教育界の革命児、沼田昌弘先生&日野田直彦先生による「子どものやる気を引き出すコツ&学校変革の起こし方」

教育界の革命児、沼田昌弘先生&日野田直彦先生による「子どものやる気を引き出すコツ&学校変革の起こし方」

先日、東京ビックサイトで行われた第10回教育ITソリューションEXPO。数あるセミナーの中から、今回は「世界一のクラス」を作り上げる東京学芸大学附属世田谷小学校 沼田昌弘先生、さらに「箕面高校の奇跡」を起こした武蔵野大学中学校・高等学校学校長である日野田直彦先生の講演の模様をお伝えします。会場は全国から集まった教育関係者で超満員!どちらも独自のメソッドで教育界をけん引するまさに革命児。これからの教育の必要なヒントが満載です!

プロフィール
沼田昌弘先生(東京学芸大学附属世田谷小学校 教諭)
東京学芸大学教育学部卒業後。専門はモチベーションコントロールやコーチング論、リーダーシップ論。斬新でユニークな授業はアクティブ・ラーニングの先駆けと言われ、現役の小学校教諭でありながら、ぬまっちメソッドを掲げ講演やメディアで大活躍。著書『家でできる「自信が持てる子」の育て方―――“自分からつい勉強する”ようになる「あの手」』(あさ出版)。ツイッター@88834

日野田直彦先生(武蔵野大学中学校・高等学校 学校長)
同志社大学出身の帰国子女。2008年には奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校の立ち上げに関わり、2014年には大阪府の校長公募制度に応募、公立学校最年少(36歳)で府立箕面高等学校校長に就任。偏差値50、地域4番手の公立高校が、わずか4年で海外トップ大学へ多数の進学者を出す進学校へと導いた。2018年度より現職。著書『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』(IBCパブリッシング)
ツイッター@naohiko_hinoda

まずは、沼田先生の講演からスタート。沼田先生は、自分のクラスを常に「世界一だ」と言います。「根拠はないけれど、僕がそう思って言っていたら世界一になる」と。そんな自称世界一のクラスは確かに面白い取り組みがたくさんあり、実際に教え子たちは各方面で活躍しているという。そんなやる気をONにするぬまっち先生の教育法とは?

生徒の意欲を引き出すための必殺技はありません!

講演で一番聞かれるのが「子どもたちのやる気を引き出すコツ」。でも、「答えはこれです」なんていう一撃必殺の技はありません。ただ言えるのは、やる気(意欲)はコツコツためていくものだということ。僕は、生徒への日々の何気ない声かけや、クラス全員の日課にしている先生との交換日記(親には見せない!がルール)で、信頼関係を築いていきます。コップに入った水のように、常に意欲満タンな状態を作っておくと、何かしたときに意欲があふれ出すんです。

とはいえ、経験上得たコツもあります。たとえば、有名な「マズローの欲求5段階解説」。心理学者アブラハム・マズローが人間の欲求を5段階に理論化したもので、第一段階が「生理的欲求」、第二段階が「安全欲求」、第三段階が「社会的欲求」、第四段階が「尊厳欲求」、最後が「自己実現欲求」。何が言いたいかというと、一番の土台となるのが「生理的欲求」なんです。眠い、お腹が空いた…というのがこれですね。ですから、子どもたちは4時間目(お腹が空いている)と5時間目(満腹で眠い)は集中するのは無理なんです(笑)。ですから僕は1~3時間目を最も集中できる時間として、授業を割りふっています。

褒めるよりも「見る」が大事!

マズローの4段階欲求である「承認欲求」。認めて褒めてほしいという気持ちですね。でも、生徒全員を平等に承認するのは正直無理です。褒めることって実は難しくて、どこか芝居っぽくなりがちで生徒たちもそれを見抜きます。そこで僕は考えました。簡単にできる1番は「見る」、2番は「気づく」、3番は「認める」、4番が「褒める」、最上級は「喜ぶこと」(それを別の人から聞くと効果絶大)だと。

授業中に普段あまり手を上げない2名の子が同時に手を上げたら、片方の子には目で「見てるよ、次指すからね!」と合図をおくる。これが「見る」、「気づく」ですね。最上級の「喜ぶ」とは、あるとき出張から帰ると僕の机がキレイになっていて、本当に嬉しかったので「君たちすごいな!」と喜んだら、次から毎回片付けてくれるようになりました(笑)。

「アナザーゴール」を設けると自然に目標達成できる!

