ゲーム感覚で楽しみながら学ぶ!英国の小学生向けプログラミング教育は「敷居の低さ」がカギ

ゲーム感覚で楽しみながら学ぶ!英国の小学生向けプログラミング教育は「敷居の低さ」がカギ

2020年から、日本でもすべての小学校でプログラミング教育の必修化が始まりました。ただ、学校によって対応に差があるなど、今後のカリキュラム調整が気になるところです。2014年より小学生向けプログラミング教育を取り入れている英国は、ビジュアル言語やゲーム感覚を取り入れた敷居が低いカリキュラムで子どものやる気を引き出しています。学校や公共教育施設で、どのような授業が行われているかを紹介します。

コーディングを含むカリキュラムへと一新

英国では小学校1年生(5歳)からコンピュータに触れる授業を取り入れてきましたが、2014年に入ってこれまでのICT (情報通信技術)教科を廃止。コーディングを含む新しい「コンピューティング」へと、カリキュラムが一新されました。この施策は、今までのように学校でコンピュータに触れ、単にパソコンスキルを身に付けることだけが目的ではないことを示しています。

コーディングとは、「プログラミング言語を使ってプログラムのソースコードを作成すること」です。一見難しく思えますがさまざまな種類があり、年齢に合わせてプロジェクトに取り組むことができるようになっています。そのため、読み書きを覚えたばかりの低学年では、まずコーディングという考え方自体に親しむことが目標です。

汎用性の高い能力を養えるプログラミング教育

しかし、将来IT業界に進むかどうかも分からない幼い子どもに向けたプログラミング教育に、どのようなメリットがあるのでしょうか?

プログラミング知識は将来の資産となることはもちろんですが、それだけではありません。学びのプロセスにおいて「順序立ててものごとを考え、問題解決する」という、より汎用性の高い能力を養うことができます。というのは、あるプログラムを作る過程で設定したゴールにたどり着くためには、多面的な能力を使う作業が必要になるからです。

単に知識を身に付けるだけだった従来の授業とは異なる学習スタイルであり、各教科を自在に横断しながら特定のトピックについて学ぶ「STEM教育」や「プロジェクト型学習」とともに、ホットな教育トレンドになっています。

英国でプログラミング授業が義務化されたもう1つの理由は、その知識や思考法が将来役立つだけでなく、コードの仕組みを知ることが現代デジタル社会を理解するのに必要であると考えられているためです。このため、幼いうちはコードを書くことよりも、コードを使った遊びに親しむことが重視されています。

親しみやすいビジュアル言語を使った授業

学校のコーディング教材には、米マサチューセッツ工科大学で開発され世界各国で採用されているオンライン教材「スクラッチ」のジュニア版「スクラッチ・ジュニア」がよく使われています。アルファベットを使ったテキスト言語ではなく、ブロック型のビジュアル言語を使っているため、親しみやすいのが特徴です。

子どもたちはスクリーンに登場するキャラクターを上下左右に動かしたり、動くスピードを自分で変えてみたりといったアクティビティを通じ、コンピュータへの指示を出す「アルゴリズム」についての概念を学んでいきます。この「スクラッチ」は多言語に対応しており、日本語でも使用することができます。

ゲーム感覚で楽しむ放課後の「コード・クラブ」が人気

9〜13歳の子どもたち向けには、学校の授業に加えて全国の公共施設で無料の「コード・クラブ」が運営されており、自由に参加することが可能です。塾通いする子は少ないものの、放課後にスポーツや楽器を習うことが盛んな英国では、このクラブも習い事の1つとして親しまれています。筆者が訪れた図書館では放課後になると近隣学校から子どもたちが集まり、「音楽が鳴るデジタル誕生日カードを作る」「オリジナル・ゲームを作る」といった楽しそうな課題に仲良く助け合いながら取り組んでいました。

クラブには技術的なアドバイス役や場のまとめ役として成人ボランティアが同席していますが、基本的には子どもたちの自主的な取り組みで進められます。すべてのリソースはオンラインで共有されていて、HTMLやパイソンといった本格的なコードも個人レベルに合わせて学んでいくことができます。また、オンライン無料ツールの「コード・クラブ・ワールド」を活用すれば、自分のプロジェクトを世界中のメンバーと共有したり、レベルアップに合わせてバッジを獲得したりできます。

学校でもコード・クラブでも、カリキュラムにはつい遊んでしまうようなゲーム感覚がふんだんに取り入れられています。「ゲーミフィケーション」と呼ばれる考え方で、親子で取り組めることや、小さなことから始めて楽しく能力開発につながるといった「敷居の低さ」が特徴です。楽しみながら課題をクリアしたうえで完成したゲームを使ってみんなで遊ぶ、キャラクターを思い通りに動かすなど、プラスアルファのご褒美要素が組み込まれていることで、学びのスピードが加速します。

まとめ

生まれたときからスマートフォンやタブレットに囲まれ、デジタル・ネイティブとして育っている令和時代の子どもたち。コーディングの考え方に触れることで、これまで一方通行だったテクノロジーとの付き合いに向き合うことができ、周りのことをより理解できるようにもなるとも言われています。

プログラミング教育の必修化は望ましいことですが、デジタルの恩恵をただ一方的に与えるだけというやり方は避けたいものです。子どものリテラシーを伸ばしその世界を広げていくためにも、彼らの能力をうまく引き出し健やかな成長につながるように生かしていって欲しいと思います。

ライター:ネモ・ロバーツ

<参考URL>
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/239033/PRIMARY_national_curriculum_-_Computing.pdf
https://codeclub.org/en/
https://scratch.mit.edu/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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