【プログラミング脳の育て方】天才プログラミングパズル開発者、西嶋孝文さんにインタビュー!
首都圏で人気のプログラミング教室STEM Academy Kidsの取締役・教材開発責任者で、累計20万部を突破した天才ドリルシリーズの新刊『天才プログラミングパズル』(ディスカヴァー21)の著者である西嶋孝文さんに、プログラミング脳についてお話を伺いました。これからプログラミングを習わせたいと思っている親御さんへの教室選びのコツや、家庭でできるプログラミング脳の育て方も必見です!
西嶋孝文さん
キッズプログラミングスクールSTEM Academy Kids(ステムアカデミーキッズ)の取締役で教材開発責任者。一般社団法人デジタル教育推進協会理事長。大学卒業後、通信/IT企業勤務を経て、映像制作・WEBデザイナーとして独立。2018年にキッズ向け個別指導プログラミング教室STEM Academy Kids(ステムアカデミーキッズ)を共同設立し、プログラミング脳・算数脳を鍛える「西嶋式プログラミングパズル」を独自開発。パズルを通して演算子・変数・if文/条件分岐・配列などの概念を学習できることで学校教材としても活用予定。
キッズ向け個別指導プログラミングスクールSTEM Academy Kids(https://stem-academykids.com )
目次
世の中が誤解している!プログラミングを学ぶ際の5つの注意点
__プログラミング的思考に論理的思考力が必要なのはなぜでしょうか?
プログラミングをやっていく際に、言語を用いてコンピュータ、またはロボットに対して「自分が意図する動き」を命令・記述するのですが、その際に命令に矛盾がないように順番に記述していく必要があります。
例えば、画面上のキャラクターをジャンプさせるために、動きに関する記号や関数をどのように組み合わせればそれが達成されるのか、手順を考えて段階的に判断していく必要があります。ですので、必然的に論理的思考力が必要となってきます。
ただ、論理的思考力だけあればよいという訳ではありません。プログラミングにおいては、「効率性」「最適解(最適な答え)」「創造性」を考える必要もあります。このような思考を「プログラミング的思考」と呼んでいます。
他にも、プログラミングについてまだまだ誤解されていることがあると思うので、5つの項目でお伝えしてみたいと思います。
その1 小学校のうちは、「プログラミング的思考」を養うことを第一に!
プログラミングというと真っ黒なPCの画面に暗号のような数列が並んでいるところをイメージする方も多いと思います。ですが、小学校ではあくまでプログラミング的思考(論理的思考、効率性、最適解、創造性等)を習得するもの。プログラミング言語を学ぶことから始めるのは間違いです!
その2 世の中は「プログラムだらけ」であることを知ろう
プログラミングって日常生活とかけ離れている「何か特別なもの」と思われがちですが、実は世の中は「プログラムだらけ」なのです。スマホ、洗濯機、TV、自動改札、空気も(自然界で光合成をして酸素を出す仕組み)、体(お腹が減る、心臓が動くなど)もプログラミングされて動いているのです。
その3 プログラミングで何をしたいかを先に考える
「JavascriptやPythonといったプログラミング言語を早くからやった方がいいのでしょうか?」とよく保護者の方から聞かれるのですが、プログラミング言語を学ぶことが目的になるのではなくて、逆から考える方が大事です。「世の中をもっと便利にしたい」、「〇〇を作りたいな」といった目的がないとプログラミングは長続きしません。
その4 必ずしも「プログラミング=理系」ではない!
よく「プログラミング=理系の人がやるもの」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。現に私は経済学部卒業です。文系の方は全く白紙の状態でスタートできますので、正しい学習方法で多くのことを吸収できますし、アイデアも出やすかったりします。またコミュニケーションが得意な人が多い傾向がありますので、プロジェクトリーダーに最適だったりします。
その5 プログラミングは「コンピューターと話すための言葉」である
「なんだか難しい」と思っている人が多いプログラミングですが、英語でいう文法のようなルールがあって、それが分かれば、思っているほど難しいことはありません。プログラミングはコンピューターと話すための言葉とも言えます。学校で英語を学習して文法や英単語の意味を理解し、英文が何となく書けるようになったのと同じように、プログラミングも同じように学習すれば、必ず意味が理解でき、コードも何となく書けるようになります。
「プログラミングパズル」を作った経緯
__西嶋さんが、プログラミングパズルを開発されたきっかけを教えてください。
2018年にある校舎で講師をしていた際に、どうやってもレッスンに集中できない子がいたのですが、ナンプレ(9×9マスの数独パズル)をレッスンが始まる前に一緒にやってみたら、ものすごく集中して解き始めたのです。その光景に衝撃を受けたのがきっかけで、遊び感覚でプログラミング的思考を養えるようなパズルがあったらいいなと思いまして、開発しました。
