イギリスの天才児はどう作られる?最新のギフテッド&タレンティッド教育とは

イギリスの天才児はどう作られる?最新のギフテッド&タレンティッド教育とは

同年代と比べて特別な才能に恵まれた子どもは「ギフテッド」または「タレンティッド」と呼ばれ、欧米では飛び級や深層学習などの専用教育プログラムが用意されています。こういった教育を歴史的にみると、イギリスではこれまで私立校の方が公立校より優れていました。最近の公立校ではどのような試みがされているのか私立校と比べるとともに、ホームスクールも含めイギリスのギフテッド&タレンティッド教育について紹介します。

優秀者には奨学金も授与する私立校の積極的サポート

有名私立校では勉強やアカデミック面に優れている「ギフテッド」と、スポーツや芸術関係に優れている「タレンティッド」のサポートを積極的に行っています。まず、入学試験のときに、それらの要素は大いに評価の対象となります。

入学試験の結果により、優秀な生徒には初等教育からスカラーシップ(奨学金)が授与されます。学校にもよりますが、中等教育の入試からは美術、音楽、スポーツ、演劇の分野でもテストと面接が個別に行われ、スカラーシップが与えられます。金銭面ではさほど大きくはないものの、入学後に学校主催の海外遠征やコンサート参加など特別な機会を得ることができます。

学校外での活動もサポートされるため、ツアーや大会に参加するときなどは学校を欠席することも可能です。その分、オンラインでの手厚い学習サポートを受けられます。

イギリスではアメリカほど飛び級は認められていません。勉強面で優れているギフテッドの子どもは、高いレベルの義務教育終了テストで良い結果を出すことを目指します。先生によっては授業でその子に特別な課題を用意してくれる場合もあり、課外授業としてロボット、数学、理科などの研究大会や高度な実験に参加する機会を得ることもできます。

選抜公立校は生徒も授業内容も高レベル

数年前まで、一般公立校では学校がギフテッドやタレンティッドと定めた子どもに政府の補助金が出ていましたが、現在は財政面から貧困層の子どもにそのお金が投じられるようになってしまいました。資金面で余裕がない公立校では、現在、ギフテッドやタレンティッドへのスカラーシップサポートはありません。

また、これら公立校では学校外での活動を特別に応援しようとする姿勢もあまり見られません。生徒の出席率が学校の評価に大きく関係してくるという背景があり、学校のなかで才能を生かして欲しいというのが本音のようです。出席率が学校のランクに影響を与えるため、学校を欠席してまでの活動には許可をもらえない場合があります。

小学校でギフテッド並みに優秀と判断された子どもには中等教育の選抜公立校を受験する道もありますが、そのためには特別な試験勉強が必要であり、この時点で諦めてしまう家庭が多いのです。一方、金銭的に余裕のある家庭では子どもに家庭教師をつけたり塾に通わせたりするため、ギフテッドでなくても選抜校の受験に合格してしまうという教育格差が生じているのが現状です。

入試を通過して入学する選抜公立校は、生徒も授業内容もレベルが高いことが特徴です。学校も寄附金などによってある程度の財政を確保している場合が多く、子どもたちは部活動や校外学習の機会を得ることができます。

ごく少数ですが、音楽、舞踊、演劇、スポーツのテストだけのタレンティッド入試枠を設けている選抜公立校もあります。これらの学校は無料で専門的な授業を受けられることもあり、倍率がとても高い人気校になっています。

あえて学校環境を選ばないホームスクールという選択肢も

また、ギフテッドやタレンティッドの子どもには学校に行かないという選択肢もあり、ホームスクールも注目されています。

彼らは内面的にちょっとした問題を抱えていることも多いため、大人の目が届く環境を選ぶというのも家庭学習を選択する理由の1つです。集団行動や対人関係が苦手といった場合は、あえて学校環境を選ばないことも不思議ではなくなっています。学習をきちんと受けているかどうか、自治体による定期的な家庭訪問も行われています。

親同士がコミュニケーションをとったり、専門家からアドバイスを受けられたりなどの体制も整っています。ホームスクール家庭同士が地域でSNS等を通して交流を深め、定期的に催し物や情報交換を積極的に行い、個々のニーズに合った学習方法を試しているようです。全人口の上位2%のIQ(知能指数)を持つ人が入会可能なイギリス生まれの有名な国際グループ「メンサ」をはじめ、複数の非営利団体がさまざまなサポートを提供しています。

まとめ

イギリスでは、特別な才能があったり優秀だったりという子どもは私立校でも公立校でも登録されています。さらに、その子たちが個々に見合った成長を遂げ、成果を上げているかモニタリングする仕組みになっています。ただ、ギフテッド&タレンティッドに関するイギリス政府の方針は変化し続けており、これからまた新たな方針が発表されるかもしれません。

執筆者:かなこ

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事