僕はクラスでよく「アナザーゴール」を設けます。ゴールの前のもうひとつのゴールを提示するんです。たとえば、掃除がすごく遅くかったので、「ダンシング掃除」を取り入れました。音楽をかけてサビの部分では、全力でダンスして曲の合間に掃除をするのですが、結果的にその方が効率よく掃除ができた。

あとは、「給食を空っぽにすること」にクラスで意欲を燃やしていたら、一年後僕のクラスの子たちだけ圧倒的に背が伸びて大きくなっていたんです。

別のゴールを設けてあげると、結果的にいろんなことが達成できるということですね。大切なのは、楽しんでゲーム化すること、課題報酬に制限を設けること。どう制限をかけるかはポイントです。

ちゃんときちんと撲滅委員会!

学校のルールにもよくある「ちゃんと〇〇する」「きちんと〇〇する」。でもこれって基準があいまいで分かりにくいですよね。たとえば、今の学校には敷地内に池があって、休み時間に行くと楽しくてなかなか時間通りに戻ってこれない。どうすれば“池の魔力”に勝てるかをクラスで話し合った結果、「自分の意識+みんなで助け合う+キャプテンを作る」という意見が出て、それを実行したら全員が時間通りに帰ってくるようになりました。

また、「どうしてドアはあけっぱなしになるの?」を話し合ったときに「次の人が通るからそのままにしておく」という声が多かったので、結論として「開けなくても閉める」を合言葉にしたら、常にドアが閉まった状態になりました。

やらされると任されるは実は同じこと。意欲が違うだけでこんなに結果が違うんです。

これからも、子どもたちが失敗できる環境(笑っていい、話していい、意見を言っていい)を大事にしていきたいですね。

続いては日野田先生による学校変革の起こし方を。

ハーバード大学の先生に「日本の会社と学校は軍隊みたいだ」と言われた

僕は、幼少期に海外で暮らしていて、帰国後もインターナショナルな学校に通っていたため、海外の人たちとの交流が今も多いのですが、先日、友人であるハーバード大学の先生に「日本の学校と会社は軍隊みたいだ」と言われました。

学校は何のために存在しているのでしょうか。詰め込み式で均一な教育システムは、戦後の高度成長時期の日本にはとても合っていた。でも今は違う。

今10歳の子どもたちが40歳になったときは、今ある多くの仕事はなくなるでしょう。日本は変えるのが苦手だったけれど、今こそ変えなきゃいけないときなんです。

20世紀は言われた通りにできるかの「フィックスマインドセット(他人からの評価や失敗への恐れによる考え方を基にした枠組み)」が評価の対象だった。でも、21世紀は「グロースマインドセット(自分の成長は経験や努力によって、向上できるという考え方を基にした枠組み)」が問われる時代。先生や社長よりも若い人に力があるんです!

クラスはチームであるという考え

海外では授業中に手を上げないとクラスに貢献していないとみなされ、いくらテストの点が100点でも低い評価になります(僕の実体験)。これはクラスがチームであり、生徒と先生の関係性がよくなければクラスは成り立たないという考えがあるためです。

実際に、ハーバード大学の入試ではこんな問題が出されます。

「あなたはどういう存在として覚えられたいですか?」

「あなたはどうやって世界に貢献しますか?」

あなたのお子さんは答えられますか?

先生も生徒も大事なのは、失敗しまくること!

日本の子どもの数は減少していますから、学校も減らさないといけません。経営がピンチなところも正直多いです。僕はできないと決めつけるのが嫌いです。ですから、箕面高校にしても、現職の武蔵野大学中学校にしても、課題が多い方が改革しがいがあるし、面白そう!と思って取り組んできました。その結果、偏差値50、地域4番手の公立箕面高校が、わずか4年で海外トップ大学へ多数の進学者を出す進学校になりました。

最近の日本の子どもたちを見ていて思うのが、失敗をビビる子たちが本当に多いですね。加えて先生も評価が下がるから失敗を恐れる。これでは悪循環です。大事なのは、大人も子どもも失敗しまくること、そして周りがそれを応援すること。そんな環境づくりが理想です。トライアンドエラーの精神で、どんどんわくわくが広がる学校を作っていけたらなと思います。

いかがでしたか。子どもファーストな熱い志と自分を信じて突き進むお二人の先生の考え方は、親として心に留めておきたいなと感じました。お二人の活躍にぜひこれからも注目していきたいですね。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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