「プログラミングやコーチング、エンタメ授業も!」これからのオンライン教育を考える~角川ドワンゴ学園 N中等部~
コロナ禍でオンライン教育の普及が進む今、先生も生徒も保護者もさまざまな課題を抱えているのが現状ではないでしょうか。そこで、コロナ以前からオンラインの学びに取り組む角川ドワンゴ学園N中等部(https://n-jr.jp/)の先生方にお話を伺いました。
小中学生がオンラインで学ぶためのヒントはもちろん、中学受験を視野に入れた親御さんが中学校を選ぶ際に知っておきたい「これからの子どもたちに必要な学び」も必見です!
※N中等部は学校教育法第一条に定める中学校ではなく、教育機会確保法の趣旨に基づいたスクールで、ご自身の中学校に在籍したまま通学していただきます。
ご参加いただいた先生
熊谷桃子さん(N中等部 ネットコース運営部 部長)
オリジナルアプリN予備校のコンテンツ編集者として入社。その後、N高等学校における大学受験オンライン指導の「ネット特進専攻」を立ち上げ。N中等部ネットコースには、開設準備から現在に至るまで責任者として携わる。(一財)生涯学習開発財団認定マスターコーチ資格を持つ。
為野圭祐さん(N中等部 通学コース運営部 部長)
企画部に全国の地方自治体や事業主連携した職業体験の企画・運営担当として入社その後、心理学、認知科学、ワークショップデザインなどの分野の大学教授と連携し、非認知スキルを含む能力開発ワークショップを企画・開発。N中等部では企画段階、開設準備から責任者として携わり、現職に至る。
目次
飛行機で通う生徒も! 2020年4月から待望のN中等部ネットコース開設
__なぜN中等部を作ろうと思ったのでしょうか?
2016年4月にN高等学校を設立したのですが、利用する生徒や親御さんから「もっと早く通いたかった」と言う声があり、N中等部を作ることになりました。昨年4月に通学コースを開設したところ、全国から多くのお問い合わせをいただき、中には飛行機で通うお子さんも出てきてたことから、2020年4月からネットコースを開設し、現在は合わせて817名が在籍しています。
__どんな子が通っているのでしょうか?
為野さん_N中等部通学コースは、週1、3、5と通う日数を決められます。学校教育法第1条に定められる中学校ではなく民間のスクールという位置づけです。実践的な教育を施すという目的で「プログレッシブ・スクール」と称しています。ネットコースは昼と夕方の2部制で、所属する中学にも毎日通い、さらにアフタースクールとしてN中等部の夕方の部に通う生徒もいます。
熊谷さん_N中等部を選んだ理由は「大好きなプログラミングをもっと本格的に学びたい」「自分のペースでコツコツ勉強を進めたい」「学校の友達と気が合わない」など、本当にさまざまです。
為野さん_通学コースの入学には簡単なペーパーテストと面談がありますが、もっとも大事にしていることは「その子が自発的に学びたいかどうか」です。入学してから、受け身の姿勢ではなく積極的に学んでいける子に来てほしいと思っています。
21世紀型スキルを養うプログラムを独自で開発!
__実際にN中等部ではどんなことが学べるの?
為野さん_自分を知り、思考力を高め、チームで協働し、専門性を培う教育を提供しています。専門性はプログラミングを中心に多様なコンテンツを用意しています。また、感情、思考、協働は、WHOのライフスキルとACT 21の21世紀型スキルをベースに、学園オリジナルの教材を大学教授など専門家と協力し、21世紀型スキルコンテンツを開発しています。
そして、中学生年代に不可欠な基礎学力の向上は欠かせません。自分のペースで学び、基礎学力が身に付くよう、運営しております。N中等部通学コース・ネットコース問わず、以下のカリキュラムで学力やスキルを育んでいます。
基礎学習
国数英の基礎科目はオリジナルカリキュラムで自分のペースで学んでいく。大学受験を熟知した講師によるN予備校というアプリを使い、分からない箇所はすぐに質問もできる。
プログラミング
ICTの基礎、情報リテラシーからアプリ制作まで、ドワンゴのトップエンジニアから実践的なプログラミングを学び、基礎から着実に高めていける。
コーチング
自分を知り自発的に行動するために、ビデオチャットで担任と1対1のコーチングを用いた個別面談を定期的に行う。各自小さな目標を設定し計画を一緒に立て、ステップアップしていくのが目的。
エンタテインメント授業
角川の文芸小説創作、ゲームシナリオ、アニメなど、自由選択で多彩なプログラムも受けることができる。
交流コンテンツ
N高でも使用しているSlackを使って、ホームルームはもちろん、アニメやゲームなど趣味のチャンネルの中で共通の趣味を持つ仲間と交流できる。
__実際に通う生徒さんの声は?
為野さん_保護者様からは、N中等部に通ってから「表情が変わりイキイキしている」「学んだことを話してくれるようになった」といった声をいただいています。
生徒たちからは、
・オンラインでもリアルタイムで先生とつながれたり、全国の仲間と趣味のツールで話ができたりするのもいい
・コーチングを受けるようになって、相手の気持ちを考えて発信できるようになった
・友達と話すのが苦手だったけれどコミュニケーション能力が上がった気がする
といった感想も。
私たち教職員は、生徒に何かを教えるのではなく、生徒の話を聞いてその子の好きなことを見つけ、目標を達成できるようなコンテンツをマッチングさせる“ファシリテーター役”に徹するよう心掛けています。
中学生にはリアルとネット相互の学びが重要!
