「テクノロジー×体験学習」の組み合わせが黄金ルール!アメリカの「STEAM教育」最新事情

「テクノロジー×体験学習」の組み合わせが黄金ルール!アメリカの「STEAM教育」最新事情

AIやインターネットといった目に見えない産業が発達した現代の教育は、私たちの幼少期とは大きく変わりました。これからの時代に求められるのは、「AIでは代用できない能力」です。アメリカでは、近年推奨されているSTEAM教育において「テクノロジー」と「体験学習(ハンズオン)」の組み合わせが黄金ルールとされています。今回はこの組み合わせが教育にどのような相乗効果をもたらすのかを解説するとともに、現地小学校での取り組みをご紹介します。

STEAM教育で「テクノロジー×体験学習」が最強である理由

「STEAM教育」とは、サイエンス(科学)、テクノロジー(技術)、エンジニアリング(工学)、アート(芸術)、マスマティクス(数学)を重視し、問題解決能力や論理的思考能力、コミュニケーション力といった「新しいものを生み出す力」を育てるための教育法です。オバマ政権下で「STEM教育」として誕生し、その後アートのAを加えたSTEAM教育として普及しました。日本でも2018年より文部科学省がSTEAM教育を導入・推奨しています。

STEAM教育では、テクノロジーを使った学習を積極的に取り入れています。知識量が重視されたかつての情報社会とは違い、AIが台頭する現代の超スマート社会では、変化し続けるスピードについていくことが求められます。そのため、アメリカでは幼少期からテクノロジーに慣れ親しみ、使いこなし、自らのツールとして自在に活用できるスキルを身に着けることが重視されているのです。

一方で、デジタルのみでは得られないのが体験学習(ハンズオン)です。実際に自分で触れて実践できる体験学習は、やってみないと得られない「気付き・体験・疑問」を得られる場。やってみて初めて、「こうしたら改善するんじゃないか」というアイディアが生まれることもあります。また体験学習には、周りとの協力やコミュニケーションを通して、豊かな人間性を育む効果もあります。

このように、アメリカではテクノロジーと体験学習を組み合わせたアプローチでSTEAM教育に取り組んでいるのです。

アメリカの小学校におけるテクノロジー学習例

①アプリ学習の採用

小さな子どもにタブレットはまだ早い、と考える親もいると思います。しかし、アメリカでは低年齢のうちから生徒に1台ずつタブレットを配布し、授業でアプリをおおいに活用している小学校がたくさんあります。

アプリの強みは、個々の能力に合わせた学習が容易な点です。子どもが間違えやすい分野はAIが問題を変えながら、理解するまで繰り返し出題してくれます。得意な分野は学年を超えてどんどん進めます。しかも多くのアプリは楽しいゲーム形式になっているので、子どもは楽しみながら学習できます。繰り返しノートに単語や公式を書いて覚えるよりも楽しく効果的なので、無理なく子どものポテンシャルを引き出せる学習ツールとして活用されています。

②プログラミング

プログラミング教育とは、決してコーディングを暗記していくような内容ではありません。目的を達成するためにまずはどのような道筋を立て、いかに問題解決をしつつ計画的に進めていくかという思考力を養うものです。

低年齢向けのプログラミング・ソフトもたくさんあります。パソコンでデジタルアートを作成したり、ロボットにデータを入力して行動パターンを構成したり。自作ゲームを創るのも人気のプロジェクトです。普段何気なくやっているゲームでも、実際にプログラミングに取り組むことで、キャラクターデザイン、法則性、エラーが起きたときの修正など、さまざまな要素から構成されていることに気付けます。もちろん、自分だけのオリジナルゲームを創る喜びは格別です。

③大学設備を使ったサマースクールの実施

夏休みになると、地元の小中学生を対象とした大学主催のSTEAM教育サマープログラムに参加するチャンスもあります。大学の施設を使うので、普段とはひと味違う本格的なプログラミングが学べます。どこも人気で、プログラムが発表されるや否やすぐに満員になるほどです。アメリカではそれだけSTEAM教育の人気が高く、重視されているということでしょう。

アメリカの小学校における体験学習例

① 遠くまで飛ぶ投石機の作成

息子がキンダーガーテン(年長)の時に、小学校で取り組んだプロジェクトです。工作用の棒、マシュマロ、輪ゴム、そしてプラスチックのスプーンというシンプルな材料を使って、投石機を作成しました。マシュマロを接着剤代わりにして棒を三角錐に組み立て、てっぺんにスプーンを取り付けます。そして校庭で石を使って何度も投石機を試しながら、どのように角度や形を変えれば遠くまで飛ぶか研究するのです。最後にはクラス全員で披露し、誰が一番飛んだかを競いました。

②リサイクル品を使った電動ヨットの競争

こちらは小学校1年生が取り組んだ体験学習です。段ボール、紙コップ、ペットボトルといったリサイクル品を使い、ヨットを作成します。そこにエンジンを取り付け、電線を配置し、水に濡れないように処置して、プロペラで勢いよく進むヨットを開発するのです。

浮かぶだけのヨットは簡単に作れても、スピードが出るか、長距離移動しても沈まないか、プロペラはどこに付ければバランスが取れるかなど、課題は山盛りです。それを、ときにはクラスメートと情報交換しながら、集中して作り上げていきます。

同時に、世の中でどれだけのゴミが捨てられているか、材質にはどのような違いがあるか、浮力が大きいものと小さいものの違いなど、幅広い知識と体験を得られた取り組みとなりました。

おわりに

STEAM教育という言葉は、日本でもすっかり定着しました。しかし、実際に何をしてあげればよいのか分からないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そのようなときは、テクノロジーと体験学習という2つの要素を意識してみてください。アメリカで実際行っている取り組みは、必ずしも特段難しいものだったり、特別な材料が必要なものだったりではありません。現在はさまざまな無料教育アプリが世界中から入手可能なので、まずはできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。

執筆者/長谷川サツキ

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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