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人気が高いイギリスの無料公立中学校への入学試験「イレブンプラス」とは?

人気が高いイギリスの無料公立中学校への入学試験「イレブンプラス」とは?

イギリスには無料の中高一貫公立中学校「グラマースクール」があります。入学するためには「イレブンプラス」という試験を受験し、成績優秀者が選抜される仕組みです。

グラマースクールは歴史が長く、進学校として優秀な生徒たちが集まります。ただし学校数は年々減少しており、受験生が多いことから倍率も増加しています。そのため、子どもたちは小学校低学年のころから塾に通ったり家庭教師をつけたりして、試験に向けての勉強を始めるのです。

この記事ではイギリスの受験勉強の内容も含めて紹介します。

イレブンプラスでは規定以上の合格点取得が必須

イレブンプラスは、イギリスの小学生が最終学年であるYear6(6年生)で受験する無料公立中学校「グラマースクール」への入学試験です。いくつかの私立中学校でも、入学試験に取り入れています。

イギリスの6年生は10歳から11歳の子どもにあたるため、イレブンプラス(11+)と呼ばれています。

グラマースクールは無料の中高一貫の公立中学校(セカンダリースクール)です。15歳~16歳のYear11(11年生)で受験する全国統一試験の「GCSE(General Certification of Secondary Education)」に優秀な成績で合格する生徒が多く、有名大学への高い進学率を誇ります。

グラマースクールへの入学試験であるイレブンプラスは、学力試験で入学者を選抜するシステムです。イギリスでは9月から新学期が始まりますが、イレブンプラスは6年生に進級したばかりの9月~10月にかけて試験が行われます。

イレブンプラスに合格するには、まず学校や学校がある行政区が規定する合格点以上の点数を取得しなければなりません。その後選抜が行なわれますが、入学者の選抜方法はグラマースクールによってさまざまです。

合格者を前提に、試験の成績上位者から順番に選ぶ、学校から近い場所の居住者から順番に選ぶ、兄弟が同じ学校に通っている子から選ぶなど、学校や行政区によって異なる基準を設けています。

規定された合格点を取得できたかどうかの試験結果は、10月中に発表されます。結果が合格点以上であれば、10月末までに希望するグラマースクールを選んで居住地域の自治体に願書を提出します。選抜後の入学結果は3月に発表されます。

大学進学に重点を置くグラマースクール

グラマースクールはYear7(7年生)からスタートします。イギリスでは11歳~12歳のYear7(7年生)から15歳~16歳のYear11(11年生)までが義務教育で、11年生で全国統一試験であるGCSEを受験します。成績は最高のグレード9から最低のグレード1までで評価されます。

試験結果がグレード4以上の合格者はシックスフォームと呼ばれる高等教育に進み、2年間大学進学試験Aレベルに向けて勉強します。イギリスではほとんどのセカンダリースクールが中高一貫校であるため、GCSE合格者は同じ学校でシックスフォームへと進学します。

一般のセカンダリースクールでは、GCSEのあと職業訓練校や就職などを選択する生徒も多くいます。しかし、グラマースクールは学業成績と能力に基づいた生徒を選択しているため進学率が非常に高く、多くの生徒が有名大学への進学を希望しています。

国内では年々グラマースクールの数が減少していますが志望者は多く、競争率が大変高いことでも知られています。

教師は英国の伝統的な教授法で授業を行っており、学校では厳格な規則を設けています。グラマースクールの歴史は古く、6世紀頃までさかのぼると伝えられています。最初はラテン語や古代ギリシャ語を教える学校として設立されました。

一般のセカンダリースクールではでは大学進学を望まない生徒もいるため、ほとんどの学校が職業に関する科目を設けています。

これに対しグラマースクールは大学進学を重点に置くため、学問中心の科目が設けられています。例えば理科は化学、生物学、物理学の3科目に分かれています。外国語の選択肢も多く、政治経済学といった分野もあります。

グラマースクールには女子校と男子校、共学校があり、学校によって異なります。公立学校のなかでも「アカデミー」に変更した学校では、より個性的なカリキュラムや教授法を採用しています。

