タカラトミーが仕掛ける「みんなでつくるSDGs人生ゲーム」とは?
ルーレットを回し一攫千金を夢見て駒を進める人生ゲームは、1968年の発売以来長きにわたって愛され続けるボードゲーム。お金教育はもちろん、さまざまな仕事や社会問題にも興味が沸く“学び”のコンテンツです。世代を問わず遊べるので、家族や友人と年末年始に楽しんだというご家庭も多いのではないでしょうか。
そんな人生ゲームにSDGs版(しかもオンライン授業も!?)があると知り、タカラトミーさんにお話を伺ってきました。
目次
学校から問い合わせが殺到! 1年待ちのSDGsオンライン授業とは?
__なぜSDGs版の人生ゲームを作ろうと思ったのでしょうか?
タカラトミーとして社会への貢献を考えた際に、SDGsは避けて通れないテーマだと考えました。とはいえ、単にSDGsが掲げる17の目標を広めるゲームというのではなくて、「今の豊かな生活から誰一人取り残さないためにはどうしたらいいか」を子どもたち一人一人に考えてもらい、人生ゲームに落とし込んでオリジナルの人生ゲームを作ってみようと思ったんです。
__オンライン授業とのことですが、どんな授業を行っているのですか?
1時間目は今の社会課題について話し合ったり、タカラトミーとして取り組んでいることをお話したりします。タカラトミーの約100年前の写真を見せるのですが、100年前のモノクロで着物を着ている写真を見せると、子どもたちはびっくりしますね。
100年前のタカラトミー社の写真。
2時間目では実際に自分でゲームのマス目を考えていきます。このとき大事にしているのは自分にとって“身近なテーマ”にすること。たとえば今当たり前にある電気やガスもスマホも学校もみんなが持っている玩具も、それってないとどうなるかな? ずっとあるにはどうしたらいいかな? と自分事に落とし込んで考えてもらいます。
やってみると大人でもマス目作りは難しいのですが、子どもたちは10分くらいでサクサク作ってしまいます。子どもたちの想像力や柔軟性には本当に感心してしまいます。
例えば、北海道の羅臼の小学校では、「野生動物にエサをあげている観光客に注意をした」と書いた子がいたのですが、現地の子たちには当たり前のことでも東京で暮らす私たち大人の方が知らないこともあるんです。
また、マレーシアの日本人学校では「オランウータンを保護した」「パーム油を食べすぎて1回休み」など、住む地域で内容が異なる点も面白いなと思いますね。
子どもたちが実際に作ったSDGs人生ゲームがこちら
__これまで100回以上のオンライン授業をされて、子どもたちの反応はいかがでしたか?
基本は小学校3年生から中学生を対象にしているのですが、作るマス目の内容は小学生でも中学生でもあまり変わらないということは驚きでしたね。年齢よりも住んでいる地域など環境による違いが大きいと感じています。さらに、今自分が困っていたり関心があることをマス目のテーマに考えるので、最近では「コロナの薬のレシピを開発し総理大臣に提案して採用された」「コロナが収束して皆に笑顔が戻った」というコロナ禍をテーマにしたマス目があったりします。子どもたちが考えていることって何かしらSDGsにつながっていくんですね。
先生たちからも、「SDGsを子どもたちに教えるのは難しいテーマだけれど、人生ゲームというコンテンツを使うことで、楽しんで自分事にしてくれたのがよかった」という嬉しい声をいただいています。
__オンライン授業でこだわっている点はありますか?
数クラス、数百人単位と大人数での授業になることが多いので、あらかじめ子どもたちにはそれぞれ手作り人生ゲームの教材とカラーシートを配布して、話を聞くだけにならないよう意識しています。中でもカラーシートはこちらから何か質問をしたときに「YESなら黄色」「NOならブルー」等のボードをカメラに向けて出してもらうのですが、参加している意識も出ますし、瞬時に答えが分かり、クイズ番組のようなエンタメ性もあるので、子どもたちも飽きずに楽しめると好評です。もちろん意見を聞くこともありますが大人数だと全員に聞くのは難しいので、子どもたちの進み具合をよく見ながら、一方通行のコミュニケーションにならないよう意識しています。