__ステムアカデミーキッズが大事にしていることとは?
現在、17校舎(2021年3月現在)を運営していますが、特に年長・低学年(小3~4年)のお子さんが多いのが最大の特長です。一般的に年長・低学年へのプログラミング教育は指導が難しく、講師の育成も難しいので全国的にも数が少ないのが現状です。その理由は、プログラミングスキルだけではなく、レッスンをデザイン(統率)できるかのスキルも問われるからです。ですから私たちは、講師の育成を最重視し、個別指導型のスタイルで、プログラミングパズル、ビスケット・スクラッチプログラミングなどを活用しながら、集中力が続かない子どもたちも90分楽しめるよう意識しています。実際のレッスンでは、今流行りの動画レッスンはあえて取り入れず、文章中心のテキストを利用しています。動画レッスンだと、特に低学年以下の子どもたちは「考えずに」ただ真似をして作ってしまうことが多いのです。頭を使ってイメージできるように、あえて文章を読ませてからプログラミングをさせることで、自然と読解力も身につくようになります。
プログラミングに向いている子の共通点とは
__プログラミングに向いている子の共通点があれば教えてください。
制作が好きで、ブロックやレゴ、マイクラなど、何かをクリエイトするのが好きな子はプログラミングも楽しく感じる傾向が高く、「素地」があると思います。あとは、負けず嫌いな子も(興味さえ持てば)突き詰めて取り組んでいきますので、意外と向いていると思います。
__西嶋さんは幼少期、どんな子どもでしたか?
レゴ、ミニ四駆、ファミコンなど、興味をもったことはとことん突き詰める子でした。特に友達と作るレゴが好きで、毎回3~4人で集まりテーマを決めて、そのテーマに沿ったものを作って遊んでいました。自分の考えをカタチにしていくのがプログラミングの醍醐味の一つでもありますので、プログラミング脳を鍛えるきっかけになっていたのかもしれませんね。さらに、一人では思考に限界があるので、友達とアイデアを出し合って共同作業する楽しさを知ったのはとても大きかったと思います。
家庭でできるプログラミング脳の育て方
__家庭でもできるプログラミング脳の育て方があれば教えてください。
ご自宅にタブレットやパソコンがあれば、プログラミングを学習できるアプリやツールが沢山出ていますので、それらに取り組んでもらえれば一番良いかと思います。ゲームの場合は、タスクやゴールといったあらかじめ目標が決められているものよりも、サンドボックス系のゲーム、例えばマインクラフトといった自分で目標や目的を決めて取り組めるものの方がプログラミング脳は鍛えられるかもしれません。
「電子機器をまだ使わせたくない」という方は、アンプラグド・プログラミング(電子機器を使用せずにプログラミング的思考を育成する)、つまりカードやボードゲーム、本などを利用して学習する方法もあります。
「もっと手軽に取り組みたい」という方は、お子さんが今興味を持って取り組んでいることを「プログラミング的思考で取り組む」というやり方もあります。この場合は保護者の方のサポートが必須になってきます。
たとえば、野球に没頭しているお子さんの場合。三振が多い(問題点)→何で打てないのか(原因を洗い出し 例:スイングが悪いのか、立ち位置が悪いのか、バットが悪いのか等)→それを実際にやってみて改善・検討を繰り返し「最適な答え」を見つけます。
その際、重要なことは、保護者からではなく「お子さん自身で考えさせて、改善点やアイデアを引き出す」ことです。それが明らかに間違っていても構いません。あえて間違えさせることもとても大切です。なぜなら、プログラミングは「間違ってなんぼ、エラーだらけ、なんで?だらけ」の世界ですので(笑)。間違った経験を通して問題解決力も養えます。このような過程を通してプログラミング脳を鍛えることができるのです。
学校でのプログラミング教育、現状と課題
