アメリカの祝日6月19日「ジューンティーンス」とは?子どもとSDGsの大切さを考える

アメリカの祝日6月19日「ジューンティーンス」とは?子どもとSDGsの大切さを考える

2021年にアメリカで祝日に制定された6月19日の「ジューンティーンス」は、アメリカの奴隷解放を祝う日です。「SDGs」17の目標のうち、10番目の目標である「人や国の不平等をなくそう」に合致するもので、持続可能な未来を築くことをお子さんとともに考えるのにふさわしい祝日といえるでしょう。ジューンティーンスがどのような経緯で祝日になったのか、アメリカではどのように祝うのかについて紹介します。

アメリカ全土で奴隷制が廃止された日

奴隷制の存続が争点のひとつであった南北戦争が1861年に始まり、その最中の1863年1月1日にリンカーン大統領が「奴隷解放宣言」に署名します。しかし、その後も南部の多くの州では奴隷制が続きました。

アメリカのすべての地域で奴隷制が廃止されたのは、1865年6月19日のこと。この日、テキサス州ガルベストンで奴隷解放宣言の発効が布告され、奴隷制が残っていた最後の州テキサスでも廃止されたのです。この歴史的な日を称え、June Nineteens(6月19日)を縮めてジューンティーンスと呼ぶようになりました。

時代が進み、1980年にテキサス州でジューンティーンスが州の祝日に制定されたのを皮切りに、この日を祝日にする州が増加。2010年代には「ブラック・ライブズ・マター・ムーブメント」が起き、当時89歳の女性活動家オパール・リーがジューンティーンスの祝日制定を求め、テキサス州からワシントンD.C.まで歩いて話題を集めました。

このようにしてジューンティーンスをアメリカの祝日にしようという機運が高まり、ついに2021年、バイデン大統領が「ジューンティーンス独立記念日法案」に署名。ジューンティーンスが正式にアメリカの祝日に制定されたのです。

伝統的な祝い方に加えフェスティバルも開催

アフリカ系アメリカ人コミュニティーの一部では、長い間ジューンティーンスが祝われてきました。家庭ではバーベキューが行われ、バーベキューリブやスイカ、レッドベルベットケーキ、ストロベリーソーダなど、ジューンティーンスのテーマカラーである赤い食べ物や飲み物が並びます。最初は教会でのピクニックや家族の集まりがジューンティーンスのお祝いの中心でしたが、そのうちパレードやコンサートも行われるようになっていきました。

筆者が住むオレゴン州は黒人の人口が少なく、ジューンティーンスはあまり知られていませんでしたが、大きな街ではフェスティバルが開催されています。オレゴン州最大のフェスティバルは、ポートランドで開かれる「ジューンティーンス・オレゴン」です。

広い公園で数日間にわたって開かれるこのフェスティバルでは、パレードや黒人ミュージシャンによるコンサートが行われ、たくさんの店が出店します。パレードには近隣の学校のマーチングバンドやダンスチームなど、さまざまなグループが参加。子どもに人気の消防車やクラシックカーなどがゆっくり走る様子も見られ、沿道の人たちは大きな拍手や歓声を浴びせます。

出店する店舗は黒人オーナーが多く、コーンドッグやピザなどの食べ物やさまざまな雑貨が販売されます。パレードやコンサートを楽しんだり、飲食物やグッズを買ったり、キッズエリアで子どもを遊ばせたりと、フェスティバルの楽しみ方は人それぞれ。フェスティバルを見ながら、広い公園内でのんびりと犬を散歩させている人もいます。
伝統的な祝い方に加えフェスティバルも開催

大手企業の間で急速に広がる祝日の取り組みや支援

6月19日はすでに学校が夏休みに入っているため、筆者の近隣の学校ではジューンティーンスを学校行事として祝うことはしていないようです。ただ高校生になると、人種や倫理などのテーマでジューンティーンスについて学ぶ機会が設けられています。

企業の間でも、ジューンティーンスを支持する取り組みが急速に広がっています。この日、政府機関の従業員は有給休暇を付与されますが、民間企業の場合は企業の判断に任されます。しかし、ナイキやマスターカード、ターゲット・コーポレーションのように、ジューンティーンスを社員の休暇にする大手企業が着実に増えています。

また、企業による黒人コミュニティーの支援も行われています。Amazonはブラック・ビジネス・アクセラレーター(BBA)を立ち上げ、助成金やビジネス教育、メンターシップなどを提供することで黒人企業家をサポート。Googleは人々がGoogle検索を行う際に黒人経営の企業を選択できるように、加盟店のビジネスプロフィールに「Brack-ownd(黒人経営)」の項目を追加しました。
大手企業の間で急速に広がる祝日の取り組みや支援

親子でSDGsについて考えるきっかけに

アメリカでは5~6歳という幼い頃から学校の授業として人種差別問題を積極的に扱い、子どもたちが発言や意見交換をしています。

日本人にとって奴隷制や人種問題はかなり難しいテーマですが、ジューンティーンスは子どもたちがSDGsの重要性を理解するきっかけになるかもしれません。アメリカの新たな祝日について親子で話し合い、持続可能な未来を築くことの大切さを一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

執筆/渡邉真紀

<参照URL>
https://www.history.com/news/slavery-profitable-southern-economy
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-57515192
https://robertsmith.com/amazon-launches-the-black-business-accelerator-to-empower-black-entrepreneurs/
https://blog.google/outreach-initiatives/small-business/supporting-black-business-owners/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事