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教育改革実践家・藤原和博さんに聞く、「どうなる、2020年教育改革!」

教育改革実践家・藤原和博さんに聞く、「どうなる、2020年教育改革!」

都内で民間初となる中学校の校長を経験し、現在は教育改革実践家として累計80冊に及ぶ執筆や1400を超える講演などさまざまな活動を精力的に行う教育界の革命児、藤原和博さん。今回は、ママたちが気になる2020年以降の教育改革についてお話を伺いました。

リクルート社(フェロー第1号)退社後、教育改革実践家としてさまざまな活動を行う。元杉並区立和田中学、奈良市立一条高校校長。著書に、西野亮廣さん、堀江貴文さん、前田裕二さんらの対談をまとめた『僕たちは14歳までに何を学んだか』(SBクリエイティブ株式会社)『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)など。最新の活動は「よのなかnet」(https://www.yononaka.net/)をチェック。

 

2020年からの教育改革を、藤原さんはどのように見ていますか?

プログラミングやアクティブラーニングなどさまざまなことが言われていますが、大きく変わるのは大学からでしょうね。

これまでのセンター試験が廃止され、AO入試や面接重視の試験を取り入れたり、授業にディスカッションを取り入れたりと大学の教育現場は急ピッチで改革中です。その後、高校、中学、小学校と順々に下りてくるとすると、小学校の教育が大きく変わるのは10年後くらいじゃないですかね。

とはいえ、SHINGA FARMを読まれる親御さんたちは大学を見据えた小学・中学受験も検討されているでしょうから気になるところですよね。

校長を経験された藤原さんが感じた今の公立小中学校が抱える問題は何だと思いますか?

学力の“2コブらくだ問題”はあるでしょうね。昔は真ん中の平均な子が多かったからそこに合わせた授業をすればよかった。でも今はすごくできる子と平均以下の子という2つの山がある。だから真ん中に向けた授業は誰のためにもならないんです。

加えて、算数の指導要領にも問題があると僕は思っています。3年生から急に割算や小数点が入ってきますが、今の子たちは5個のお饅頭を3人で分ける経験もないし、1/2に3/5を足すとか抽象的なことを急に言われてもイメージできなくなる。

こういった指導内容を変えるべきだと文科省の関係者にも話をしているところなんですが、すぐには変わらないでしょうね。英語と算数は一度落ちこぼれるともう完全についていけなくなりますから。親御さんは3年生の算数だけは落ちこぼれないよう注意してあげてください!

あとは、これは僕の実感なんだけど、人事マネジメントのバランスから、学校はどうしても1年生と6年生にベテランの先生を持ってくることが多く、慣れてきた3年生あたりに新任の先生なんかをつけることが多い。

僕は3年生にこそ、算数のスペシャリストとかベテランの先生がつくと落ちこぼれが防げて、高学年へのスムーズな橋渡しができるんじゃないかと思っています。

では、家庭で親がすべきこととは?

ひとつ言っておきたいのは、決して公立がダメで私立がいいという問題ではないこと。世界から見ると日本の初等教育は本当に素晴らしく憧れられる存在なんです。

ただ、今までの公立小学校というのは、“上質な普通な子”を作るための教育だと僕は思っていて。それではダメだということで、思考力や情報を編集する力を養うべきだという流れになってきたのが2020年教育改革の主な柱です。でもこれはすべて学校任せでは到底できるものではありません。

ですから、家庭での教育や何気ない会話や小さい頃からの遊びがとても重要になってきます。

たとえば、親はわが子をゲーマー(受け身な消費者)にさせたいか、ゲームメーカー(能動的な作り手)にさせたいのか。何かを生み出す側にさせたいのであれば、幼少期のごっこあそびなどの“見立て遊び”は、イマジネーションを養えてクリエイティブでいいですよね。

あとは都会では難しいとは思うので、夏休みにキャンプに行くとか祖父母の田舎に行くとか、外遊びはとても大事です。いずれにしても、正解のあるジグソーパズル型の学力ではなく、自由に思考を発展できるレゴ型の学力がこれからの時代は求められてくる力です(だからといってレゴを買えばいいというわけではないですよ!笑)。

__これからを生きる子どもたちに必要な力とは? 親御さんにアドバイスを!

これからのAI時代には、基礎的人間力こそがクローズアップされる時代になってくるでしょう。僕の本にも書いていますが、小さい頃の「根拠のない自信」これが一番の成功の土台になると思っています

親御さんは遊びやさまざまな体験を通してこの「根拠のない自信」を育ててあげてください。そして、核家族が多い都会の子どもたちにとっては、おじいちゃんおばあちゃんだったり、習い事の先生だったり、お友達の親だったりといった「ナナメの関係」がとても生きる力になります

今のお母さんたちは、お仕事もしていてとても忙しいですから、自分ひとりで子育てをしようと思わずに、“つなげる力”をもってください

キャンプや外遊びが苦手なら得意な家族と行けばいい。そうしたコミュニケーション力やネットワークを親御さんも身につけて、複数の大人に見守られながら育った子が、これからの時代は強いんじゃないかなと思います。

__藤原さんが掲げる「よのなか科」のことを教えてください!

僕は、意見や質問が出ない授業が今の日本の一斉教育の最大のデメリットだと思っています。だから「よのなか科」という授業でブレスト&ディベートで考える力を養うべく、学校はもちろん、企業や保育園にも広める活動をしています。

実際に導入している学校では、正解のない問題について話し合う授業(「情報編集力」のトレーニング)や、スマホを持ち込んでの授業(アプリで意見を書き込むC-learningを導入)をしたり。

また、先生たちにも“最高の授業ネット”(スタディサプリ)といってあらゆるジャンルの一流の方々の教えを動画にまとめてそれを使った授業をするという取り組みを広めていけたらなと思っています。

いかがでしたか。藤原さんの講義は「よのなかnet」からもたくさん見られます。子育てにもビジネスにも通ずる教えがいっぱいです。ぜひチェックいてみてください!

Photo:SHINSUKE SUGINO

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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