

「保育(自立を補助)と自信」という基礎のうえに、自発的行動や自己統制、社会的行動の育成といった「自己の確立」があり、その先に「言語とリテラシー」・「創造的表現」・「ロジックと算数」というゴールがあります。勉強だけを考えていないスクールがじつは多いのです。

スクールでの過ごし方は、年齢ごとにクラスわけされ、時間割も違っています。たとえば、3歳までは、毎週火、木といったように毎日ではありません

時間割は、知育玩具による遊び・アートや朗読・おやつ・リズムや歌などで構成され、時間割の変わる都度、自分たちで片付けをする時間を設けてあります。

4歳からは毎日の通学となり、滞在時間も長くなり、アルファベットの導入やピクチャーと名前のマッチングなど、学習的なことも加わります。自由な外遊びの時間も増え、キンダーや学校への移行を意識したプログラムとなるわけです。

特に注目したいのは、0歳児クラスを持つスクールで、「3歳までに脳の約9割は完成する」という研究に基づき、脳が形成される過程での教育に取り組んでいます。

生後6カ月からのクラスでは、教師による積極的な語りかけや本の読み語り、手を使ったリズム遊びなどをすべて英語で行っています。赤ちゃん扱いは決してしません。スクール側は、0歳児にも社会性はあり、既に相互関係は始まっていると説明します

後編・プレスクール母子クラス1

優秀なインド人が育つ背景には、早い段階での教育の開始もありますが、それらが自己肯定感に基づく自信のうえにあることは、インド人を知ればよくわかります。

インド人は「子どもには神様が宿る」として、子どもを非常に大切に扱います大切にされた子どもは、人前でも堂々と振る舞い、発言や発表することが得意になります。

また、インド人の家庭では多くがヘルパー(メイド)を雇っています。掃除や洗濯・料理など、家事の大半をメイドに頼れる文化は、育児に関わる人の肉体的、精神的な負担をかなり軽減しています。

インドの母親たちは子どもがぐずったり喧嘩をしても、大声を出して注意したり怒ることはありません。「Keep themselves busy(子供に退屈させるな)」という言葉をよく使いますが、子どもたちの関心をほかに向けて、騒ぐことをさせないのがとても上手です。このようにして確立した母子の信頼関係は、家庭での勉強をよりスムーズにしているのです。

かくして、自信に満ちて成長したのち、英語をツールに自分の知識や技術を最大限に発揮できたら、世界で活躍することも夢ではないはず。インド人に学ぶべきは「インド式」勉強のテクニックだけではなさそうです。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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