アメリカ生まれの人生ゲームから日本の子どもたちが学んだこと
__改めて、人生ゲームの魅力とは何でしょう?
ゲームの設計としては、小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまで、誰でも対等に遊べるようにしています。世代を問わずルーレットの運だけでフラットに遊べるのが魅力ではないでしょうか。また、お金のやり取りをするゲームなので、お金の計算はもちろん、最近ではICカードや電子マネーが当たり前になり現金に触れる機会が減っている子どもたちにとっては、お金教育になるとのお声もいただきます。
何より一つのボードを囲んで遊ぶので、コミュニケーションツールとしても有効です。
__人生ゲームは50年以上前のアメリカが発祥なんだとか?
これは意外と知られていないかもしれませんが、実は人生ゲームの発祥はアメリカなんです。当時の子どもたちが一攫千金を夢見て株券なども扱いながら楽しくゲームする姿を見て、当時の担当者が日本版を作ろう!と日本に持ち込んだのが1968年。今から50年以上前になります。
©1968,2020Hasbro.All Rights Reserved.
こちらが初代の人生ゲーム。
__発売当初はお金で遊ぶなんてはしたないという声もあったそうですね
当時の日本では「お金の話を人前でするなんてはしたない、まして子どもがお金儲けで遊ぶなんて」という感じだったので、はじめは否定する声もあったそうですが、発売してみたら大ヒット。保険や株、一攫千金……アメリカ生まれの人生ゲームで日本の子どもたちに自立的精神を学んでほしい、という当時の担当者の想いは今でも受け継がれています。
障がいのある子とも一緒に遊べる共遊玩具を30年前から開発!
__タカラトミーとして他にどのような社会貢献活動をされていますか?
タカラトミーとしては、創業者の「世の中のためになる企業経営を」という思いがあります。一例をあげますと、環境に優しいエコトイの開発や、障がいのある子とも遊べる“共遊玩具”の開発を行っています。共遊玩具とは、目や耳が不自由な子とも一緒に遊べるような工夫をしたおもちゃのこと。たとえば、見えない子でもオセロで遊べるよう片面にザラザラをつけるといった使いやすさの配慮がされており、街のおもちゃ屋さんでも購入することができます。世界でも共遊玩具が注目されていますが、最初に開発したのが30年以上前のタカラトミーの「HT研究室」なんです。
実際に盲学校のお子さんに遊んでもらったり、子どもたちからアイデアをもらいながら、おもちゃでの差別をなくし、子どもから大人まで誰もが仲良く一緒に遊べるおもちゃを目指しています。
「リカちゃん もくもくジュージュー にぎやかバーベキュー」/© TOMY
部品は小さいですが触って識別できるよう工夫がされていたり、リカちゃんの声で操作をガイドし、焼けている臨場感を楽しめるよう効果音に変化がついているんだそう。食材が串にしっかり留められているので、手で確かめながら「選んでつくっていく」ことも可能です。
人生ゲーム初心者は甘口な「ジャンボドリーム」、上級者は辛口な「大逆転」がおすすめ!
__人生ゲームの密かなトリビアがあれば教えてください!
これは社員でも知らない人がいるトリビアなのですが、人生ゲームがアメリから生まれたという経緯から、当時アメリカ版にもあった“羊にまつわるマス目”が初代から67作目まで、キャラクター版を除いたものにはほぼ必ず入っているんです。もともとはアメリカ版の英語を翻訳して「羊が隣の家のランを食べた」というマスがあり、67作目「大逆転人生ゲーム」では「ガスが爆発して髪型が羊みたいになった」など(笑)。人生ゲームをお持ちの方はぜひ探してみてください!
__これから人生ゲームを買ってみようという人に選び方やあそび方のアドバイスがあればお願いします
実は人生ゲームには甘口版と辛口版があるんです。サブタイトルを見ていただくと、「人生ゲーム ジャンボドリーム」など「ドリーム」がついているものは、お金が集まりやすく一攫千金もありお金持ち気分が味わえる「甘口」タイプで低学年向けと言えます。
一方の「辛口」タイプは、「辛」という文字がサブタイトルについたものや、現在発売中の「大逆転人生ゲーム」もその一つです。借金もしがちで世知辛いことも多いですが、一発逆転も狙えるので純粋に勝負運を楽しみたい人におすすめです。「通常版」がその間と言えます。
人生ゲームは対面ではもちろん、双方にルーレットさえあればオンラインでも楽しめると思います。
©1968,2020Hasbro.All Rights Reserved.©TOMY
©1968,2021Hasbro.All Rights Reserved.©TOMY
いかがでしたか? 遊び慣れたゲームを通して、普段馴染みのないSDGsというテーマを遊びながら学んでいく。とても素敵な取り組みだなと感じました。