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2020年、小学校プログラミング必修化! 教育現場で進むSTEM教育の今

2020年、小学校プログラミング必修化! 教育現場で進むSTEM教育の今

科学や数学領域に強い人材を育てるSTEM教育(Science, Technology, Engineering, Math)。2020年から小学校でプログラミングの必修化が検討されている今、STEM教育への期待も高まっています。

そこで今回は、教育現場へのSTEM教育の導入を考える実践的な定期勉強会『STEM MEETING』にライター庄司が参加。

最新の取り組み事例や地域との連携などについて共有しながら、最先端のSTEM教育とその普及にまつわる課題についてレポートしていきます!

知らなかった! 公立小学校でもすでに始まっているSTEM教育への取り組み

今回で通算3回目の開催になるという『STEM MEETING Vol.3』。

会を主催するのは、鎌倉でデジタルものづくりスペース「FabLab Kamakura」を運営し、国際STEM 学習協会 の代表も務める渡辺ゆうかさん。

渡辺さんは、およそ1年前にSHINGA FARMでも紹介したSTEM教育の国際会議『FabLearn Asia 2015』の主催者の一人でもあります。

今回の開催場所は、廃校になった旧池尻中学校を再生・活用した「世田谷ものづくり学校」です。ファブスペースやクリエイターのアトリエ、カフェなどが入居する、クリエイティブなワークスペースです。

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↑ 会場となった世田谷ものづくり学校には、ファブスペースも設置されています。

ミーティングのテーマは『プログラミング、アクティブラーニング……etc その先を見据えて』。2020年からのプログラミング教育の小学校必修化に向け、全国に先駆けて新しい取り組みをしている学校や企業の実践事例について、たくさんの発表が行われました。

まず、宮城教育大学の門田和雄准教授が「日本の公立学校にSTEM教育は普及するのか?」というテーマでプレゼン。

門田准教授は、ロボット工学や『門田先生の3Dプリンタ入門』の著者として知られ、ねじを使ったSTEM教材の開発にも携わっています。

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↑ 門田准教授が開発した「ねじブロック」に夢中になる女の子

「今年9月、宮城教育大で「3Dプリンタの教育利用」をテーマに行った教員免許更新講習では、あっという間に定員が埋まるなど、小・中学校の教員の間でもSTEM教育への関心は着実に高まっています。

一方で、まだ教授法さえ確立されていないプログラミングを、科目として指導するかもしれない現実に、現場の教師たちの多くが戸惑いや不安を感じているのも事実です」

また、世界のSTEM教育の現場を視察した経験から、「香港や台湾では教員以外の専門家の力を借りたSTEM教育の導入がどんどん進んでいる」との報告もありました。

「小・中学校の学習指導要領はすでに過密で、実践的なSTEM教育を科目として取り込むのは難しいのが現状。だからこそ、高校で重点的にものづくり教育をすることが、STEM人材の育成という面からみても非常に重要です」

ロボットを使ったプログラミング教材も登場!

続いて、子ども向けSTEM教室などを実施しているアザイ・コミュニケーションズの久木田寛直さんから、プログラミングロボット mBot の状況報告。

いきなりプログラミングに興味を持てなくても「親子でmBotを使ったワークショップを体験し、家庭でロボット遊びを楽しむことで、関心を持つきっかけにしたい」と久木田さん。

また、これからのSTEM教育は、ただ単に技術を身につけるだけでなく、「その技術を『誰が』『何のために』『どのように』使うのかまで意識し、表現やコンセプトに反映できるリテラシーを身につけることが大切」と強調しました。

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↑ mBotは光センサー、赤外線、超音波、線従動センサーなどを搭載している。

そして学校向けに教材を開発・販売しているアーテック社の宮城絵美さんからは、自社が開発しているSTEM教材の紹介がありました。

最近は、ロボットプログラミング教材をはじめとする次世代型の教材・教育システムが注目を集めているアーテック社

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↑製品は学校向けの教材が多いのですが、もちろん一般用に市販もされています!

