歴代首相を19人輩出!政治家や各界の実力者を育てるイギリスの名門イートン校【憧れのイギリス名門校1】
2回に渡ってお届けする「憧れのイギリス名門校」の第1回目は、イギリス王室のお膝元ウィンザーの対岸にあるイギリス屈指の名門男子校、イートン校をご紹介します。
王室や貴族の子弟も通ったそのユニークな伝統と特徴を始め、最近イギリスで話題になった現役イートン校生達のあるニュースも交えてお伝えします。
目次
歴代首相19人、ウィリアム王子も通った超エリート校
ヘンリー6世により1440年に創立されたパブリックスクール(私立校) であるイートン校は、ロンドンから電車で30分ほどのバークシャー州にある全寮制の中高一貫男子校です。
ウィリアム王子やハリー王子を始めとするイギリス王室や貴族の子弟が通い、キャメロン前首相などイギリスの歴代首相を19人も輩出したことから、その名を世界に轟かせています。卒業生の多くはオックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学。将来の政治家や各界の実力者を育てる超進学校です。
13歳から18歳までの少年約1,300人(一学年約250人)の生徒が学ぶイートン校の2016年度の学費は、年間37,062ポンド(2016年11月レートで約511万円)。毎年500万円以上の学費を5年間払える経済力さえあれば入学可能かと言うと、そうではありません。
「イートン・リスト・テスト」と呼ばれる一次試験に合格しないと、学校見学にすら行けないのだそう。その後、「コモン・エントランス」という私立中学向け一斉試験で学科と語学をクリアし、さらにはスポーツテストと面接を経て、2年間に渡る厳しい受験競争を勝ち抜いた少年のみが晴れてイートン校生となれるのです。
イギリス階級社会の縮図?イートン校のアクセントと制服
イートン校には「単なるお金持ち」というだけでは入れない伝統と格式があり、それは言葉遣いや制服にも表れています。イギリスには階級や出身地によってさまざまなアクセントがありますが、「貴族が子どもの出生時に願書を提出する」とも言われる、イートン校生ならではの独自のアクセントが存在します。
また、ティーンエイジャーの少年たちが背筋を伸ばして、燕尾服にチョッキ、ピンストライプのズボンの制服を身にまとう姿は、異彩を放っています。驚くべきことに、成績や役割によって違う制服が与えられるのだとか!
最高学年時、成績上位の優秀な「監督生」たちは金ボタンつきのグレーのベストを着用し、規則を破った生徒たちに罰則を課す権限が与えられます。また学費の10%に当たる奨学金を受けている十数人の「王の学徒」たちには、特権として黒いガウンを着用し校内中央部に住むことが許されます。
学生のうちから階級社会の縮図を体感し、「選ばれしもの=リーダー」が育成されていくのです。
堂々とした立ち振る舞いを促す、収容人数400人の本格的な劇場
イートン校の敷地内には、礼拝堂や歴史展示館、乗馬クラブ、ゴルフ場など、一般常識を覆すような施設が備えられていますが、なかでも注目したいのは収容人数400人の本格的な劇場です。
イートン校とシェイクスピアは古くから深い結びつきがあり、演劇指導を担当するのはシェイクスピア劇団で世界一権威があるといわれる「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」。一流の演劇講師に加え、舞台美術家、大道具、衣裳係まで揃っているそうで、とても高校の演劇部などと呼べるレベルではないでしょう。
イギリスでは、人前で堂々と立ち振る舞える、意見を主張できる人格形成を目指すことから演劇に力を入れる学校が多いですが、特にイートン校では若いうちから一流の劇場と演劇指導に触れさせることで、生徒のさらなる自信を培っていくようです。
若手からベテランまで、イートン校出身の個性派俳優が現在ハリウッドで活躍中なのも大いに納得です。
憧れのイートン校で学ぶ?意外な日本人留学生とサマースクール
イギリス社会でも独特の世界として知られ、高嶺の花的存在であるイートン校ですが、意外な日本人留学生が存在しました。徳川家第16代当主となる予定だった徳川家達です。
1940年当時、東京オリンピックの組織委員会の委員長だった家達も、(オリンピックは戦争で中止になったものの)イートン流リーダーシップを活かして活躍したようです。
イギリス名門校の中でも非常に狭き門であるイートン校ですが、実は夏休みの間に日本や中国の高校生を対象に英語のサマースクールを開講しており、過去には学習院などの生徒が参加しています。
机上で英語を詰め込むだけでなく、ウィンザー城、オックスフォード大学、ストーンヘンジ、ロンドン、エディンバラなども訪れ、イギリスならではの文化や生活に触れるという盛りだくさんの3週間コースは、憧れのイートン校キャンパスで学ぶ素晴らしい機会でしょう。
自らの交渉でロシアのプーチン大統領と対面!イートン校生のずば抜けた行動力
最後に、イートン校が話題になったニュースをご紹介しましょう。2016年9月、メイ新首相を差し置いて、イートン校生11人がロシアのプーチン大統領と約1時間の会談を果たしたと報道されました。
BBCによると、学校や父兄はこの交渉には一切ノータッチで、あくまで生徒たちが自主的に10ヶ月もの間2,000通に渡るEメールとメールのやりとりを重ねた結果の対面だそう。気難しいことで知られる一国の大統領をも動かしたその交渉力と行動力は、まさに「イートン校のエリート教育」の賜物と言えるかもしれません。
▼憧れのイギリス名門校!
第2回「キャサリン妃やイギリス前首相夫人も卒業生!ファーストレディーも通ったマルボロ・カレッジ」
【参考】
BBC NEWS/Eton boys given private audience with Vladimir Putin
ETON COLLEGE/English Language and Cultural Course for Japanese Students
madameFIGARO.jp/イギリスで人気の俳優たちに、超名門イートン校出身者が続々!?
collegino/首相19人!学費2500万!イギリスの超エリート男子校”イートン校”とは!?
Social Likers!/ エリートを輩出してきたイギリスの名門「イートン校」。エリートが育たない日本も参考にすべき 驚きの教育システムとは?
YOMIURI ONLINE/帰国したくない生徒続出…英国名門校で学ぶ夏
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