__N中等部のカリキュラムでこだわったことは?
為野さん_N中等部では「社会とどうつながっていくか」を大事にしています。「21世紀型スキル」のカリキュラム作成にあたっては、社会学や臨床心理、医学博士など各分野の第一人者にアドバイスいただきました。また、プログラミングのカリキュラム作成にあたって第一線で活躍するドワンゴのプログラマーたちに話を聞いたところ、プログラマーにとって一番必要な力は国語力(論理的思考)だと言うことが分かりました。いくら素晴らしい能力があるプログラマーでも、国語力が欠如していれば社会に貢献できませんし、クライアントの意向をくみ取れなければ仕事になりません。
熊谷さん_もちろんネット上でのコミュニケーションスキルも必要ですが、それと同じくらい中学生には、リアルな実践の学びの場を大事にしてほしいと考えました。N高等学校の課外活動として、提供している職業体験の一部にもN中等部の生徒も参加できます。2019年は長野県小布施町での職業体験、都内での長崎県五島市のロゴ作りワークショップにN高等学校の先輩と共に、N中等部の生徒も参加しました。他にも北海道での酪農体験や山口県のイカ釣り漁業、三重県の船大工など、さまざまなリアルの体験を企画しています。リアルとネットと相互の学びの重要性は、N中等部が大事にしているポイントです。
オンライン授業を成功させる3つのポイント!
__オンライン授業をする際に大事にしていることを教えてください
熊谷さん_コロナの影響もあり、通学コースでも今年の2月からオンラインでの授業に切り替えています。そこで私たちが学んだ3つのポイントがあります。
その1は、ネット環境や安心して学べる場所の確保といった安心安全な場づくり。いきなりオンラインで授業をするのではなく、最初はクイズやゲームを行いながら、Zoomなどのツールに慣れ、先生と生徒の信頼関係を築き、クラスの雰囲気を作っていきます。
その2は、チャットを使って意見を発信できるようになること。オンラインでは生徒の反応が見えませんから、ともすれば受け身な授業になってしまいがちなので、「おもしろい」「ちょっとわからない」「きこえなかった」「できた」など、自分の意見を発信することで授業に参加している意識になります。私たち教職員はその発信をすべて受け止めていけるよう最大限努力しています。
その3は、「はじまりの会」「終わりの会」の挨拶で気持ちを切り替えること。オンラインだとどうしても気持ちを切り替えることが難しいので、メリハリをつけることはとても大事です。ここでもチャットやスタンプなどで主体的にアクションしてもらうことを意識します。
__保護者が注意すべきことは何でしょう?
熊谷さん_まずはネット環境や学びの環境を整えてあげること。初めは一緒に調べたりしながらZoomなどのツールに慣れていきましょう。どんなことをしているか気になってしまうと思いますが、親御さんに聞かれていると自分の意見を言いにくくなってしまいますから、できれば別室でイヤフォンをして集中できる環境を作ってあげるといいですね。
為野さん_私たちは生徒に「保護者様にその日学んだことを話す」といった課題を出すことがあるのですが、その際はあれこれ質問せずに耳を傾ける(傾聴する)ようお願いしています。自分は何が好きかをきちんと言語化できなくても、聞いてもらうことで明確になることがあります。
好きやワクワクする気持ちを大切にしてあげて!
__最後に、小学生のお子さんがいる親御さんにメッセージをお願いします!
熊谷さん_中学生は、自分の中の好きの芽を育てていく時期。そこを大切にしてほしいです。今後さらに不可欠となるであろうオンラインの学びに関しては、「発信する力」がカギとなります。そのためには小さい時から「考えたことを自分の言葉で言えること」、「人に伝えられること」がとても重要だと思います。
為野さん_勉強でも運動でも趣味でも、お子さんの好きやワクワクする気持ちを大切にしてあげてください。それがきっと、将来自分の武器になり、「こうなりたい」という夢につながるはずです。
N中等部は年4回(4月、7月、10月、1月)入学するチャンスがあります。気になった方はぜひ資料請求を(https://n-jr.jp/)。秋には一般の人も入れる文化祭も開催予定とのこと。
学校での取り組みはnote(https://note.nnn.ed.jp/)にも詳しく記載されています。チェックしてみてください!