選択肢がありすぎて逆に困る!?ニューヨークシティの初等教育プログラム(前編)
幼稚園でのPTAミーティング。親たちが顔を合わせると決まってでてくるトピックが「どこの学校に行かせるの?」。
Kindergarten(5歳、日本でいう「年長」)から始まるニューヨークの初等教育では、地元の公立校、私立校のほかにも、公立と同じように無償で通える個性豊かなプログラムが数多く存在します。
日本の学校よりも遥かに学校の選択肢が多いニューヨークでの学校選びとは?2回に分けて公立のプログラムにスポットを当ててレポートしたいと思います!
目次
公立と私立の良いところどり?チャータースクール
チャータースクールとは、1990年代から増えつつある新しい学校の形。人種や所得階層の住み分けによる学区格差を解消するために、親や教員、地域団体が州や学区の認可を受けて設立する初等中等学校で、公費によって運営されています。
ニューヨークシティのチャータースクールは、公立校が補えない部分をチャータースクールで補う形で共存しています。住んでいるところにいい公立校がない場合は、チャータースクールに人気が殺到することになります。
New York City Charter Schoolウェブサイトによると、現在ニューヨークでは216校のチャータースクールが存在し、在校生は106,600 人。ニューヨークシティの子どもたちの約10人に1人がチャータースクールに通っているという統計がでています。
各校それぞれ特色を出したプログラムを提供し生徒を集めるチャータースクール。どのような学校があるのでしょうか?
① ニューヨークで一番有名な「Success Academy Charter School」
「Yale 2026」 これはSuccess Academy内のクラス名の一例です。主に黒人やヒスパニック系の貧困層が多く住む地域に展開している同校では、大学にいくことを生徒の頭のなかに早くから根付けさせることを目的に、担任の先生が卒業した大学名と生徒たちが大学を卒業する年をクラスの名前にしています。
アメリカの教育事情を描いたドキュメンタリー映画「Waiting for “Superman”」の題材にもなったこの学校は、現在マンハッタン、ブロンクス、クイーンズ、ブルックリンで41校経営するフランチャイズスクールです。
生徒全員のクイズの点数が廊下に貼り出されるなど、生徒間の競争を煽るような少々厳しい雰囲気ですが、その成果は州テストでも明らかにでています。2016年度のニューヨーク州数学統一テストでは、ニューヨークシティの平均36%の合格率を遥かに超えた94%という結果を出しています。
生徒の可能性を最大限に引き出すための厳しい教育アプローチには、学校スタッフや保護者からの賛否両論の声も。
② 一日2回の音楽の授業がある「Voice Charter School」
ニューヨークタイムズ紙によると、ニューヨークの公立校の約20%が美術や音楽の先生がいないと報道されています。
Voice Charter Schoolは、その名の通り「音楽」に特化したチャータースクール。通常授業に加え、小学校では一日2回、中学では一日1回の音楽の授業を行っています。
校内からは英語、スペイン語、日本語、ドイツ語などのさまざまな言語の歌が響き渡っています。そのため、授業時間も午前7:55から午後4:25と長いのも特徴です。音楽を学習することによって、一つのことをやりきることで自信を持たせ、チームワークを育み、語学力の向上にもなるという利点が挙げられています。
③ 実体験からエコを学んでいく「Growing up Green Charter School」
Growing up Green Charter Schoolは、「エコ」がテーマのチャータースクール。
Giving Back (ほかの人や地域に還元する)、Respect(大人、友だち、地域に敬意を払う)、Embrace (自分の周りの違いを受け入れる)、Empower (正しい選択をする力をつける)、Nature (自然に優しく)の頭文字をとったGREENで表された同校の教育方針。
全校集会ではギター片手にリサイクルの歌を歌ったり、各教室でニワトリを飼ったり、ひよこを交代で家にもっていって飼育したりと実体験からの学習を大切にする学校です。
チャータースクールへの入学は抽選で決まるため、ある意味運がものをいうプロセスです。また、州、学区と設置者の間で生徒の学力などの改善に関する契約を結び、成果があがっていないと判断すれば認可が取り消しになり学校が閉鎖するリスクもあります。
次回は公立の学校内に共存する、バイリンガル養成プログラム「Dual Language」と、知能の高い子が集まる特別クラス「Gifted and Talented」プログラムをレポートします!
参考URL
「ニューヨークシティのチャータースクール状況」
「Success Academy Charter School」
「Voice Charter School」
ニューヨークタイムズ紙「Voice Charter School」
「Growing up Green Charter School」
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
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