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海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:ニュージーランド編

海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:ニュージーランド編

写真出典元:https://www.freepik.com/free-photos-vectors/children

海外教育事情の第2回目は、ニュージーランドです。今回は、ニュージーランド在住のウィリアムズゆりさんと斎藤ゆうこさんのお二人に話を伺いました。

現地の子どもたちの学校生活や学習に対する考え方、また、ニュージーランドで日本語と英語のバイリンガルのお子さんを育てているなかで思う「グローバル」感覚についても伺いました。

ストレスフリーな学校生活!勉強苦手は個性のひとつ

ニュージーランドの幼稚園は、大きなクラスが一つあり、3人の先生が30〜40人の園児を担当しています。年齢別ではないため、クラスには3歳から5歳の子どもが入り交じっていて、日本のように担任の先生が一人いるのではなく、複数の先生が子どもたちをみています。

幼稚園での生活を一言で表すとすると「自由奔放」。ランチの時間以外は、子どもたちはそれぞれ好きなことをして遊びます。

先生も、けんかがあれば仲裁に入りますが、基本的には子どもたちの遊びを見守るのみで、全員で一緒に何かをするということはほとんどありません。アルファベットや数字の学習といった勉強もありません。

ただ、世界一紫外線が強いといわれているニュージーランドでは、紫外線対策についてはかなり厳しいようです。幼稚園に行く前に日焼け止めを子どもに塗らないといけなかったり、帽子を忘れると外では遊べないことになっている幼稚園もあるとのことでした。

ニュージーランドのユニークなところは、小学1年生は全員同じ日から始まるのではなく、5歳の誕生日を迎えた子から順次小学校に通い始めることです。そのため、2月の新学期に5歳の誕生日が近い子と12月の学期末に5歳の誕生日を迎える子とでは、学力に明らかな差が出ます。

ただし、驚くことに、そのような学力の差を気にする親は多くありません。ニュージーランドでは、1年生は小学校生活に慣れるという位置づけで、2年生に上がる準備ができてなければ1年生をもう一度やり直すなど、学力よりも小学校に慣れることに力点が置かれています。

日本でも小1プロブレムなどと言われ、幼稚園から小学校の転換期に生じるさまざまな問題が取り上げられていますが、このような猶予期間があれば、子どもたちも自分のペースで新しい学習環境に慣れていくことができるのではないでしょうか。

また、ニュージーランドでは、中学に入学したあとも勉強ができないことはあまり心配の種にはなりません。中学校の終わりまでは教科書もなく、学年が同じでも先生によって教え方や内容が異なるため、子どもの学力に差が出てしまうそうです。

ただ、一人一人、得意なこと、苦手なことは違うのだから、勉強に関しても苦手なら無理してやる必要はないという考えがその根底にあります。

個性と聞くと、その子にしかないものを想像しがちですが、ニュージーランドでは、勉強が苦手なことも個性の一つとして捉えられています。その延長で、少し変わった子やいじめに合いそうだなと大人が心配してしまうような子でも、それがその子の個性ということで認め合い、助け合う雰囲気があるそうです。

この、成績があまり重視されないという背景には、大学に行かなくても高収入の職に就くことができるというニュージーランド独特の社会事情もあります。

例えば、スポーツ選手、土木・電気・水道工事関連の職業は需要が高く、高収入なので、「将来安定した職につくためには大学に行った方がいい」という論理が当てはまりません。そのせいか、学力ではなく、スポーツ至上主義的なところがあり、スポーツさえやっていればそれでいいという考えの人も多くいます。

なお、ニュージーランドは、人口比でいうとスポーツ人口が世界一多いとのこと。日本では想像できませんが、サッカー好きの子どもたちが、地域のサッカーのイベントに行きたい人を校内で募って、授業を休んで参加したりもできてしまうとのことでした。

今、日本でも話題になっているラグビーですが、ニュージーランドでは小さいときから皆経験するようです。幼稚園、小学校ではタッチラグビー、タックルラグビーが主流で本格的なラグビーは高校から始まります。幼稚園から出来るラグビークラブがあったり、小学校でもラグビーチームがあったり、ニュージーランドではラグビーが生活の一部になっているようです。

グローバルな価値観は自己肯定感から

お子さんをバイリンガルとして育てていらっしゃるという観点から、グローバルな社会に必要な子育てについてもお二人に聞いてみました。

まず、共通するのは、ニュージーランドにいると、日本語の読み書きを習得することは難しいため、日本語会話はなんとかできるようにと親子で努力されていること。また、グローバルで活躍できるように育って欲しいというよりは、日本人であることを大切にしながら、日本とニュージーランドの両方をベースとしたアイデンティティをもってほしいと感じているそうです。

学校では、海外から来たからという理由で特別に配慮してくれる先生もいる一方、まったく配慮のない場合もあり、ニュージーランドでも海外から転入してきた子どもに対する接し方はさまざまです。

一方、イスラム教の子どもなども含め、幼い頃からバックグラウンドの違うクラスメイトと接する機会が多くあることで、自国の文化を認識したうえで、異文化に対する理解力や寛容性が自然と身につくのがニュージーランドの学習環境の特徴です。

また、グローバル社会という視点から考えると、自分の意見を持っていることがとても大切だとも感じるとのこと。欧米では、学校でディベートの授業があるように、学校教育のなかで自分の考えを述べる機会も多くあります。

ただし、実は意見が言えるようになるかは、家庭での教育も大きく影響しています。例えば、子どもが意見を言ったときに、子どもだからといって否定しない、5歳でも一個人の意見として親が真剣に聞けるかどうかが重要です。

また、単に聞くだけではなく、こういう場合はどう思うかなど、さらに質問をして考えさせるというように、日常における親とのコミュニケーションを通して、意見を堂々と言える子が育っていくのではないかとのことでした。

グローバル化が進むなかで、他人との違いを理解しながら、どのように自分の意見を述べて、妥協点を見出していくのかというコミュニケーションスキルがますます求められる社会となってきています。外国やその文化を知識として知ろうとすることもまた、そのようなコミュニケーションスキルの習得には必要だと言えるでしょう。

今回のインタビューでは、異なる文化や意見を尊重し、認めることができるようになるためには、得意なこと、苦手なこと、文化的背景も含めて、等身大の自分が認められているという自己肯定感を幼少期に育てていくことがあらためて大切なのではないかと感じました。

インタビュー協力者
ウィリアムズゆりさん:ニュージーランド滞在9年目で、二児(12歳、15歳)の母。アメリカ、カナダに留学、滞在後、現在はニュージーランドにて中学校の数学教師。
齋藤ゆうこさん:ニュージーランド滞在2年半、二児の(5歳、9歳)の母。保育園勤務。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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