成績優秀は大前提!“マルチ”な才能と“インパクト”が求められるアメリカの大学受験・就職事情
国内外から優秀な学生が集まるアメリカの大学。大学受験・就職は画一的でない分複雑で、熾烈です。試験一発勝負の日本とは異なり、成績優秀が大前提のうえに、“マルチ”に“スーパー”で“インパクト”ある人間かをアピールする必要があるのです。
今回は、そんなアメリカの教育事情をお伝えします。
アメリカの有名大学は、最新の設備を備えた広大なキャンパスと著名な教授陣の囲い込みを競う
出典:Madcoverboy at English Wikipedia
目次
他人と同じではダメ。いかに“stand out”する(突出する)か
アメリカでは、受験やその後の就職・社会において、いかに他人と差別化し”stand out”する(突出する)か、が問われます。そのため、親は子どもの可能性の芽を見つけるため、幼少期からスポーツ、音楽、アート、ITなど、アクティビティ(習い事)に精を出し、たくさんの経験をさせます。
塾よりもアクティビティの選択肢・施設が圧倒的に多く、大会やコンクールの機会も豊富で、週末は朝から試合や遠征に繰り出し、トロフィーや賞を集めるのに家族総出です。
勉強に関しては、中学校の前半までさほどプレッシャーはありません。公立は、学区ごとのランキング・評価がネットで開示されており、住む学区の中学・高校には受験なしで入れます。私立校や一部エリート寄宿舎学校はありますが、独自の選抜基準があり、偏差値一辺倒の試験対策といった文化はありません。
大学受験で問われる“マルチ”で“スーパー”な資質
高校に入ると大学受験への準備が本格化します。全米統一テストや学校内の成績に加え、アクティビティでの輝かしい実績、チャリティや生徒会活動におけるリーダーシップ、それらをまとめて自分をアピールするエッセイ(小論文)です。
評価が画一的でないので、受験攻略法は十人十色。進学実績のよいエリート私立高校、公立校で上位をめざす、プロ並みのレベルの得意分野があればそれにフォーカスするなどです。
高校の授業構成は大学のように選択科目になっており、AP(Advance Placement)という大学レベルの特進クラスの単位が上位大学に合格するには必須で、高校生は多忙を極めます。
スタンフォード、ハーバードといったいわゆる超トップ校に入るには、成績優秀に加え、スポーツならオリンピック候補レベル、音楽・芸術分野で国際大会入賞など何かしらの実績、あるいは途上国出身のユニークなバックグラウンドなど、傑出したものがないと戦えないと言われています。
これだけでも圧倒されますが、さらに親を悩ませるのが費用の問題。私立大学だと学費だけで4年間で2,000万円、外国籍の場合はさらに高く、3,000万円を超える水準です。奨学金制度も充実していますが、それがさらに受験制度を複雑にし、学費ローンが社会問題化しています。
大学入学後も、インターンシップの実績がないと就職は簡単ではなく、エリート高校・大学では、あまりの完璧主義プレッシャーに自殺者が増えているという事実もあります。
ローカル誌には、毎週地元高校のスポーツ・芸術での活躍がとりあげられる
セカンドチャンスがある、それがアメリカ教育・社会の魅力
アメリカの教育システムは所得による教育格差も大きく、受験の選抜基準や公平性が不透明だという批判もあります。均質に高い学力や公平性といった点で日本は優れていますが、実社会で活躍できる人材を輩出するという点では、アメリカが上回っているようにも思えます。
画一的でない受験・就職の攻略方法を自ら考え、自身をアピールする訓練を続けることは、実社会で生き抜く術そのものでもあるからです。
そして何よりも、多様性を重んじ、何度もセカンドチャンスをくれる懐の深さが魅力です。留学生が無名の専門学校から有名大学へ編入、専攻や大学の変更、大学院から一発逆転、など、エリート街道でなくても成功する道があるのです。
日本人が米国の大学に進学するという視点では、語学はもちろんのこと、学費、米国籍や永住権がないと現地で就職が難しい、など、ハードルが高いのが実情です。それでも、留学や大学院だけでも、世界レベルの人材が集まる最高の教育環境に触れる価値は十分あると思います。
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
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