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東大クイズ王QuizKnock伊沢拓司さんに聞く!「幼児期にクイズ脳を鍛えるコツ」

東大クイズ王QuizKnock伊沢拓司さんに聞く!「幼児期にクイズ脳を鍛えるコツ」

東大クイズ王としてテレビやYouTubeなど多方面で活躍され、子どもたちからも大人気な伊沢拓司さん。小学校受験も経験された幼少期の過ごし方、サッカーに夢中だった暁星小学校時代、1日13時間も没頭した開成中学でのクイズとの出会い、さらにクイズと受験勉強の共通点や幼少期のクイズ脳の鍛え方までをお聞きしました。伊沢さんから子どもたちへのメッセージも必見です!


伊沢拓司さん
クイズプレーヤー、起業家、タレント。開成高校在学中に全国高校生クイズ選手権を連覇。その後、東大生クイズ王としてテレビ番組など多数のメディアで活躍。現在は、クイズを題材としたウェブメディア『QuizKnock』を運営する株式会社QuizKnock
https://portal.quizknock.com)代表として「楽しいから始まる学び」を提案している。新刊『クイズ思考の解体』(朝日新聞出版)など著書も多数。
YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/quizknock
Twitter(https://twitter.com/quizknock/

 

サッカーに打ち込んでいた暁星小学校時代

__伊沢さんの幼少期はどんなお子さんでしたか?

両親が共働きで朝7時から夜20時まで保育園に行っていたので、習い事をたくさんしていたような子ども時代ではありません。家の隣が川だったので、ザリガニ釣りをしたり、友達と野球をして遊んでいました。絵本の読み聞かせはしてもらっていましたが、両親も忙しかったので、当時好きだった鉄道のビデオを借りてよく見ていましたね。幼児教室には年長から通いましたが、受験を決意したのは夏以降のギリギリでした。

__暁星小学校ではどんなことに打ち込んでいましたか?

小学生の頃は特にクイズに興味もなく、暁星小学校の伝統であるサッカー一色でしたね。

勉強に関しては、両親の影響で本や国語が好きになって、織田信長の歴史漫画をきっかけに歴史に興味をもったりと、楽しい所から始めて自信をつけていったように思います。一方で、算数や理科に触れる機会が少なく九九に苦戦した体験などもあいまって強い苦手意識を持っていました。苦手ではなくなったこともあったけど、好き嫌いでいえば今も好きとは言い切れない面があります。数学的思考は好きですが。

1日13時間! クイズ勉強に明け暮れた開成中高時代

__開成中高でのクイズとの出会いやハマったきっかけを教えてください

開成中学で偶然入ったクイズ研究部がクイズとの出会いです。入部の理由はフットサル部の練習についていけず、年度途中から入れる部活が他になかったから。でもクイズ研究部に入っていなかったら今の僕はないので、まさに一生を左右する出会いでした。

クイズにハマった理由は、当時の開成中高のクイズ研究部が弱小だったので、先輩たちにも勝てたりしたこと。もし今のような(クイズが強い)開成だったら、やめていたかもしれません……。

__中学ではクイズ勉強を1日13時間していたそうですが、クイズ勉強ってどんなことをするのですか?

自分が参加したクイズの録音を聞き返したり、他の人が作ったクイズ問題をひたすら解いたり。早押しクイズ対策では、問題のどこで押せば勝てるかを探るために「問題文のここで押せる」という最短箇所に斜線を引いたオリジナル問題集を作ったり、苦手問題をエクセルにまとめてひたすら解いたりしていました。クイズは練習量がモノを言うので、強くなりたい一心で、移動中も授業中も(笑)ひたすらやっていましたね。

当時の開成中クイズ研究会では、顧問の先生はいましたが、基本は自学自習です。普段の活動はほとんどが早押しクイズなので座学が大切になります。方法論はインターネットで調べたり先輩に聞きながら、自分で勉強していました。この勉強の仕方は、後の受験勉強にも役立ったかもしれませんね。