アカデミーとは政府から直接資金を受けるとともに、個人や慈善団体、企業などからの資金を受けて運営することが許された学校です。一般の公立学校では、政府が示すカリキュラム通りに授業を行わなければなりません。

アカデミーに変更した場合は学校独自のカリキュラムを選択できるため、授業内容がより個性的で幅広いものとなります。

4教科から成るイレブンプラス試験はマークシート方式

イレブンプラスの試験では、英語と算数、知能テストのようなバーバル・リーズ二ングとノンバーバル・リーズニングの4科目を受験します。試験問題の内容は、学校や行政区によって異なりますが、回答はすべてマークシート方式に定められています。

英語の試験はYear6(6年生)までに学習した単語や文法から出題され、スペルの間違い探し、単語の意味、文章を完成されるための単語の選択など、多岐にわたる設問に答えます。

算数の試験では、Year3(3年生)以降に学習した内容に重点を置いた問題が出題されます。足し算、引き算、掛け算、割り算の基本的な計算から、分数、小数、メートル法、素数、素因数、時間、平均、距離・速度、グラフなど、小学校で習う算数の基本をすべて習得しているかどうかを確認します。

バーバル・リーズニングは、文章による設問です。読解力や論理的思考能力などを試しますが、同時に高い語彙力や算数のスキルを必要としています。

ノンバーバル・リーズニングは図形や絵を見て回答するもので、問題解決力や図のパターンを認識する能力を試します。図を見て答えるだけなので、英語力は問われません。

イレブンプラスの受験勉強方法はさまざま

イレブンプラスは決められた時間内にマークシートで回答する方式のため、スピードが必要とされます。英語や算数は学校で学習した内容の復習が重要ですが、バーバル・リーズニングとノンバーバル・リーズニングは、過去の試験内容を参考に学習することになります。

イレブンプラスの試験に向けた勉強方法は、専門の塾に通ったり家庭教師をつけたりするのが一般的です。専門の塾は地域に数カ所しかないことが多く、生徒数が多いため入塾が順番待ちになる場合があるほどです。塾には同じ目標を持つ子どもたちが通うため、モチベーションが上がります。

家庭教師に依頼する場合は自宅にて1対1で学習するほか、友人とのグループ学習も一般的な手法です。グループ学習ならば少人数で集中して学習できるうえ、費用も分担できます。

このほか、オンラインで学習するコースも開設されています。自宅で好きな時間に勉強でき、電話やEメールでのサポートを受けることができます。費用はコースによってさまざまです。

さらに書店やオンラインショップでは、イレブンプラスの参考書や問題集を入手することができます。自宅で空いた時間に好きなペースで学習できるうえ、費用も塾や家庭教師より安く済ませることができます。

まとめ

「イレブンプラス」というイギリス独特の試験や勉強方法、いかがでしたでしょうか?

日本でも公立の中高一貫校の人気は高いと聞いていますが、受験対策としては塾が中心のようです。家庭教師によるグループ学習やオンライン学習など、今後はイギリスのような学習方法も選択肢のひとつとなるかもしれませんね。

【参考URL】
(イレブンプラスとは)
https://www.elevenplusexams.co.uk/advice/what-is-11-plus
https://www.11plusguide.com/
https://www.schoolentrancetests.com/2019/10/what-score-do-you-need-for-passing-the-11/
https://www.theschoolrun.com/eleven-plus-explained
(グラマースクールとは)
https://www.theschoolrun.com/grammar-schools-explained
(イレブンプラスの試験内容)
英語
https://www.elevenplusexams.co.uk/advice/english
算数
https://www.elevenplusexams.co.uk/advice/maths
バーバル・リーズニング
https://www.elevenplusexams.co.uk/advice/verbal-reasoning
ノンバーバル・リーズニング
https://www.elevenplusexams.co.uk/advice/non-verbal-reasoning
(勉強の方法)
https://www.11plusguide.com/11-plus-exam-preparation/

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