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国語力とディスカッション力は1冊の本から!!アメリカの授業で積極導入されている「リーディングサークル」の秘密

国語力とディスカッション力は1冊の本から!!アメリカの授業で積極導入されている「リーディングサークル」の秘密

アメリカの教育では「あらゆる本を毎日30分読みましょう」として、多くの学校では、低学年から宿題になるほど読書を重視しています。

赤ちゃんのときから絵本の読み聞かせをすることは、言葉の発達における要ともされ、それは成長してからも変わりません。そして、読書好きなお子さんというのは、大人になっても読書をします。

ニューヨークの学校では、教室に本のコーナーがありレベル別に本がわけられているところが多くあります。自分が読み終えた本を寄贈し、そこで新しい本に出会う、といったことをしている学校もあります。

今回は、子どもの国語力とディスカッション力などを伸ばす「リーディングサークル」という授業について見て行こうと思います。

「リーディングサークル」とは。どんなことが期待できるの?

読書においては、知識・語彙力・読解力・人の気持ちや感情を読み取る力、そして想像力など、計り知れないメリットがあるのは周知の事実でしょう。

視覚的な刺激が強いテレビや映画などの映像よりも、読書に慣れている子どもたちは、言葉を聞くだけで果てしない想像の世界を広げられます。

また、1冊の本には5〜20万語ほどの言葉が詰まっているので単語を覚える練習よりも、繰り返し出てくる言葉を自然に、感覚で覚えていく方が効率的で無理なくできるのです。

「リーディングサークル」は、学校によっては「リテラチャークラブ」とも言い、日本語に訳すと「読書クラブ」や「ブッククラブ」などの解釈になります。

これは、読書とグループディスカッションによる国語教育を指しており、アメリカで1980年代から始まり、その後、積極的に取り入れられています。

元々は、大人の趣味としての集まりだった読書クラブから派生したものでした。学校から与えられた教科書を読み黒板を板書するという、従来の受動的なスタイルではなく、生徒が自分たちの好きな本を選び、主導的に行うことを念頭に入れています。

「読む・書く・考える・話す」という基本スキルの向上から、意見を交換し相手と共有したり異なる意見を理解したり、反論したり、評価したりします。その過程のなかで、コミュニケーション力や自己アピール力が身についていきます

またそれ以上に、強制的に与えられたものを読むのではなく、「好きな本」を読むことで読書好きになるように考えられた方法と言えます。

本の題材によっては道徳や社会、政治など多岐分野に渡るため、中学年・高学年になってくると、さらに深みを増した討論となっていきます。たとえば、大統領選挙ではどちらの大統領候補が当選した方がアメリカにとっていいか、その理由などをまとめた作文を書くこともあります。

このように、大人と子どもの社会を完全に隔てず、ある程度の年齢に達したら、社会への関わり方を教えていくこともアメリカの魅力的な教育の一つだと思います。

本との関わりを通して学び、身につける授業

リーディングサークルは全員が発言する場を設けられるよう、5〜8人の少人数グループにわかれて行います。始めのうちは先生が本を決めることもありますが、慣れてくると自分たちで選ぶようになります。

最初の授業で本を決め、その本の絵や表紙、目次などからお話を「予想」したり背景を学んだりします。人は予想を裏切られると記憶に残りやすくなる傾向があり、「予想をする」ことは内容の記憶や想像力を育てるために効果的な方法です。

ですから予想を当てる必要はなく、あくまで、子どもたちがどんなお話なのか想像を膨らませることが重要です。

そして、次の授業までに決まったチャプターまで読んでくるよう宿題が出され、内容をグループ内で討論します。先生によっては話し合うテーマを用意する場合もありますし、または子どもたちに任せる場合もあります。

たとえば、主人公や周囲の登場人物の気持ちや、話の要約を考えたり、自分だったらどうするか、クラスメイトの意見に賛成か反対か、疑問に思ったことなどを話し合います。そして、グループでまとめた意見をクラス全体で発表し合います。

これは人の意見を聞き理解する、そして、自分の意見をしっかりと言い自己主張ができる大人になるために必要な訓練です。

このような討論の授業は、リーディングサークル以外でもディベートのクラスがあったり、「show and tell」 という自分で決めたテーマについて話すクラスがあったりします。

先生もあくまで進行役や手助けをする立場で、ここでも主導は生徒たちであることが最重要ポイントです。

リーディングサークルでの「読解力を深める質問」を自宅で応用!

自宅では大人数で行うことは難しいですが、お母さんやお父さんがお子さんと本を読むときやお子さんが読む本をともに読んで、意見を交わし合うことは、非常に良い取り組みです。

リーディングサークルと同様に、本を一緒に選んでどんな話かともに予想しながらやってみましょう。

1、本を読む前にどんな話かを予想する。

もし、本に関しての知識や背景において話し合えることがあれば話すとよい

2、どんな話だったか、話の内容について考える。

面白かったところ、怖かったところ、感情を交え、自分の言葉で話すことが大事。お子さんがどのぐらい話を理解しているかも聞いて話し合う

3、登場人物の人物像や彼らが本のなかでしたことについて話し合う。

印象的な出来事があれば、なぜ、その行動を起こしたか、またはよくわからなかった部分、登場人物の気持ちなどを想像して話し合う。もし、お子さんがその人物だったらどう思い、行動するかを尋ねる。

さらに、登場人物に似た人が自分の周囲にいるか、自分はどの登場人物に近いか。

4、本から得たものについて。

本を読んでわからない言葉があれば、尋ねて意味や使い方を教える。そして、お子さんにとって新しい言葉や情報はあったか。また、本を読みどんな気持ちになったか、大切な部分はどこで、なぜ大切だと思うか。お子さんと一緒にこれらを共有する。

5、次につなげる、自由なディスカッション

本のエンディングはどう思ったか、驚いた部分や印象的な言葉や行動、話を読んで何を感じたかなどを自由に話し合う。最後に、同じ作者が書いた別の話も読んでみたいか、なぜそう思うか、次はどんな話を読み感想を共有するかを話し、次に繋げる。

まとめ

読書の重要さはみなさんもご理解しているかと思いますが、読んで終わりというパターンも多いのではないでしょうか。自分で読むことが難しければ、読み聞かせたあとに年齢に応じた質問や、自分の気持ちを伝えられるよう誘導するのもよいかもしれません。

このように日本でも、読書を通して学ぶという取り組みが積極的に行われていくとよいのではないかと思います。

著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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