__学校教育におけるプログラミングの現状や世界からみた日本の差や課題などを教えてください。
文科省は「GIGAスクール構想」を掲げていますが、1人1台のタブレッドはまだまだですし、プログラミングに関しては地域差があるのが現状です。たとえば、同じ地域でもA小はビスケットとスクラッチ、B小は機材を使わずカードゲームで論理的思考。C小はタブレットを触って終わりといった具合です。学校や先生におまかせ状態なんですね。ですので、これからは先生のITスキルをどうサポートしていくかが課題と言えます。
多くの学校では、先生がプログラミングの勉強をすることも、外部のプログラミング専門の先生に来て、登壇してもらうことも手続きや予算の制約等で限界があると思いますので、今後はいい先生の授業をオンラインで繋いで授業を受ける体制にシフトしていく方が現実的かもしれませんね。
日本は主要先進国と比較すると、デジタル教育においては後れをとっているのが現状です。やはり受験先行の風潮があるのと、教育現場の多くが業務過多で余裕がないためデジタル教育を受け入れることに嫌悪感を持っているということもあります。そもそも実際のプログラミング言語自体が英語で記述されているので、多くの日本人にとっては苦手意識を持ちやすいというのも原因の1つかもしれません。
__療育×プログラミングの取り組みもされているんだとか?
銀座にある「トリプル・ハート」という療育施設でSTEM Academy Kidsとしてプログラミング支援を行っています。それまで、「コミュニケーションが苦手」、「集中力が続かない」といったお子さんが、プログラミングのレッスンをすると同じ場所で集中できたり、自発的に質問できるようになるお子さんもいらっしゃいます。
自分で作ったものが動く感動、作品になる喜びを味わい、達成感を沢山経験することで大きな自信になるんだと思います。療育とプログラミングの相性の良さを感じていますね。プログラミングスキルがあれば、将来リモートでも仕事ができるようになりますし、プログラミングが将来の活躍や自立の手段に役立てたら嬉しいですね。
プログラミング教室を選ぶ際のポイント
__プログラミング教室を選ぶ際の注意点はありますか?
ご家庭によって判断基準は違うと思いますので、参考程度にお伝えすると、ポイントは2つあると思います。
その1
プログラミング教室にはハード系(ロボット系)かソフト系(ビスケット・スクラッチ等)の特性がありますので、2~3ヵ所体験に行ってみてお子さんがどちらのタイプが好きかで選んでみる。
その2
当たり前のことですが、講師が子どもの目線に立って、寄り添って教えているかどうかも大事なポイントです。とくに年長・低学年にはとても重要です。また最新の技術が学べる、人工知能が学べる教室といった謳い文句は保護者には聞こえが良いですが、子どもにとっては「?」だったりするので注意が必要です。
お手伝いでプログラミング脳を養える!
__最後に、読者へメッセージをお願いします。
「プログラミングスクールに通いたいけれど、時間的に難しい」。そんなときは、「お手伝い」とからめるのはどうでしょう?
生活の中でプログラミング脳を養う方法は実はたくさんあります。たとえば、料理(おいしいカレーの作り方を研究、早くカレーを作る方法等)や洗濯(いかに早く正確に干すか、早く乾く干し方等)といった家事もそうです。具体的には、先ほど野球の例でもありましたが、行動要素を分解して、記録、調査、研究、改善、アイデア出しを繰り返すこと。また時間を計測して毎回新記録に挑戦する、「洗濯干しタイムアタック!」のようにゲーム感覚で取り組むのもとても盛り上がります。その際はただタイムを計るのではなく、新記録を出すにはどうすればよいのかをお子さんに研究させて、トライアンドエラーしながら取り組むことが重要です。GWや夏休みなど時間があるときに、お子さんと一緒に挑戦してみるといいかもしれませんね。
第4次産業革命と言われる今、自分で考えて何かしないといけない“個で完結する時代”にきています。幼少期からプログラミング脳を養うことが、将来の仕事にも役立ちますし、何より選択肢を大きく拡げることができます。興味がある方はぜひ自宅でできるプログラミングパズルから、トライしてみて下さい。