フランスの母の日は国民に大切にされている祝日であり重要な年中行事で、とても盛り上がります。街で見かける母の日の赤いハート型のディスプレーもバレンタイン時期より多く、子どもたちはもちろん、夫にも感謝され家族で祝ってもらえます。本記事では、母親をねぎらう感謝の日として大事にされているフランスの母の日について紹介します。

母の日は大切な伝統行事として定着

フランスの母の日は「Fête des Mères（フェット デ メール）」と呼ばれ、毎年5月の最終日曜日に祝われます。この日は家族が集まり、お母さんに感謝の気持ちを伝えます。

フランスの母の日の始まりは、第一次世界大戦のあとです。フランスでは多くの男性が戦死してしまい、沢山の家庭が父親を失いました。そのため、母親たちは子育てや家事を一人でこなしながら、家庭の中心として家族を支えるようになります。

そのようななか、1917年にフランスの政治家ジョルジュ・クレマンソーが、母親たちに敬意を表す日を設けることを提案しました。これがフランスの母の日の起源とされています。1920年にはフランス政府が母の日を正式に祝日として制定し、母親たちに感謝の気持ちを示す習慣が広がったのです。

現在、母の日はフランスの重要な伝統行事の一つとして定着。家族で母親のところに集まり、カーネーションやシャクヤク、バラなどの花束を贈り、一緒にご馳走を食べるのが一般的です。

「お母さんの休日」で夫や子どもが代わりに奮闘

母の日には日頃の感謝を込めて花やプレゼントを贈りますが、フランスでは何よりも「お母さんの休日」という意味合いが強くあります。家庭によって祝い方はそれぞれですが、一般的にこの日は母親が全ての家事育児を休み、代わりに夫や子どもたちが奮闘するという考え方が浸透しています。

幼稚園の年少組の頃から先生が「母の日の朝ご飯はみんなが作るように！」と言い聞かせてくれているので、母の日は母親が好きなだけゆっくり朝寝坊できる日。そのうえ、子どもたちはベッドにまで朝食を運んでくれるという計画を立てているのです。「母の日はどんな朝食にしようかな？」と家族がこっそり母の日スペシャル朝ご飯について話し合っている姿を見かけても、母親は気がつかないふりが肝心です。

さらに母の日には父親が一日中子どもの世話を担当する家庭も多く、母親の自由時間を作るために子どもたちを外遊びに連れ出してくれます。そのような事情から、母の日の公園では“お父さん率”がかなり高めです。夕飯はレストランに行く家庭もありますが、献立から後片付けまですべて夫が担当するという家庭も多くみられます。

フランス人男性は普段から家事や育児に積極的な傾向が強いものの、母の日に完全に1人で家事と育児をすると「どのくらい大変で疲れるのか身にしみる」と実感することがあるそうです。そのため、母の日に父親や子どもたちが1日中お母さん業を体験することは、家事や育児の大変さを理解できる大切なことだとされています。

年齢に関係なく男女を問わず一緒に祝う

幼稚園や小学校では、子どもたちが母親に手作りのプレゼントを制作。自作の絵やカードはもちろん、かなり手の込んだアクセサリーなども作ります。さらに、お母さんへの愛にあふれた詩や歌を暗唱して母の日に母親の前で披露します。

中学生や高校生になっても、母の日には男女を問わず照れながらもプレゼントやお料理をしてくれたという話を耳にします。子どもたちのなかで、母の日は大切な祝日として認識されているようです。
大人になって一人暮らしをしても、母の日は母親と一緒に過ごす人が多くいるのもフランスの特徴です。「母の日の電車の切符は売り切れが早いから早めに予約をする」と言われるほど、5月最終日曜日の週末は花束やプレゼントを持って実家に帰る若い人の姿を見かけます。

結婚して家庭がある場合でも、母親へのお祝いは忘れません。「朝から昼食までは妻への母の日、午後から夕食には自分の母親を祝いに行く」という男性も多いようです。会いに行くことが難しければ、電話やビデオ通話をしたりプレゼントを贈ったりして感謝の気持ちを届けています。

まとめ

このようにフランス人は何歳になっても、男女を問わず母の日をとても重要な祝日として祝います。子育て家庭では「母親休業日」となり、成人後はいくつになってもお祝いに駆けつけるなどの行動は、フランスではごく当たり前のことなのです。

こういった母親への感謝の気持ちの表現は、幼稚園の頃から教わってきたことや、母の日に家事や育児を担った父親などから自然に吸収し、身に付いていったものだと思います。