苦手な分野は「自分の成長を楽しむこと」に切り替えて勉強

__クイズに向いている人とはどんな人ですか?

好奇心が強く、いろんなことを面白がれる人。クイズの範囲はかなり広いので、知らないジャンルについても興味を持てるかは大事です。僕の場合、興味がないことも「クイズに出るな」と思えば覚えられましたが、苦手な算数だけは好きになれませんでした。そんなときは、「前できなかったことができた」とか自分の成長を楽しむことに切り替えて勉強していました。 結果として、好きではないけれどできる、という状態にはなれましたから、あくまで好奇心はひとつの資質でしかない。できる自分であろうとする自尊心のほうが大切かもしれません。

__伊沢さんがクイズを考える際にヒントにしていることはありますか?

クイズはある程度ロジカルなものなので、多くはひらめきで解くものではなく(全員が初見の問題を除く)、知識の量と経験がモノを言います。ゆえに、クイズを解くための一番のヒントは、過去のクイズだと言えます。問題を解くためには、パターンをどれだけ習得するかがカギなので、最悪答えを知らなくてもこれまでの出題例に当てはめることで推測できたりします。その点では、大学受験に近いかもしれませんね。

__難しい問題を解く際はどのように考えていますか?

僕の場合、クイズというゲーム全体の目的は勝つことなので、絶対無理な問題は諦めます。ただしロケ番組などではそうもいかないので、一見解けなそうな問題はいかにしてロジカルな筋道を見せるか、というところをテーマにしています。ヒントを引き出したり、自分の中にある知識に引き寄せたりしながら、筋道を見せることを正解以上に重視する、という感じですね。

勉強もクイズも、方向性を決めてからの努力が大事!

__伊沢さんにとってクイズの魅力とは?

僕にとってクイズは他人と競い合って勝つことが目的です。クイズはどれだけ努力したか が如実に出るゲームで、努力というのは量×質。単に知っている量でも、かけた時間でもなく、適切な方向性のもとで必要量努力する必要があります。これはなにもクイズだけではなく、たとえば謎解きと呼ばれるジャンルにも得意と不得意があるのは、その人が持っている「ひらめく才能」の差というより、 謎解きに適した知識の入れ方になっているかどうか。12個のアルファベットが並んでいたら「12の月かな?星座占いかな?アルファベットということは頭文字かな?」みたいな、どういった知識がどういう形で問われやすいか、ということが求められるわけです。地頭はそこまで関係がない。目的意識を持って正当な努力をすると報われる、という要素が、自分にとって魅力です。

__勉強とクイズの共通点はありますか? 

暗記の思考法という意味では共通点はあるかもしれませんね。僕は、覚える知識を“マクロ”と“ミクロ”に分けして「使う形」別で覚えるようにしています。たとえば、漢字や英単語は読み方だけではなく、正しい書き順や綴りまで覚えていないとテストでは点が取れませんよね。これがミクロ暗記。対してマクロ暗記は大まかな流れを把握し、要点を押さえるような題材になります。プレゼンの流れとかが当てはまりますね。世の中の様々な知識を、ミクロ暗記的に整理することがクイズにおける勝利への近道です。どちらがいい悪いではなくて、そうした目的意識を明確化して、「この知識は使う時にどういう形で使うだろうか」という考え方があると強い、というのが共通点ですね。本当は、知識を入れるときの形なんかは拘る必要もないんですけど、あくまで結果を最大化するなら、という前提で、です。

__こちら、幼稚園児が解く小学校入試の問題なのですが、ご覧になっていかがですか? 

僕も幼児教室に通っていたので、懐かしいです。改めて見ると、推理力や情報整理力を見る力が問われますね。

小学校入試の問題も「左右反転だな」「○と×が対応しているな」など法則性、型がありますから、そうしたものを集め、レパートリーとして持つ力が求められますよね。「ひらめき」ではなくて「習熟量」なあたりが、先程のひらめき問題についての構造と似ています。とはいえ、それを小さいこどもが意識的に整理することは難しいですから、大人がそういう意識で問題を眺め、再整理できたら効率的な学習につながるかもしれませんね。


有名小入試、項目別問題集『ステップナビ』応用編 推理・思考(伸芽会)より。

リミットをつけず好きな分野や趣味を極めている子は強い!

