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海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:ロシア編

海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:ロシア編

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海外教育事情の第3回目はロシアです。モスクワ在住の松川直子さんと竹内梨沙さんのお二人に、ロシアの幼稚園生活、小学校の教室のIT化、今人気の職業を中心に伺いました。また、グローバルな時代の子育てとして意識していることや将来どのような子どもに成長してほしいかについてもお聞きしました。

朝昼晩3食つき!働く母親にうれしいロシアの幼稚園

ロシアの幼稚園は3歳から始まります。なんと、朝7時ごろから夜7時くらいまで預けることができます。朝昼夕と3食つきなので、働く親にとってはとても助かる仕組みです。

朝ごはんは、オートミールやオムレツ、おやつは果物やカッテージチーズ、昼食はスープとメイン、お昼寝の後おやつ、そして、夕食にはハンバーグなどがでてきます。

おもしろいのは、幼稚園児でも食後に毎回紅茶がでてくるところです。日本で言うところのお茶のような感覚なのだと思いますが、幼稚園児が紅茶というのは少し日本の感覚とは違ってユニークな点ではないでしょうか。

幼稚園のアクティビティは豊富で、音楽やダンス、絵をはじめ、英語が選べる幼稚園もあります。そして、ロシアならではなのが、子どもたちによる詩の朗読・暗唱があることです。幼稚園の発表会では、詩の朗読が必ずあるそうです。

さらに、外で新鮮な空気を吸わないといけないという考え方が強くあり、散歩はどんなに寒くても毎日1時間くらいはあります。ちなみに、ロシアでは、大人も散歩が大好きだそうです。散歩といっても30分程度の軽いものではなく、ハイキング並みに2時間もざらだそうで、お国柄の違いが出ています。

また、幼稚園では、しつけや衛生面の教育が徹底されています。とくに、身の回りのことは一人でできるように指導されるようで、3歳児でも自分のロッカーがあり、冬用のコートを着たり、ブーツを履いたりなどは自分でしなければなりません。

また、衛生面もきちんとしていて、タオルと髪の毛のブラシを自宅から持ちこみます。タオルは自分のしか使わず、先生が髪の毛をとかしてくれるなど、身だしなみも整えてくれます。この背景には、中央アジアから出稼ぎでロシアに来ている人が多く、特に農村部から来ている人は衛生管理の意識が低いといった理由があるそうです。

厳しい競争社会:詰め込み教育と成績のIT化

ロシアでは、小学校に入ると日本以上に厳しい教育環境や受験環境が待ち受けています。日本と同じように、有名私立小学校に入るためには受験がありますし、人気の公立小学校もあるそうです。

また、ロシアには、年長の年齢の子どもたちが通う小学校のための準備クラスがあります。必須ではないのですが、この準備クラスの倍率がとても高く、入るのはとても大変だそうです。

毎日2時間しか電話を受け付けていないこともあって、毎日かけても電話がつながらず、運良くつながって面接まで行っても、そこで半分くらいに絞られるとのことでした。

なお、ロシアの学校の教育方針は詰め込み式が主流です。中高生になると宿題も毎日2〜3時間分は出るなど、いわゆる日本でいうセンター試験に向けての受験勉強が本格化します。

その手前の段階となる小学校の教室では、IT化がとても進んでいて、電子黒板が基本で一人に一台のタブレット端末が支給され、アプリで教科書が見られて、連絡帳も宿題もオンラインでやりとりをします。

宿題や学習態度で、毎日1から5までのスコアが記録されるようになっており、宿題をやって、話も聞けて、発言もできていれば5がもらえます。

テストは、別途点数化されており、子どもひとりひとりの成績の統計が見ることができるので、先生や親も子どもたちの弱いポイントがすぐに把握できるようになっています。

安全面でも、生徒はIDカードを持っていて、子どもが学校の敷地に入ると、親の携帯に連絡が行くようになっていたり、IDカード にお金をチャージできるので学校内ではそれを使って必要なものは買えるシステムになっていて、ICTの活用でとても学校生活の利便性は高くなっています。

日本で習い事として人気のプログラミング教室ですが、ロシアでも人気が高く、幼稚園児も多く通っています。プログラミングが高校の必須科目になってからは、プログラミングの大会も多く、入賞すれば、賞金がもらえたり、試験が免除になったりもします。今、ロシアで一番人気の職業もプログラマーだとか。

ニューロシアンと言われる若い世代は、自分でビジネスをやってみたい、クリエイティブなことをやりたい、なんでも挑戦してみたいという人が多く、大手企業に対する興味がなくなってきているということでした。

グローバル社会で育つ子どもに必要なこととは?

松川さんのお子さんは、日本語とロシア語のバイリンガル。竹内さんのお子さんは日本語、ロシア語、英語のトリリンガルです。

松川さんのお子さんは、ロシアの詰め込み教育が合わず、現地の日本学校に通っているため、ロシア語の読み書きのフォローを日々しているとのことでした。また、英語もやっているのですが、お子さんがあまりやりたくないようで、親としてどこまで英語をやるのか、悩んでいる部分もあるそうです。

ただ、グローバルということに関しては、すでにハーフでバイリンガルなので、今は意識していなくても、将来的には自分のグローバルなバックグランドを意識していくようになるのではないかと思っているとのことでした。

竹内さんのお子さんはトリリンガルでもロシア語が強くなってきているので、定期的に日本に帰るように意識されているそうです。英語に関しては、アメリカ人やヨーロッパ人の集まりに積極的に連れて行くようにしているとのことでした。

言語の問題だけでなく、いろいろな人に会うことで、常識や固定観念に捉えられない人に育って欲しいという思いがあるそうです。その点では、松川さんも同様で、言語に関わらず、生き方や職業など、いろんな世界があるということを子どもに見せてあげたいとおっしゃっていました。

最後に、グローバル社会を生きていくために子どもたちに必要なことについてもお聞きしました。

竹内さんは、学力やコミュニケーション力はあるに越したことはないけれど、やはりその子どもが何か輝ける部分をひとつ持っていることが重要だと感じるとのことでした。小さなことでも何か輝いている部分があれば、自分にコミュニケーション力がなくても、コミュニケーション力のある人と一緒に仕事をしていけばよいと思うとおっしゃっていました。

松川さんは、子どもには人間力を持って成長して欲しいとのことでした。ここには、臨機応変さと柔軟性を持ちつつも、夢に向かって自分の道を切り開ける精神力や持続力、どんな時でも、どんな場所でも生きていける強い人間になって欲しいという思いが込められています。そのためには、親として、子どもの視野が広がるような多くの体験をさせてあげることが大事だと感じているとのことでした。


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インタビュー協力者
松川直子さん ロシア在住16年 通訳・翻訳、コーディネーターとして活動。10歳の双子の女の子の母。
竹内梨沙さん ロシア在住 9年 主婦 6歳と4歳の2児の母

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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