アーテック社は、九州工業大の学生たちの協力のもと、自社のロボット教材を使って、福岡県北九州市の小学生たちにわかりやすくプログラミングを伝える教育を行っています。

アーテック社の取り組みは、指導者育成という側面からも注目され、総務省が推進する「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」のモデルにも採択されています。

FabLab Kamakura / 一般社団法人 国際STEM学習協会の渡辺ゆうかさんも、前述の総務省のプロジェクトの一貫として、山口県山口市でSTEM 教育を推進しています。

ゆうかさんは、FabLab Kamakura で開発したレーザーカッターや3Dプリンタなどでつくれる学習用ロボットキット「FAB WALKER」を使った活動を紹介。校内にとどまらず、地域や周辺のFAB施設とも積極的につながって、地域を巻き込みながらSTEM教育を広めていくゆうかさんの取り組みに、とても興味をもちました。

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↑FabWalker (ファブウォーカー) レーザーカッターなどで教材づくりが可能になります

Googleアースを使って平和活動?

後半は、現役大学生の菅野友彦さんが登壇。菅野さんは、Googleアースを使って原爆に関する資料や被ばく体験のインタビューなどを重層表示するプロジェクト「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」に携わっています。

その制作チームがこのほど開催した「日米高校生平和会議」について、“世話人”としての立場からレポートしていました。高校生たちが、単に知識として最新のテクノロジーを学ぶだけでなく、実際にそれを駆使しながら平和活動という具体的な取り組みに落とし込んでいた様子が、とても印象的でした。

グローバル・ティーチャー賞トップ10!の先生は日本のSTEM教育をどう見る?

最後のプレゼンターは、工学院大学附属中学で教頭を務められている高橋一也先生です。

アメリカでインストラクショナル・デザイン(教育設計)を学んだ高橋先生は今年、教育界のノーベル賞と言われる「グローバル・ティーチャー賞2016」のトップ10に選出された“スーパーティーチャー”でもあります。

高橋先生が受け持つ「ハイブリッドインターナショナルクラス」では、英語で教科を学ぶイマージョン教育のほか、ICTを使った授業にも積極的に取り組んでいるそうです。

また、机を円形に配置し、生徒が教師と対話しながら授業を受けられたり、廊下や空きスペースに生徒が自由に使えるタブレットを設置するなど、学びやすい環境づくりを重視しているといいます。

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今、教育現場ではやたらとアクティブ・ラーニングが流行っていますが、ただ単にICTを使って体験型の授業をすればいい、というわけではありません。まずは生徒たちが自主的に学びに向き合える学習環境を整えることが非常に重要。

そのためには、教師たちがお互いによい関係性を築き、それぞれ楽しんで授業に取り組むことが最も大切です」

そんな高橋先生の言葉が、とても印象に残りました。なお、高橋先生は今年10月に『世界で大活躍できる13歳からの学び』という著作も出版しています。高橋先生の教育理念について詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご一読ください!

というわけで、非常に学びも多かった今回の「STEM MEETING Vol.3」。さまざまな学校や企業が取り組む最先端のSTEM教育について知ることができた一方、公教育が抱えるSTEM導入へのハードルについて、改めて考えさせられました。

このようなきめ細やかなSTEM教育を、公教育というスケールで展開するには、どう考えても「教える人材」が足りない。前回の超職員会議のレポートでもお伝えしたとおり、すでに超多忙な学校の先生たちに、新たな負担を課すことは、非現実的と言わざるを得ません。

多くの子どもたちに、格差なくSTEM教育を与えるためには、地域人材の育成を含めた「学校外との連携」が急務だと感じました。

なお、この「STEM MEETING」には、教員や研究者など教育関係者だけでなく、STEM領域に興味のある方であればどなたでも参加できます。

興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか? ファブラボ鎌倉のWEBサイトで、随時告知されています。次回は、2017年6月頃を予定。

SHINGA FARM では、今後も引き続きSTEM教育の最前線についてレポートしていきますので、どうぞお楽しみに!

著者プロフィール

ライター/親子留学アドバイザー。インタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で活躍後、フィリピン・セブ島へ移住。2012〜2015年まで3年間、親子留学を経験。現在はライター業の傍ら、早期英語教育プログラムの開発・研究にも携わる。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。

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