最低でもバイリンガル!現地在住ママが見た“幼児期から始まるシンガポールの多言語教育”
2016年度、防衛予算に次いで約17.4%もの国家予算を教育関連に割り当てるなど、国家戦略として人材育成を進めるシンガポール。
先日発表された国際学力調査(PISA)2015年度では3分野(科学的リテラシー、数学的リテラシー、読解力)とも1位、また英「Times Higher Education(THE)」が発表した“アジア大学ランキング2016”でも、シンガポール国立大学と南洋理工大学がワンツーフィニッシュを果たすなど、アジア随一の教育国家であることを強く印象付けた結果となりました。
注目すべき幼児期の学習環境やプログラムについて、我が子を現地プリスクールに通わせている筆者がその実態をレポートします。
目次
多言語・多民族・多文化の3つが揃うローカルプリスクール
現在年長の娘が通っているローカルプリスクールでは、英語・中国語のほか、日本語クラスも設けられ3言語を学べる体制となっています。
義務教育課程で英語・中国語の二言語体制を取るシンガポールでは、高齢者世代を除くと、英語・中国語ともにバイリンガルであることが当然。多くの私立プリスクールでは第三言語(マレー語・タミル語・韓国語・日本語などスクールの方針によって異なる)も学習できる環境となっているのです。
娘のスクールの生徒は中華系・マレー系・欧米人・日本人と多種多様で、さまざまな言語が飛び交います。
複数の言語を学ぶだけでなく、旧正月やイスラム教徒の祭典ハリラヤ、ヒンドゥ教徒の祭典ディパバリ、ハロウィンやクリスマスなど、各民族の宗教行事を祝うイベントが実施されるため、多民族・多言語・多文化を肌で感じながら自然と順応できる環境となっています。
旧正月は伝統的なライオンダンスを呼んでお祝いします
2016年旧正月フェスティバルの様子
チャイナタウンに多民族が集まりお祝いします
早くも年中から座学がスタート!“発音はしっかり・文法は気にせず話す”
娘のスクールは、K1(年中)から本格的な英語・中国語の座学がスタート。ワークブック、フラッシュカードや歌などを交えて授業が進んでいきます。
日本と異なる点は、まずは発音とスピーキングが重視されること。
英語・中国語ともに発音をしっかりと学習し、“正しい発音で、文法は気にせずに自分の意志を伝えられること”が重要視されます。発音の習得と単語の暗記を並行し、徐々に文法やリーディングへと進み、文章での表現や読解力を形成していくのです。
「座学=詰め込み教育」というイメージが強いですが、2005年に政府が提唱した教育指針“Teach Less, Learn More(教えを少なく、学びを多く)”のもと、自ら学び考える力を備えることが目指されているため、授業中は積極的な発言が歓迎されます。
また、簡単な資料を自作しプレゼンテーションをする機会も。ちなみに、前回娘に与えられたテーマは「リサイクル素材を使って手作りしたおもちゃについて」というものでした。
K1(年中)時のワークブック
足し算・引き算の基礎も学んでいきます
担任からの細やかなフィードバック(中国語)
シンガポール国立図書館から配布された幼児教育資料
目次が英語・中国語・マレー語・タミル語で表記されている
多言語教育のその先にあるもの 問われるシンガポールの進化
このように、シンガポールの幼児教育環境・プログラムは目を見張るレベルの高さと言え、幼児が両親と英語、祖父母とは中国語を話している姿を見かけるのは日常茶飯事。日本とのレベルの差を痛感するばかりです。
外資企業誘致に成功し、金融国家へと成長を果たしたこの国で、シンガポール人が英語と中国語を話し活躍する姿を見ていると、言語教育の成功が国の経済発展を支える大きな要因であると感じます。
しかし近年は経済成長率の減速、外資企業への依存などが指摘され、この国独自の進化が問われているのも事実。また、バイリンガル教育がゆえに「二言語の習得が日常会話レベルにとどまる」「世代によって中国語の読み書きが弱い」なども課題とされています。
今後、これまで培ってきた多言語教育環境と、「自ら学び理解する」という新たな教育指針がどのような結果を生み出していくのかが注目されています。
▼後編はこちら
幼児期に塾通い&家庭教師は当たり前?驚きのシンガポール家庭学習現場をレポート!
【参考】
THE/The best universities in Asia 2016
ANALYSIS OF REVENUE AND EXPENDITURE Financial Year 2016
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。