__クイズを解くのと作るのはどちらが好きですか?

クイズの問題を作ると解くのは別の行為なんです。問題を解くのはクイズの型や記憶の中から答えを見つける作業で、問題を作るのはロジックに沿って、相手が解けるかどうか、面白いかどうかを考えること。 両者は比較しうるものではないのですが、クイズにまつわる諸々の中では、僕はクイズで勝つことが好きです。

子どもたちを見ていて、趣味や何か好きなことを極めている子はクイズの問題を出すのが上手だなと感じます。 どこが面白いのかを主体的に判断し、抽出することができる訳で、それを人に共有する喜びを知っているから、クイズを通した知識の紹介に前向きなのかなと。学校のカリキュラムのリミットをつけず、好きな分野を楽しく勉強している子は強いです。もちろん親御さんの与える環境もあると思いますが、そうした知に突き進む姿勢がなにかに阻まれないことが大切かもしれませんね。

__学校でもクイズを取り入れているところも増えているようですが

クイズを学校で扱う際は使い方に少し注意が必要です。授業で集中力が落ちてきたときなどは、クイズは役に立つと思いますが、クイズは基本的な知識がないと楽しめないものなので、大人数の中で知識の差があると、できない子は置いて行かれて傷つくフォーマットになりうる可能性があります。もちろん積極性を磨くとか、問いかけて能動性を高めるとか様々なメリットもあるので、どうしても使い方次第だな、ということにはなるんですけど、「クイズならオールオーケー」みたいなことではないなと思っています。むしろ、他人との比較が生じない家庭での会話に用いるほうがいいかもしれないですね。

幼児は日本語力が問われる「なぞなぞ」でクイズの感性を磨いて

__「クイズ」と「なぞなぞ」はどう違うのでしょうか?

クイズは思考力が問われますが、なぞなぞは日本語言葉遊びなので、言葉を見直す力が問われるもの。似ているようで実は別物なんです。たとえば「りんごとみかん、ぶどうが車に乗っていました。曲がり角で落ちたものは何でしょう? 答え:スピード」という問題では、「落ちた」という動詞に注目する力があるかがポイント。なぞなぞでは同音異義語や言葉の言い換えを問うものが多いので、より豊かな日本語力が磨かれます。語彙力プラスアルファで、日本語的な「当たり前」を一回外して、「なぞなぞならばこの語の使い方に着目するのだろう」みたいな目線も必要になるので、大人でも苦手だったりするわけですね。親子でなぞなぞをする際は、答えを言った後に「落ちるってポトンと落ちる以外にスピードが遅くなるという意味もあるんだね」と構造まで振り返って解説を足すといいと思います。

__伊沢さんがこれから挑戦したいことを教えてください

“知的でフレンドリーなお兄さん”としてQuizKnockを大きくしていきたいです。QuizKnockの「楽しいから始まる学び」という理念をもっともっと広げて、生活の中に「これもQuizKnockなんだ!」と思われるような活動ができたらと思っています。6年目のQuizKnockをぜひ楽しみにしてください!

__クイズが好きな子どもたち、親御さんにそれぞれメッセージをお願いします。

(子どもたちへ)
今面白いと思うことをとことん突き進んでください。ゲームでも習い事でも、君たちが好きなことを「どうやったらもっと上手くなるんだろう?」と突き詰めていってください。その一生懸命努力した時間が、将来きっと何かの役に立つと僕は信じています。

(親御さんへ)
僕は親になったことがないので、おこがましい部分はありますが、一つ言えるのは、今のお子さんたちを取り巻く社会は、家以外の影響がとても大きいということです。
スマホもあるし、デジタルネイティブだし、知識の入り口や選択肢は僕の子どもの頃と比べてもはるかに増えています。学校や友達との遊びはもちろん、電車やバスでふと見た広告もそう。そうした家庭以外の社会とのつながりが人生を大きく占めています。そんな外から得た学びを大事にしながら、お子さんが外から持ち帰った「なぜ」を見つけて、伸ばしてあげるサポートをされてみるといいと思います。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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