これからの時代を生きる子に必要なグローバル・リーダーシップとは?
スポーツ、ビジネスなど様々なシーンで必要とされるリーダーシップ。その流れは、教育の分野にも及んでおり、多様な人が繋がるグローバル社会の中で、誰もが発揮できるスキルとして、リーダーシップを育むプログラムを導入する企業や学校も増えてきました。伝統ある立教大学もその一つ。
今回は、ご自身のグローバル企業のキャリアを活かし、10代の子どもから60代の経営者までの活躍支援・人財育成を手がける(株)パスウィーヴを経営し、立教大学でグローバルリーダーシッププログラムをリードする特任准教授 内藤博之さんに、「子育てとグローバルリーダーシップ」についてお話を伺いました。
ユニリーバでグローバルマーケターとして活躍後、 (株)パスウィーヴを創業。 自分ブランドで未来を編む人財育成・活躍支援を、企業・NPO・中高大へ展開 。キャリアマーケティングワークショップを始め 、教育デザイン、ファシリテーションに定評がある。フィリピンの児童養護施設の子ども達を16年間継続支援中。
目次
グローバル社会の中で求められるリーダーシップとは?
世界で働く中で「リーダーシップ」はビジネスの世界だけでなく、生きる力として非常に大切だと気づき 、ビジネスパーソンだけでなく、学生や子どもに向けたリーダーシップ開発にも注力されています。そんな内藤さんが今、考えるリーダーシップとは。
内藤さん:私たちは答えのない問題に日々直面し、多様な人と新たな答えを生み出すことが求められる時代に生きています。その世界で活躍している人にはある共通点がありました。それは、「自分自身をよく理解している」「他者を尊重し、誠実に向き合う」「人の違いを活かし合う」「仲間と楽しみ、とにかく笑う」「新たな価値を生む好奇心」です。
まず、そのような人としての素養を磨くことが大切だと学びました。ただそれを聞くと、「そんなの一部の完璧な人のこと、それは難しい……」と思われるのではないでしょうか。
私も含め、誰もが全てにおいて完璧な素養が揃っている人はいません。そこで大切になるのが「リーダーシップ」です。それは、全ての人が発揮できる、一人ひとり異なる、新たな価値を生む力なのです。
__リーダーシップは、誰でも持っているものなのですか?
内藤さん:はい。誰もがリーダーシップを発揮できます。 一般的に強いリーダーが引っ張るイメージが強いですが、グローバルな環境では、誰もが「世界のどこでも、誰とでも、力を合わせ、新たな価値を創る」ことが求められます。それをグローバルリーダーシップと呼んでいます。
内藤さんが家庭で実施されているリーダーシップ教育とは
__内藤さんは、実際に2歳と4歳のお子さんのパパとして子育てをされていますが、ご家庭で実施されているリーダーシップ教育はありますか?
内藤さん:これは私も日々挑戦なのですが、親の価値観を押しつけず、本人が好奇心に素直に感じ、考え、行動するまで見守ることを大切にしています。そのため、いろんな場面で子どもが自分で考えたり、表現する機会を創ります。
例えば、子どもと旅行する時に「何でも書けるノート」を渡します。使い方は自由です。絵を描いたり、工作をしたり、破って捨てたり。子どもは素材を渡すと自分で勝手に何かを作り始めます。そこが、好奇心に素直に行動し、本人ならではのアウトップットが生まれるチャンスです。
トイストーリー4の映画に出てくるのですが、素材を渡すだけで、子どもは自分でおもちゃを作り、そこに新たな価値が生まれるんです。
__そのノートは、見せてもらうのですか?
内藤さん:予定調和にならないよう、自分から持ってきてくれた時だけ、見るようにしています。見せてこない時は、気にしません。それは、その時に興味がなかったということですから。
__ノートを見せてくれたら、それを褒めたりして、長所を伸ばすのですか?
内藤さん:いえいえ。そうすると親の価値観で褒めてしまうことになるので。「これは何?」など質問をすることで、子どもがアウトプットしたこと、子どもの考えや気持ちに耳を傾けます。子どもと同じ目線になって、ものを見て、一緒に遊んだり、対話することを意識しています。
__子どもと同じ目線ですか。
内藤さん:はい、例えば目の前のものを一緒に見て、笑い合ってふざけます。分からないことがあれば、一緒に調べます。
同じ目線で接すると、異なる親の価値観を押し付けるのではなく、その子の感じ方や考え方など、個性を認めることにもなります。すると、どんな子どもも好奇心が溢れているので、自由な発想でチャレンジし始めます。その関係性と環境を創ることが難しくも、大切だと感じています。
夫婦間の問題も解決!? 家庭で 活かせるリーダーシップとは
__家庭内でもリーダーシップは必要ですか?
内藤さん:子育てをすると必ずぶつかる、“ワンオペ育児”問題。例えば、家族がリーダーシップを発揮すると、「ワンオペだから困る、できない」という捉え方が、「どうやって、一緒に解決しようか?」という発想に変わります。それは子育てという共通の目標に向けて、家族と助け合うという視点です。
その視点を持つと、自然に家族で話し合うことになります。例えば、今大変なのはなんだろう?なんでだろう?といった話し合いです。
そこで、理解が及ばない相手を理解するために、相手と同じことを疑似体験したりします。すると、今までは気づかなかった、相手の主張ポイントがわかり、相手を自然に尊重し始めます。
毎日戦いのような育児でありますが、家族でも互いの違いを知って、生かしあって、新たな答えをアウトプットすることが大切ですよね。綺麗事のように聞こえますが、リーダーシップは答えのない問題にこそ、解決策をもたらしてくれます(笑)。
編集部スタッフは、実際子育て中のママが多いのですが、この内藤さんの言葉に皆納得しました。ワンオペを一人で抱え込む必要はないんですね。
子どもは、好奇心で未来を紡ぐ
__最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
内藤さん:子どもは、好奇心で未来を紡いでいきます。この好奇心とは、心が動くこと、つまり行動の原動力です。
子どもが自分のやりたいことを見つけて、やってみる。失敗も重ねて、自ら学んでいく。多様な人に触れて、ぶつかりながらも、ある答えを出していく。すると、子どものリーダーシップは磨かれていきます。それは答えのない世界の中で、未来を紡いで生きる力です。
グローバルやリーダーシップと聞くと、一見難しく感じますが、 実は誰もが日々触れていることなのです。人の数だけ異なる違いにいかに触れて、尊重して、生かし合っていくか。それがこれからの世界で、誰もが笑顔あふれる豊かな人生を編む力になると思っています。
そのような機会を世界中の一人でも多くの子ども達に創っていくことに、これからもチャレンジします。そして子どもの成長機会をつくる挑戦、共に頑張りましょう。
世界中のビジネスマンとプロジェクトに携わってきた内藤さん。その内藤さんが教えてくださったグローバルリーダーシップ教育とは、実にシンプルなものでした。
家庭の中にもあるリーダーシップ。改めて、家庭の中からリーダーシップを見直し、お子様の教育につなげてみてはいかがでしょうか?
クリエイティブディレクター。GUCCI、CHANELの日本法人勤務を経て独立。現在は、ファッション、ビューティー、子育てなどライフスタイルのコラム執筆、国内外ブランドPRコンサルタントを始め、メディアや企業スタイリスト、企業セミナー講師、PRモデルなどを行う。プライベートでは、ブラジル人の夫とインターナショナルスクールに通う娘の3人暮らし。主な取得資格として、学芸員資格、中学2種美術教育免許状などがある。https://www.karenstyle.jp