プログラミング教育が盛んなブラジル、家庭で課題に取り組める学習アプリも人気
ブラジルでは、プログラミング教育にロボット工学を取り入れる学校が増えています。プログラミング思考を養えるだけでなく、クラス内のグループでそれぞれ役割を分担し、チーム解決、コニュニケーション、時間管理、リーダーシップ能力、マナー、集中力、論理的思考などさまざまな資質を身に付けることができるからです。
ブラジルのロボット教育システムや、コロナ禍による自粛生活でも活用できる学習アプリについて紹介します。
目次
授業ではレゴやタブレットを使ったロボット教育を実施
ブラジルではレゴを使ったロボット教育システムを展開するVia Makerという企業が、国内の多くの学校と提携して教育プログラムの提供やロボット大会などを主催しています。
新型コロナの影響で休校になるまでは週2時間のロボット工学の授業があり、レゴを使ってロボットや車などを作成していました。タブレットを操作・確認するリーダー係、指定のレゴブロックを箱から持ってくる整理係、レゴブロックを組み立てる係とクラスの4人で班を構成し、交代でそれぞれの役割を担います。
タブレットに組み立て方法の指示が表示され、それを確認しながら協力し合って作業を進めていきます。タブレットとレゴブロックで作ったロボットは連動していて、タブレットの操作で動く仕組みになっています。
学校内で行われるロボット工学の大会では優秀な成績の生徒たちが選び抜かれ、ブラジル国内でVia Makerシステムを取り入れている他校との地域リーグ大会に参加します。地域リーグで優勝するとさらに全国大会へと進むなど、国としてロボット工学にとても力を入れているのです。
課題作成を通して多角的な思考を育てる内容のアプリ
ところがコロナの影響で学校は休校になり、教室でのレゴブロックを使った授業や大会は難しい状態になりました。 オンライン授業では全く違う形態に変わり、教師が動画を使って生徒に説明する授業しかできなくなってしまいました。
ただ、同社が提携する生徒向けのアプリサービス「CLUBE Maker」ならば休校中に自宅でも使え、子どもたちの創造力を育むことが可能です。このアプリは休校中の措置として提供されたわけではないものの、授業がオンライン化された際にも活用され家庭で課題に取り組むのに役立ちました。
「CLUBE Maker」はレゴ教育とは異なり普段の授業では利用していませんが、Via Makerの教育システムを採用している学校の生徒全員が利用できる家庭学習用アプリです。動画で課題を確認しながら親子で取り組むことが目的で、進級時に登録すると生徒には個人コードが付与され任意で利用できます。
対象学年は小学2年生から中学1年生で、学年によって難易度の違う課題となっています。プログラミングを学ぶような難しい内容ではなく、工作などを通してさまざまな思考を養います。
アプリの課題は週1回と月1回、それぞれ違う内容のものが出されます。週1回の課題は1時間ほどで製作や実験ができるもの、月1回の課題は植物の種を植えて育てるなど長期的に観察をして、週ごとに写真や動画をアプリ内で投稿するようになっています。
課題は見本動画をアプリで視聴したあとに、材料などを確認しながら作成していきます。材料は空のペットボトル、段ボール、のり、はさみ、カッター、絵の具などほとんど家庭内にあるものばかりです。低学年の子どもの場合、カッターやグルーガンを使った課題は保護者が手伝います。
プログラミング的思考を養う課題
それぞれの課題には、どのような分野の思考を育てるのかというテーマも示されています。
たとえば、小学2年生のある週の課題は「プログラミング思考」で、「構成能力」「問題解決能力」「決定能力」がテーマでした。段ボールとペットボトルのキャップを使い、工作に必要な型紙は「CLUBE Maker」の公式サイトからダウンロードして活用するというものです。
卵の殻を使ったエコ人形
月1回の課題は理科的なものが多く、「エコ人形」という課題では下記写真のように土を入れた卵の殻の中に種を植えて1か月間観察するものでした。苗が大きくなったら卵ごと鉢の土の中に植え、「植え付け」「発芽」「光合成」をテーマとして学びます。
実際に育てた様子
クラスの友だちと一緒にゲーム感覚で楽しむ工夫
同サービスでは、アプリの作成見本動画を視聴するとトロフィーがもらえます。毎週の課題を作り終え動画や写真を投稿すると、さらにトロフィーの数が増えます。
投稿はストーリー機能にアップされ、クラスの仲間全員が友だちの作った作品をアプリ内で見ることができます。新しい課題が出されたその週内に投稿すれば、さらにボーナストロフィーがもらえるようになっています。
課題をこなせばこなすほどトロフィーの数が増え、クラス内のメンバーランキングの表示が上がります。また、クラス内で生徒たちが獲得したトロフィーの総数で、学年やクラスごとのランキングが校内全体で表示されます。
友達の作品を見たり、クラスのメンバーをはじめ他の学年やクラスとゲーム感覚で競い合ったりなど、子どもたちの創作意欲をかき立てる工夫がされているのです。
コロナ禍の自粛生活ではさまざまな課題も
コロナ禍で学校の授業がオンライン化され、普段のように教室でレゴロボットなどを使った実践的なプログラミング授業はできなくなってしまいました。「CLUBE Maker」のアプリはコロナ禍が起こる以前からありましたが、自粛生活のなかでもさまざまな課題に取り組める機会を得られたことは子どもたちにとって貴重です。
ただ自粛生活のなか、「足りない材料を買いに行けない」、「保護者が共働きでなかなか課題の手伝いができない」という声も聞かれました。共働きが多いブラジルでは、テレワークに切り替わっても子どもの課題に時間を割くことが難しい状況のようです。
それぞれの家庭環境によりアプリの利用頻度はさまざまですが、1年間は過去の課題でも好きなときに作って投稿しトロフィーをもらえるのもこのアプリの魅力です。各家庭とも、週末など家族が一緒にできるタイミングで製作すればよいのではないでしょうか。
まとめ
「CLUBE Maker」は難しいプログミング言語を覚えるような内容ではなく、低学年のうちから身近な工作や科学実験を通じ、プログラミング思考が自然に身に着くような工夫が施されています。家族の参加を促すことで親は子どもが創造力を養う取り組みを共有でき、家族の絆も深まります。
このようにブラジルでは先進的な教育を取り入れる学校が増えており、そのためにVia Makerのような専門性が高い教育企業と提携するケースが目立ちます。テクノロジーの進化により、これからはますますその需要が増えていくことでしょう。
【参考URL】
https://clubemaker.com/
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。